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国連幻想を育んだ東宝特撮王国。

 2月最後の週末に、スカパーの日本映画専門チャンネルで「24時間まるごと東宝特撮王国」という企画があった。
 『ローレライ』の亀山千広プロデューサーと樋口真嗣監督が選んだ東宝の(ゴジラ以外の)特撮映画11本を24時間かけて連続放映する、という豪快な企画で、『海底軍艦』とか『マタンゴ』とか『ガス人間第一号』とかが並んでいる。亀山と樋口が11本の予告編を見ながら、それぞれのみどころを語る2時間の対談企画のおまけつきだ。

 これを拙宅のHDレコーダーに24時間全部録画して、1本づつ見ている(馬鹿と呼んでいただいて結構です)。前後にチャンピオンズリーグの試合がたくさんあったりするので、なかなか見終わらないのだが、何本か見ているうちに気づいたことがある。
 どの映画にも、やたらに国連が出てくるのだ。
 だいたいパターンは似ていて、怪獣とか異星人の襲撃とかいう地球全体の危機に際して、国連の会議場で日本の科学者が感動的な演説をし、各国の出席者から感激の拍手を浴びたり、握手を求められたりする。
 典型的なのが『妖星ゴラス』(1962)という怪作(いや、そう言ってしまえば全部怪作なのだが)。急接近してきたブラックホールになりかけのゴラス星から地球を守るため、上原謙演じる科学者が国連の科学委員会で「ゴラスを破壊するか、地球を動かすしかない」と演説をして、各国の出席者から大きな拍手を受ける。具体策を提案するのは池部良だ。そして、上原と池部の主導で各国の科学者たちが協力し、南極に巨大なロケットを建設して、地球を軌道からずらしてゴラスを避ける、という荒技に出る。

 こういう場面が、いくつもの映画に登場する(樋口は「立派なセット作っちゃったものだから、使い回ししてるんですよ」と身も蓋もないことを言っていたが)。
 他の映画でも、例えば海底のムー帝国と戦うために海底軍艦を召還するのも国連だし、沖雅也の宇宙パイロットが所属する機関は国連宇宙局日本支部だ。
 地球の危機に立ち向かう主体は、常に国連なのだ。

 これらの映画が数多く作られた時代から、すでに40年くらい過ぎているが、日本の政治家たちは相変わらず「日本は世界に尊敬される国家を目指すべきだ」と真顔で言う。だが、その「尊敬される国家」の中身がどういうものであるのか、彼らの話を聞いていても、さっぱりわからない。
 案外、彼らの頭の中にある具体的なイメージは、「『妖星ゴラス』の上原謙」なのではないか? あれはまさに「世界に尊敬される日本」を絵に描いた光景そのものだった。大人たちの心に敗戦のダメージが刻印されていた昭和30年代には、それが日本人の夢だったのだろうし、今でも大して変わっていないのかも知れない。

 日本人は国連に過大な期待を抱きすぎる、との批判がある。ここ数年のイラクへの対処ぶりから現実を思い知った人も多いだろうとは思うけれど、依然として我々には「国連は正しい」「国連のやることには協力して当然」と考えたがる癖があることは否めない。
 そんな気風が形成される上で、これら東宝特撮映画が一役買っている可能性は大いにあると思う。

 昔の作品ばかりではない。
 ゴジラの最新にして最終作と銘打たれた『ゴジラFINAL WARS』(2004)では、宝田明が国連事務総長、菊川怜が国連の科学者を演じているし、『ゴジラvsメカゴジラ』(2002年版)でメカゴジラを作ったのも国連の機関だ。
 東宝特撮王国の中では依然として、国連は、地球をゴジラその他の脅威から守る主体であり続けているようだ。現実のイラクやアメリカの脅威に対しては、無力に近いにもかかわらず。

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コメント

 昔から、そんなに国連が活躍していたんですねえ。

 ボクも最近、サンダーバードの再放送にはまっていて、気づいたことがあります。
 あれは国際救助隊でしたっけ。
 まるでPKOかPKFってとこですよね。

(南の島に秘密基地というのはガッチャマンに影響与えてるでしょうし、ウルトラ警備隊だって制服とクルマのデザインとか番組上での位置づけが、そっくり)

 国連幻想は、世界政府幻想なんでしょうかね。地球外の生命と戦うには、米ソの争いなんかやめて、挙国一致、人類みな兄弟の精神でのぞまなくちゃ、と。自然に、短絡的に理解できてしまうんだよなあ。なぜでしょ。

宇宙戦艦ヤマトでもガンダムでも、形をかえて、出てきますよね。沈黙の艦隊も、政軍分離とか言いながら、世界政府の議論が背景にあるような気がしますし。


面白いのは、アメリカ映画のインディペンデンスデイなり、アルマゲドン。国連に頼ることなく、あくまで米軍(あるいは有志連合)が、問題を解決してハッピーエンドですもんね。

 やっぱり鉄さんが言うように、日本の映画界がいかに国連(世界政府)好きか、は、メディアリテラシー上、わきまえておいた方がいい知識かもしれませんね。
(かといって、最後に自衛隊が問題を解決してハッピーエンド、というアメリカ流の映画を見たいかというと、それもどうかなと思いますが)

投稿: ペンギン本人 | 2005/03/11 01:19

>国連幻想は、世界政府幻想なんでしょうかね。

そういうことでしょうね。国内でいくらゴタゴタがあっても、外部に共通の敵が現れれば結束が強まるというのは、現実の世界でもよくあることです。ただ、映画には描かれませんが、危機が回避された後こそ難しい、ということになるのでしょう。

ヤマトやガンダムや沈黙の艦隊はあまり詳しく見てないのでわかりませんが、アメリカ映画では、世界の各都市が危機に見舞われたり、助かってアメリカ人に感謝する、という描写がありますね。あれはあれで彼らの願望なのでしょう。
ちなみに「インデペンデンス・デイ」というのは、ドイツ人のエメリッヒ監督がアメリカ国粋主義をからかったパロディ映画ではないかと私は疑っているのですが(笑)。

>(かといって、最後に自衛隊が問題を解決してハッピーエンド、というアメリカ流の映画を見たいかというと、それもどうかなと思いますが)

東宝特撮王国では、日本政府はあまり前面に出てきませんね(後のゴジラ映画には総理大臣も出てきましたが)。昭和30年代には、アメリカや近隣諸国の目をはばかった面もあるのかも知れません。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/03/11 08:17

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