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セバスチャン・モフェット『日本式サッカー革命』集英社インターナショナル

 おそらくは翻訳者の玉木正之の影響でそうなったのだろうが、全体的に「日本論」臭が強い造本になっている。サブタイトルは「決断しない国の過去・現在・未来」、帯には「サッカーによる日本社会の構造改革」とある(原題はJAPANESE RULES:Japan and the Beautiful Game)。実際そういう内容ではあるのだが、本書は「論」である以前に、まず日本サッカーの現代史だ。著者は日本在住15年に及ぶ英国人ジャーナリストだという。カズ、オフト、ジーコ、ベンゲル、ストイコビッチ、バクスター、ドゥンガ、城、中田英寿といった顔触れが登場しては去っていく様子は大河小説のようで、Jリーグにもこうして描かれるに足る歴史が積み重ねられてきたのだなと、しみじみと感じる。

 もっとも、登場人物は彼らのようなスターたちばかりでなく、著者はサポーター、高校サッカーの指導者、外国人指導者と選手、フリューゲルスの消滅など、いくつかのテーマを軸に、細かいエピソードを丹念に拾っている。とりわけ鹿島や浦和、柏のサポーターグループの動きについて、実に生き生きと記されていて感心する。帝京高校・古沼監督や東福岡高校・志波監督の指導法の変化について書いた章も、目配りが効いている。
 テーマの選び方、エピソードの描き方は、結局は<Jリーグの発足によって、日本のサッカーと、それを取り巻く環境がどう変化していったか>という大きなテーマに収斂していく。しかし、著者は、大上段からの自説を延々と書き連ねたり、自分の価値観に基づいて誰かを断罪したりするのでなく、あくまで「事実をもってテーマを語らせる」という姿勢を崩さない。

 玉木正之の「訳者まえがき」と「訳者あとがき」(だいたい、訳者が「まえ」と「あと」の両方に出てくるなんて野暮な真似は、普通はやらないものだ(笑))の押しつけがましさとは対照的に、著者の記述には抑制が効いており、日本のサッカー関係者、とりわけサポーターたちへの敬意と愛着が感じられるのが好ましい。造本や帯が説教臭いからといって敬遠したら損をする(笑)。もっとも、「日本論」を期待して手に取った人をも、本書は裏切らないはずだ。

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コメント

帯の説教臭さに遠慮してしまった一人です。

>「決断しない国の過去・現在・未来」
この帯コピーが如何にも著者の意図以上に玉木さんの色が強くにじみ出ていすぎて、好きになれなかったんですよ。

でも、面白そうですね。今度読んでみましょうかね。

ちなみに今日、本屋をのぞくと、サッカー関連の雑誌のコーナーに『監督の仕事』というムックが発売されてました。
後藤健生さんによる岡田武史、オズワルト・アルディレスインタビューなど面白い企画が多かったんですが、残りの大部分に携わっているのが杉山茂樹ということで遠慮しました。(笑)

投稿: ふくはら | 2004/09/06 23:43

それでも、玉木氏のおかげでこの本が日本語で読めるわけですから、多少の臭みは我慢しなければなりませんね(笑)。
後藤さんの岡田武史インタビューは読みたいですね。最初に杉山茂樹のページをホチキスで封印してしまうのがいいかな(笑)。

メディアは概して保守的なので、玉木氏や杉山氏のように著書の多い人は有利です。とはいえ最近は欧州在住でサッカーを取材している日本人ライターも増えてきましたから、編集者がちょっと本気で探せば、人材の発掘はそう難しくないと思うのですが。

光文社だったかな、「VERSUS」という新雑誌のチラシを書店で見ましたが、とにかく有名スポーツライターを揃えてみました、という以上のビジョンが感じられず、いまだにこんなことやってるのか、とうんざりしました。

投稿: 念仏の鉄 | 2004/09/07 10:58

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