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『スチームボーイ』 大友克洋 原案・脚本・監督

 見終えた時の気分が、驚くほど『AKIRA』に似ている。壮大なスペクタクルに圧倒された後の心地よい疲れと、「へ?これで終り?」という肩透かしな物語に対する拍子抜け感と。世界を破滅に導きかねない大騒動を引き起こし、街を盛大に破壊しながらも、その核心にあるのは小さな身内の争い、という点も共通している(『AKIRA』では幼なじみ同士の喧嘩、『スチームボーイ』では親子三代の喧嘩だ)。

 19世紀末の英国という設定。世界の運命を握る「スチームボール」を天才科学者の祖父から託された少年というモチーフ。ロンドンの万国博覧会という舞台。いずれも、この上なく魅惑的で、それらが大友スタイルの緻密な映像美によって命を吹き込まれる様を眺めているのは、それ自体がひとつの快楽だ。代金1,800円は、それだけで償却されたと納得してもいい。

 だが、映像の圧倒的なリアリティに比べて、物語の何とリアリティを欠くことか。主人公はともかく、相手のやることが、まるっきり合理性を欠いている。どんなに力のある武器商人だって、万国博覧会の会場でスコットランドヤード相手にドンパチ始めたら、企業として存続することは不可能だ。ショッカーじゃないんだからさ。
 父と息子の反対を押し切って暴走する主人公の父は、どうやら自らの強大な科学力を見せつけること自体が目的で、その強大な力を使って何かをしようという意欲はないらしい。そんな父の姿が、物語そっちのけで破壊シーンを描くことに熱中している大友自身と、妙に重なって見えてくる。

 エンドロールには、本作の後日談の場面が、紙芝居のように(スライドショーのように、と言うべきか)現れては消える。この場面場面が実に鮮やかで、主人公たちの来るべき冒険を想像するとワクワクしてくる。だが、たぶん、こうやって想像を膨らませている段階が、観客にとっては、いちばん幸せなのかも知れない。

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コメント

言いたいことを念仏の鉄さんが全ておっしゃってくれたようなので、あまり書くこともないですね。(笑)
久しぶりの新作ということで、圧倒的な筆力はさすがだと思わされますが、ストーリーの無茶苦茶な構成は、大風呂敷を敷いてしまったばかりに途中で投げ出してしまったかなという印象を受けました。AKIRAのときもそう思ったんですが。(笑)
面白かったですよ。でも、日本では売れないなとは思いました。
もう日本の消費者と大友アニメはかなり乖離しているんじゃないですかね。多分、海外では受けるんだと思うんですけれども。

投稿: ふくはら | 2004/09/17 11:08

乖離してるんでしょうね。AKIRAのフィギュア第三弾はあっという間に売り切れたのに、その1か月以上前に発売されたスチームボーイのフィギュアが、いまだにコンビニの棚に残ってるというのは物哀しいものがあります。

投稿: 念仏の鉄 | 2004/09/17 11:36

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