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セクハラよりも重い罪。

 ダイエーのオーナー代行だった高塚猛が強制猥褻罪の疑いで逮捕されてから、さまざまな雑誌が彼の過去の行状を書き立てている。彼がホテルを建て直して中内功の目に留まるきっかけとなった盛岡時代から、盛大に女子社員を触りまくっていた、という記事もあった(それまで「奇跡の再建請負人」などと持て囃していたビジネス書のライターは、密着取材していながら彼の行状に気づかなかったのだろうか)。

 彼が球団を去ること自体は歓迎だ。だが、できれば、セクハラのような野球と無関係な犯罪によってではなく、彼が野球に対して行なった罪によって放逐されてほしかったし、批判されるべきだと思っている。逮捕後に、井口との「オーナーかオーナー代行が退任したら自由契約にしてよい」という、わけのわからない契約条項が明らかになったことで、彼が本を書きまくって自画自賛していた球団経営というものの実態も、少しは世間に理解されてきたのかも知れないが。

 私は彼のことが大嫌いだった。きっかけは、99年にダイエーが日本一になった直後に、工藤がFA宣言してダイエーを去った時のことだ。
 東京新聞(おそらくは提携している西日本新聞からの転載)に掲載されたインタビュー記事で、工藤はこんなふうに語っていた。

「自分なりに頑張ってきた火曜日登板を“客が入っていない”とけなされ、“君の家族サービスを考慮に入れたものだ”とも言われた。監督から週の頭が大切といわれ、意気に感じて投げていたのに…。火曜日に投げれば、日曜日はピッチング。そんなことも判っていないのかと悲しくなった」

 当時はパも月曜を移動日にしていたから、試合日程は火水木-金土日の3連戦×2が基本だった。当然、もっともよい投手が火曜日に投げることになる。
 しかし、観客動員は週末に集中する。東京では酒場は木曜や金曜に混雑する。中洲でも、たぶんそうだと思う。火曜の夜から野球を見に行こうという人も少ないはずだ。それを工藤のせいにされても困るだろう。だいたい、先発ローテーションを決めるのは監督であって、投手ではない。「家族サービス」云々のくだりに至っては論外だ。工藤が週末に休んでいたのかどうかは、チームの練習を見てみればわかることだ。
 工藤のような偉大な投手に対して、ホテル経営には詳しいかも知れないが野球のことなど何も知らない雇われ経営者風情がこんな口をきくということが私には許せなかった。
(もちろん、これは工藤側の言い分でしかない。ただし、高塚は当時、さまざまな雑誌で工藤に反論していたが、この発言そのものに対しては否定も反論もなかったと記憶している)

 小久保を無償でジャイアンツに譲渡した時にも、同じようなことが繰り返された。小久保自身は黙して語らなかったが、西日本新聞は、高塚が小久保をないがしろにした経緯を詳しく書いていた(同紙は井口の契約に関しても厳しく批判していた。よほど腹に据えかねている記者がいるのだろう)。

 彼の自画自賛本を読めば、なるほどと思うことも書いてある。例えば、ホークスのロゴ使用を地元企業に無料開放するというアイデアは秀逸だ。観客動員を伸ばし、収支を好転させたのは彼の手腕によるものだったのかも知れない。
 だが、営業面では優秀だったかも知れないが、野球そのものに対しては彼は無知であり、にもかかわらず、あまりにも傲慢にふるまった。

 残念でならないのは根本陸夫の急逝だ。99年の春、球団社長に就任して数ヶ月で世を去ってしまった根本が健在であれば、こんなことにはならなかったはずだ。高塚がユニホーム組の領分に口出しすることなど、根本が決して許さなかったに違いない。
 工藤、小久保、井口、みな根本が集めた選手だった。根本が作り上げた王国を、高塚が壊していく。やるせない、というほかはない。

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コメント

彼の奇行にはあきれるばかりです。
これまであまり批判的な意見を見たことが無くメディアに関しても一方的に褒めちぎっていたので、僕自身認識不足の点がありました。また大学でもこの騒ぎの前まで普通に高塚を含めたダイエーの戦略に焦点を当てた話が行われてきました。その点で残念に思います。
彼の戦略がもたらしたものは確かに大きく日本のスポーツ界においてはかなりの成功例といってもいいのではないでしょうか。しかしその代償として昨今ダイエーが失ったものがたくさんあるように感じます。
なにわともあれ、彼の良い点を含めたよいGMでありCEOなどが出てくれることを祈っております。またそのために必要なことがあるのではないかとも・・・・

投稿: 036 | 2004/11/07 19:12

私が以前在籍していた雑誌には、高塚バッシング(笑)の企画をずいぶん提案しましたが、一度も採用されませんでした。あまり野球やスポーツ一般に対して熱心な雑誌ではなかったので、編集幹部たちは興味がなかったのでしょう。彼を褒める記事が載ることもなかったのが救いです(笑)。

>彼の戦略がもたらしたものは確かに大きく日本のスポーツ界においてはかなりの成功例といってもいいのではないでしょうか。

チームと球場の一体経営としては、彼の仕事はモデルになりうるものでした。その点は評価に値すると思っています。
今のメディア上の高塚批判は人格攻撃ばかりで、単に水に落ちた犬を叩いているに過ぎません。営業上の功績と、チームに対する罪と、いずれもきちんと検証されるべきでしょうね。

しかし、ダイヤモンドの社長に専念して野球から足を洗っていれば勝ち逃げできたものを、球団に未練を残したのが結果的には命取りになったような気がします。

投稿: 念仏の鉄 | 2004/11/07 22:52

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