« デービッド・ハルバースタム『静かなる戦争 』(上・下)PHP研究所 | トップページ | 静かなるヘルメットの男。 »

今日からできるプロ野球改革。

 日本シリーズ第4戦は、台風のために中止になった。
 西武球場には屋根があるから試合そのものは実施可能だが、台風で電車が止まったら観客が帰宅できない。ただでさえ不便な立地なのだ(実は昨夜の第3戦を見に行ったが、山手線の最寄り駅からタクシーで5分の自宅に戻った時には、もう24時近かった)。中止の判断そのものは妥当だろう。

 第4戦以降の日程は、すべて1日づつスライドするのだという。つまり、最終戦までもつれこんだ場合、第7戦は月曜日になるということだ。チケットは、券面の日付ではなく、「第○戦」という表記の方が有効になるという。
 すべてナイターだから、平日になっても大した問題はない、という判断なのかも知れない。だが、チケットを持っている人々は、それを買う段階で、自分がスタジアムに行ける日付を選択しているはずだ。例えば、遠方に住んでいて「土曜の夜に泊まりがけで名古屋に行こう」と思っていた人は、さぞ迷惑していることだろう。だが、試合日の変更によって観戦が不可能になった人に対して、払い戻しを行なう様子はない(少なくとも上記のNPB公式サイトにも中日ドラゴンズ公式サイトにも、その告知はない)。

 西武ドームでの試合をスライドするのは仕方ない。だが、移動日までスライドする必要がどこにあるのだろう。所沢から名古屋まで、半日あれば動ける。どうせ試合は夜なのだ。移動日を潰して第6戦以降は(それが行われるならば)予定通りに試合を行なえば、観客もテレビ局も売店も、関係者のすべてが助かる。不利益を被る人がいるのだろうか。選手?このくらいの移動はシーズン中なら普通ではないか。逆に、土日の試合をスライドすることで利益を受ける人がいるのだろうか?私には想像がつかない。

 絶好の見本がある。アメリカで行われているリーグ優勝決定戦のうち、アメリカン・リーグの第3戦は雨で中止になった。ボストンで開催される3〜5戦は1日づつずらして実施されたが、ヤンキースタジアムでの第6戦は予定通りの日に実施された。移動日を潰したことで何か問題が生じた気配はない。どうして日本で同じことができないのだろう。

 西武ドームで気になったことが、もうひとつある。この球場のグラウンドは、ホームベースの後方にLionsのロゴが、一塁側ベンチの前にはレオの顔が、それぞれ描かれている。日本シリーズになっても、それは変わらない。
 誰か、ここに日本シリーズのロゴを描こうと思う人はいなかったのだろうか?

 球場で販売している公式プログラムの表紙には、NIPPON SERIES 2004のロゴと、プロ野球70周年のロゴが印刷されている。それぞれ悪くないデザインだと思う。これが日本シリーズを行なう球場の人工芝にくっきりと描かれていたら、スタジアムを訪れた観客は、どんなにか心弾むことだろう。プロ野球でもっとも大事な祝祭には、それにふさわしい雰囲気を作ってほしい。
 だが、西武ドームは(試合そのものを除けば)ふだんの公式戦と変わりのない、日常的な姿しか見せてくれなかった。始球式にトム・クルーズを呼んだところで、それは一瞬で消えてしまう出来事に過ぎない(だいたい、トムを実際に見た観客がどれだけいたのだろう。私は午後5時に都心を出たが間に合わなかったよ(笑))。

 アメリカでやっていることをすべて見習うべきだなどとは毛頭思わない。ただし、この2つは見習った方がいいと思っている。実施することでデメリットが生ずるとは思えないし、その気になればすぐに実施できる。さほどの困難もないだろう(日程をスライドさせる方がよほど手間がかかると思うが)。ストライキ交渉で話題に上った改革委員会を設けて諮るまでもなく、関係者さえその気になれば、今日から実行できる性質の事柄だ。実行すれば、ほぼ間違いなく観客は喜ぶ。
 「プロ野球改革」や「経営改善」とは、大勢で会議を開いて検討して進めるものだ、などと当事者たちが思っているのなら、プロ野球の近未来は、あまり明るいとは思えない。今日からできることは、今日から実施すればいい。今できることをやらない人たちは、明日も明後日もやらないだろう。しかも、明日やるべき課題の方が、はるかに難しいのだから。

|

« デービッド・ハルバースタム『静かなる戦争 』(上・下)PHP研究所 | トップページ | 静かなるヘルメットの男。 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 今日からできるプロ野球改革。:

« デービッド・ハルバースタム『静かなる戦争 』(上・下)PHP研究所 | トップページ | 静かなるヘルメットの男。 »