« 泣くな。 | トップページ | ジョン・スポールストラ『エスキモーに氷を売る』きこ書房 »

ドーム球場に降ったもの。

 ストで試合のない土曜日。NHKの午後7時のニュースでは、トップ扱いで、試合が予定されていた各球場の周辺の様子を延々と流していた。室内練習場などで練習する選手たち。「せっかく球場に来たのに」と嘆くファン。「二百万の売り上げがゼロ」と不機嫌な球場の食堂経営者。

 なんだか見たような光景だな、と、しばらく考えて気がついた。
 こんなのは雨が降るたびに繰り返されてきたことだ。珍しくも何ともない。

 20世紀の昔、野球の試合というのは、大雨が降ればなくなってしまう程度の、不安定な興行だった。
 球場の前まで来ながら雨天中止でがっかりして帰るのも、野球見物のうちだった。天気予報を睨みながら翌日の仕入れの量を決めるのが食堂の親父の勘の見せ所だった。
 台風でも来ようものなら、週末の2試合が流れるくらいのことは当たり前だった。

 もちろん、雨天中止になった試合は、なくなるわけではない。後日、代わりの試合が行われる。だが、たとえば9月中旬の首位攻防戦が雨で流れれば、代替日程は10月ごろになる。下手をすれば優勝決定後の消化試合、しかも平日のデーゲームだ。入場者数はおそらく数分の一に減る。秋風が吹けばビールも売れない。関係者はみんな大幅減収だ。前売り券を買っていた観客だって、都合がつくとは限らない。誰にとってもいいことはない。
 そういうことを含めて、それが野球というものだと思っていた。

 でも、21世紀にはそうじゃないんだな、とニュースを見ていて気がついた。今日、試合をする予定だった球場が次々と映る。札幌ドーム、ナゴヤドーム、福岡ドーム。ドーム球場ばかりだ。
 ドームに雨天中止はない。子供たちが泣きべそをかいて球場から引き返すこともない。テレビ局もラジオ局も「雨傘番組」を用意する必要がない。球場の食堂の仕入れ数は自動的に決まる。
 これぞ合理的で近代的な商売のやり方だ、と経営者たちが考えたのか何だか知らないが、ドーム球場は次々と増えて、現在では12の本拠地の半分に屋根がある。ドーム球場さえ作れば、彼らの商売に予定外のことは起こらないはずだったのだろう。

 そのドーム球場で、雨も降らないのに試合が止まる。
 小賢しい計算を、現実が超えていく。

|

« 泣くな。 | トップページ | ジョン・スポールストラ『エスキモーに氷を売る』きこ書房 »

コメント

「メジャーの人工芝から天然芝への回帰は当然」ともっともらしく語る野球解説者、評論家がいますが、それはアメリカの気象条件で、日本に比べて雨の少ないところが多いという理由があることという観点が完全に抜け落ちていますね。

少雨でも決行できるのは高性能人工芝のおかげですし。
望むらくは開閉式天然芝ドームなんですけど、芝の養生も難しいので、赤字でひーひー行っている球団経営陣にそこまで望むのは酷ですよね。

雨等の気象条件で流れないというのは興行主催者に取っては
非常にありがたい話だし、放送コンテンツにとっては本当にありがたいはず。

でもそのドームに移ったおかげで赤字が膨れ上がったチームもありますからね。もし大阪ドームそのものがなかったら今回の球界再編のトリガは引かれることなかったのかもしれませんが、とにかく現実に起こっていることを積極的に収拾しようとする動きがプロ野球機構側から伺えないのが、選手会側の不信を増幅しているようですからね。

いっそのこと、プロ野球機構全部が来期リセットの期間として、新リーグ立ち上げ準備期間に充てるしかないんじゃないかと思います。

巨人べったりのオーナーたちの意識はもう変わる事はないだろうから、巨人の意向が働かない新リーグ立ち上げがもっとも現実的に思えるようになってきたって事は、本当に末期症状が見え始めているってことなんでしょうか?

それからファンがストのきっかけを作ったプロ野球機構を訴える手段って何かないものですかね?

専門家を引き連れて、選手会もプロ野球機構も違法性はグレーなままストに突入しましたから。出来れば、ファンの力で選手会ストの適法性、ストのきっかけを作ったプロ野球機構側の違法性を問うことが出来れば選手は心強いと思うんですけど。

投稿: エムナカ | 2004/09/19 09:57

ドーム球場の利点については、まったくおっしゃる通り。合理性のある経営判断です。でも、私は屋根がついてから西武球場に行ったことがありません。あの夜空の花火が見られないのでは、西武園くんだりまでとても行く気がしない。こういう非合理な(笑)客の心理の機微を掴む能力を、彼らは決定的に欠いている。

いったん解散して出直せ、とは最近の豊田泰光さんもよく書いてますね。彼は長年、改革の必要を説き続けてきたものだから、現実よりも相当先に行ってしまっている。
しかし、その前の段階というのがあるはずで、例えばライブドアや楽天が加入して、ジャイアンツに頼らなくても経営が成り立つようなビジネスモデルを確立することに成功すれば、状況は大きく変わりうるのではないか、と私は思っています。

投稿: 念仏の鉄 | 2004/09/19 12:59

法的手段は、どっちに転ぶかわかりませんからねえ。えらいえらい法律家の先生が真っ先に逃げ出すほど難しい揉め事だし(笑)。
近鉄ファンの株主が「合併は不利益」と起こした訴訟は、棄却されたようですね。

投稿: 念仏の鉄 | 2004/09/19 13:02

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50507/1467632

この記事へのトラックバック一覧です: ドーム球場に降ったもの。:

« 泣くな。 | トップページ | ジョン・スポールストラ『エスキモーに氷を売る』きこ書房 »