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デービッド・ハルバースタム『静かなる戦争 』(上・下)PHP研究所

 皆さん、一国の政府がどのようにして戦争を始めるか、具体的な手順を知ってますか?
 私は知らない。半世紀以上も戦争を他人事扱いしてきたこの国に、それを具体的かつ実践的に知っている人物が、いるのだろうか。
 今や自衛隊が戦地に出ていく時代だ。戦争ができるように憲法を変えたがっていることを公言する政治家も増えてきたが、私は彼らに聞いてみたい。
 あんた方、戦争ってのはどう始めて、どう終わらせるものなのか、知ってるんですか?

 それを知りたかったら、たとえばこの本を読んでみるとよい。
 本書に書かれているのは、90年代のアメリカの外交と軍事政策だ(邦訳が出たのは2003年7月だが、原著は2001年夏に刊行されている。本書は9.11の前史として読むこともできる)。
 湾岸戦争が終結し、政権がブッシュ・シニアからクリントンに、さらにブッシュ・ジュニアに移った2001年初頭までの間、アメリカ政府は国際紛争(主にバルカン半島での紛争)にどうかかわってきたか。大統領、政府高官、軍幹部らの誰がいつ何を考え、どういう判断を下し、どう動いてきたか。大統領が軍を動かすためには、どんな準備が必要だったのか。司令官たちからは、どのような意見が上がってきたのか。そんなことが、この本には克明に描かれている。

 たとえば政治家の自己防衛、役人の責任回避、軍隊の組織防衛といった要因が含まれてくるところは日本とも似ている。だが、決定的に違うことがある。
 戦争というのは、あくまで外交の一部なのである。本書に登場する各国の政治家たちは、自国の世界戦略に基づいて外交交渉を行い、その手段のひとつとして戦争という選択肢を選ぶ(あるいは、選ばない)。クリントンの(あまり鮮やかとは言えない)戦争のやり方を追っていくと、そういうことが自然と飲み込めてくる。他国がすべてそういう力学で動いていることを踏まえていなければ「戦争をしない」という宣言を実現することはできないし、外交についての哲学もないままに戦争の準備だけしているようでは正気の沙汰ではない。

 この本には、日本のことはほとんど何も書かれていない。にもかかわらず、私はこの本を読んでから、日本の外交が実によく見えてきたような気がしている。
 正確に言えば、「日本の外交に欠落しているもの」が。

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