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進化する怪物。

 レギュラーシーズン大詰めのレッドソックス戦@フェンウェイパーク。松井秀喜がホームランを連発している。昨日はペドロ・マルティネスから、今日はティム・ウェイクフィールドから。どちらも昨年はまるで歯が立たなかった投手だ。ペドロからは、つい先日、19打席目にして初めてヒットを打ったばかりだった。
(ただし、昨年もプレーオフでは両投手から重要な場面で打っている)

 日本でも、こういう光景は幾度となく繰り返されてきた。ある時期は内角が打てなかった。ある時期は阪神の遠山、ワンポイントで登板する左のサイドスロー投手が打てなかった。ある時期にはヤクルト投手陣、というより古田のリードに翻弄されていた。
 だが、1、2年の後には、松井は苦手だったはずの相手を克服し、当たり前のような顔をして一塁ベースに立ち、あるいはダイヤモンドをゆっくりと走っていた。オフやキャンプの間に、相当なことをしていたはずだ。

 松井が読売ジャイアンツでの1年目を終えた93年秋、ある出版社が松井のムックを刊行した。編集者はムックに「進化する怪物」というタイトルをつけた。凡庸な成績に終わったルーキーを、それでも礼賛するための、多分に苦し紛れのコピーだったはずだ。
 だが、日米通算で12年目のレギュラーシーズンが終わろうとしている今、改めて思う。これは驚くべき卓見だった。

 記録面から見て、松井という選手の最大の特徴は「進化すること」にある。
 松井の年度別成績表をご覧になったことがあるだろうか。「松井秀喜野球の館」http://www.hideki.co.jp/のPlofileに日本での年度別成績が載っている(普通の年度別成績表と縦横が逆なので見づらいですが)。試合数、得点、安打、本塁打、打点、打率。主要な数字の大半は、常に前年を上回るか同程度だ。
 おおまかに言って、松井の打撃成績はプロ入り10年間、前年を下回ったことがない。どこかの数字が少し下がってるな、と思うと、その年は打撃タイトルを取っている。
 こんな選手はまずいない。打撃は水物だ。イチローのような100年にひとりの天才でさえ好不調はあるのに、松井の成績表には波がない。

 そして、その進化カーブは、MLBに入っても継続している。渡米初年の数字こそ日本時代の最後を下回るリセットの年となったものの、2年目の今年は打率、本塁打で着実に前年を上回った。出塁率や得点も増えた。ペドロの速球も、ウェイクフィールドのナックルボールも、もはや松井にとっては対応不能なボールではない。
 故障知らずの頑健な体、自分の課題を分析し打開策を編み出す頭脳、常に前に進もうとする意志。それらが健在である限り、時間の経過は松井の味方であり続ける。
 来年の今ごろ、松井が本塁打王を争っていたとしても私は驚かない。
 (折しも昨年から50本以上の本塁打を打つ選手が激減している。ドーピング検査導入の影響だとしたら、これは松井にとって明らかに追い風だ)

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