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さらば、ヤンキース。

 ご存知の方もいるかも知れないが、『さらばヤンキース』というのは、デイビッド・ハルバースタムが書いたノンフィクションの題名だ(新潮文庫、1996年刊行。原著は1994年刊行)。原題は「OCTOBER 1964」だから、邦題は日本オリジナル。ま、直訳で「昭和39年10月」とすれば、日本の読者は東京オリンピックの本だと誤解してしまうに違いない。

 1964年10月、ニューヨーク・ヤンキースとセントルイス・カージナルスがワールドシリーズを戦った。この2つのチームのそれぞれが、いかにしてレギュラーシーズンを制し、そしてワールドシリーズをいかに戦ったかを、この本は克明に描いている。
 マントル、マリス、ルー・ブロック、ボブ・ギブソン、数多くのスター選手たちの逸話がぎっしりと詰まった列伝調の叙述の根底には、<若い黒人選手を積極的に起用し、スピード中心の野球に切り替えたカージナルス>が<名門の驕りゆえに黒人選手の登用が遅れ、老いた英雄たちに頼りすぎたヤンキース>を破ったというハルバースタムの時代認識が流れている。
 実際、この後、ヤンキースは長い長い低迷期に入る。再びワールドシリーズに姿を見せるのは、スタインブレナーがオーナーになり、スター選手をかき集めた70年代後半を待たなければならなかった。

 ヤンキースとカージナルスが今年のワールドシリーズで対戦することになったら、この本を紹介しようかと思っていた。両者の対決は、この1964年以来40年ぶりになるはずだった。
 当てが外れてしまった今は、本書の内容よりも、この題名の方が重くなっている。
 今回の敗退はトーリ王朝の終焉を告げるものになる。昨年もそう思ったが、今年はますますその感が強い。

 ジョー・トーリが96年にヤンキースの監督に就任して以来、主力としてチームを支えてきた生え抜きの選手たちがいる。先発投手アンディ・ペティート、クローザーのマリアーノ・リベラ、捕手のホーヘイ・ポサーダ、遊撃手のデレク・ジーター、中堅手のバーニー・ウィリアムズ。9年前には颯爽と売りだした若手だった彼らも、今や軒並み30代に入った。ペティートは昨年オフ、アストロズに去った。36歳のバーニーは衰えを隠せない。もはやリベラ(11月には35歳)の力が絶対的と言えなくなったことは今回のALCSでも明らかだ。チームの背骨とも言うべき彼らの時代に、終りが近づいている。

 そして、彼らに代わるべき人材は、いまだ兆しすら見ることができない。今のヤンキースのベンチには、伸び盛りの若手が座る余地がないからだ。
 このチームに世代交代が必要なことは去年の段階ですでに明らかだったが、ヤンキースが補強したのはシェフィールド、ロフトン、ケビン・ブラウンら30代後半の選手たち。そして、数少ない若手の有望株を2人(アルフォンゾ・ソリアーノとニック・ジョンソン)も放出してしまった(もっとも、この2人の代わりに加入したのはバスケスとA-RODで、かろうじて20代ではある)。

 どんな黄金時代にも終りはある。背骨がしっかりしたチームは強いが、その分、世代交代も難しい。
 さしあたり、これから数年間は、今年30歳になったジーターと松井がヤンキースを支えていくのだろう。健康に不安を抱えるトーリがヤンキースのベンチに座っていられる残り時間は、それほど長くはないはずだ。後任がベンチコーチのウィリー・ランドルフ(来季メッツの監督に誘われているという報道もある)になるのか、他の誰かになるのかはわからないが、いずれにしても、難しい役目を担うことになる。
 キャッシュマンGMもまた然り、だ。下のコラムでオルルッドの欠場を嘆いたが、このシリーズの最大の敗因は投手陣の弱さに尽きる。短期的には投手陣の再建、長期的にはチームの背骨の世代交代が、GMの課題になる。
 1964年10月と違い、今のヤンキースでは外国人や有色人種はむしろ多数派だ。しかし、有望な若手が欠乏している点では当時とあまり変わらない。

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コメント

ついにベーブルースの呪いの呪縛からレッドソックスが開放されたことにはおめでとうをいいたいです。

そしていまやチームの主軸と言える松井秀喜、本当にお疲れ様でした。メジャーで30本はしばらく時間が掛かると思っていたのに2シーズン目で達成。以前のブログで「進化する松井」の項を見ましたが、着実なステップアップを遂げている松井の適応能力の高さは本当に素晴らしいと思います。

ところで、日本シリーズで山井のスライダーに苦戦した西武打線対策として、川上がカットボールをスライダー気味に大きく変化させる微調整を行ったそうです。8回1失点はお見事です。当然のことながらスライダーが持ち玉と認識していない西武打線は大いに混乱したと思います。

第4戦はスタジアムで見たんですが(3塁側内野席)、ピッチャーの球種は縦方向および時間軸方向の違いしか認識できなかったので、スライダーが切れていたのかどうか、全くわからなかったです。特に山井の存在すら知らなかったので、その時点でダメなんですけど。

順延時の移動日なくしについては私も同感。

多分放送も含めた契約関係があるし、過去にも同様の順延例があるので前例踏襲もあって、そう簡単には判断できないのでしょう。特にMLBの場合はプレーオフの直後にワールドシリーズが控えているため、総合的に判断してもプレーオフが早く終了する方がメリットが大きいのではないかと思います。

ところでポストシーズンマッチのチケットはMLBも日本も全く独立に販売されて、シーズンチケットそのものでは見れないのでしょうかねぇ。

投稿: エムナカ | 2004/10/23 07:44

ポストシーズンに入る前は、今年のヤンキースの投手力では、
ボストンの2本柱にはかなわないだろうと思っていました。
予想というより、シリングとジョンソンにやられた2001年のワールドシリーズの印象に引きずられていただけですが、
結局はシリングの闘志の前に敗れた、という気がします。
しかし、ペドロとかラミレスとか人相の悪い奴らだと思っていましたが、
優勝が決まった時の彼らの笑顔は子供のようで素敵でしたね。


投球データ解析のプロの人に話を聞いたことがありますが、
球種を判別するためには、まず、その投手の持ち球を把握しておく必要があるようです。
で、コースや捕手の捕球状態などから見極めるのだとか。
「捕手を見なさい」と言われて、目を啓かれる思いがしました。
といって、私が画期的に判別できるようになったわけではなく、
やはり訓練は必要なようです(笑)。


>ところでポストシーズンマッチのチケットはMLBも日本も全く独立に販売されて、シーズンチケットそのものでは見れないのでしょうかねぇ。

確かそうだったと思います。日本シリーズはNPB主催ですし。
私はシーズンチケットを買ったことはありませんが、
千葉マリンのシーズンチケットをお持ちのふくはらさんなら、正確なことをご存知かも知れませんね。

投稿: 念仏の鉄 | 2004/10/23 08:28

結局、昨年のジマーの乱闘劇はあれはあれでヤンキースにとって
大きな起爆剤だったのかもしれませんね。

よく考えたら、第5戦まで3勝2敗でヤンキーススタジアムに
来たんだから全然悪くなかったんですが
どうもあのあたりからチームが終戦ムードでした。
バスケのプレーのようなA-RODの守備妨害で
もうこのシリーズは終わったと個人的には思いました。
選手たちにはもう土俵際だったんでしょうね。
まだ1勝リードしてたのだけれども。

>千葉マリンのシーズンチケットをお持ちのふくはらさんなら、
>正確なことをご存知かも知れませんね。

こういうことを千葉ロッテファンに聞くのは
極めてタチが悪いと思います。(笑)
それこそダイエーや西武ファンに聞け。

ええと、この質問に答えるのでしたら、MLBと日本のプロ野球を
切り離して答える必要があるでしょう。
アメリカのスポーツでは多分ほとんどの球団で
レギュラーシーズンのチケットとポストシーズンのチケットは
分かれていると思います。
これは観戦希望者が大勢いるために公正を期すこと、
チケット代がレギュラーシーズンと比べて割高であること
そもそもプレイオフはドル箱であり、シーズン前にチームが
どこまで進出するか予測がつきにくいため、
レギュラーシーズン終了後に一度リセットして再びチケットを
販売したほうがいろいろやりやすいんだろうと思います。

日本はどうなんでしょうね。たぶんMLBと違った理由で
販売を分けているんだと思います。もちろん日本シリーズは
優良コンテンツですから、もっと一般の客層まで枠を広げて
割高で売った方が利益が出るという計算もあるでしょう。

それもあるんですけれども、そもそもたいていの
日本のプロ野球チームは年間シートを売るとかファン会員を
増やすとかそういった努力をおろそかにしてきましたから
あんまりコア層のファンへのサービスの重要性というのを
考えていないんじゃないですかね

投稿: ふくはら | 2004/10/27 14:18

>こういうことを千葉ロッテファンに聞くのは
>極めてタチが悪いと思います。(笑)

失礼しました(笑)。
で、試しに北海道日本ハムのサイトをのぞいてみたら、
2004年のシーズンシート販売のページhttp://www.fighters.co.jp/ticket/s_sapporo.html
がまだ残っていて、
購入者への特典として、日本シリーズやプレーオフに出場した場合はチケットを優先販売する、と謳ってありました。
西武の公式サイトにも同様の記載http://www.seibu-group.co.jp/lions/index.html
があり、どうやらアメリカの場合と、あまり変わらないようですね。
しかし、プレーオフや日本シリーズでは、西武ドームのネット裏の4人掛けボックスシートには空席が目立った気が。

>日本のプロ野球チームは年間シートを売るとかファン会員を
>増やすとかそういった努力をおろそかにしてきましたから

前に紹介した「エスキモーに氷を売る」では、結局、そこがいちばん熱心に語られていた部分でした。

投稿: 念仏の鉄 | 2004/10/28 00:45

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