« 佐藤優『国家の罠』新潮社 | トップページ | 見物人の節度。 »

それを言っちゃあおしめえよ、山本さん。

 遅ればせながら10日のFC東京-ジュビロ磐田戦を録画で見た(仕事があっても熱が出てても行けばよかったと後悔することしきり)。
 JSPORTSの録画中継では、試合後の両監督の記者会見も放映される。山本昌邦監督の会見を聞いていたら、こんなくだりが出てきた(会見内容はジュビロの公式サイトにもアップされている。以下はそこからの引用)。

「夏ぐらいまでは、チームとしては固まってこないなというふうに開幕前から言っていたことなんですけど、ようするに新しい選手がたくさん入った部分と、代表選手がほとんどキャンプもいませんでしたし、開幕の1週間前で、その後またいなくなって、最終ラインは日韓のワールドカップメンバーでほとんどいないので、ラインのコントロールのタイミングとか、その辺の積み上げをやっているところなので、(以下略)」

 やはり予想通り、新しい選手がたくさん入って困ってしまっているようだが(笑)、それはそれとして、ひっかかるのは「代表選手」云々のくだりだ。
 Jリーグの他のすべての監督が「シーズン前に代表選手がいなかったので」と言い訳や愚痴を言い出したとしても、彼だけはそれを言ってはいけない、と私は思う。

 去年までは、彼自身が代表選手を拘束する側にいた。とりわけ、五輪代表監督だった時期の山本が、今のジーコよりも贅沢に選手を集めては合宿を重ね、それでもアテネ五輪での敗退後に「準備が足りなかった」と言ってたことを覚えている人も多いだろう。というより、各クラブの関係者やサポーターは誰も忘れてはいないだろう。
 実際には、他のJクラブの監督たちは、よほどのことがなければ「代表のせいで」とは言わない。みな、代表の意義を理解して、できるだけ我慢しているのだろうと思う。
 そんな中で、山本が率先して口走ってしまうというのは、まったく感心しかねる。少なくとも、各クラブがA代表と五輪代表の双方に選手を出していた去年の春に比べれば、今、彼が経験している状況など、ずいぶん楽なはずではないか。

 この試合を伝える新聞記事には、「6月までには…」という山本のコメントを紹介していたものもあったが、6月には、再び代表選手がいなくなる。彼らが戻るのを待っていたら、確かに夏になる。その時点で、ジュビロが挽回可能な地点にいればよいけれど、そうでなければ、後半はまた「準備」にあてるのだろうか。

 いずれにしても、「好条件が揃わないから好結果が出せなくても仕方ない」というニュアンスの発言が、以前から彼には多すぎる。
 現実には、シーズン前に想定した主力選手の全員が故障なくシーズンをまっとうできることなど、サッカーの世界にはほとんどありはしないのだ。
 どういう悪条件に見舞われても、Show must go on、次の試合はやってくる。目先の試合で勝ち点をもぎとりながらチームを作っていく、それがリーグ戦を戦うプロの監督の仕事だろう。トップチームの指導者には、勝負と育成を分離することは許されないし、現実に(優勝の行方が決まったシーズン終盤を別にすれば)勝負を度外視して若手育成を図ったトップチームが成功した例を、サッカーであれ野球であれ、私は見たことがない。

 「リーグ戦を戦うプロ」と書いたが、一発勝負のトーナメントの世界に生きるアマチュア選手でも、頂点に立つ人の考え方に違いはない。
 柔道家の谷亮子は、どんなにひどい故障をしても、畳の上に立って組み手をとれる限り、大会を休もうとしない。「どんな状態でも、試合に出て勝つことが私の義務」と言い切り、「完璧な準備をして大会に臨めることなど、ほとんどない。それでも過去の実績が自分を支えてくれる」と話す。
 せっかく同じ五輪に出場したのだから、山本監督も、こういう考え方を学んでほしい。

|

« 佐藤優『国家の罠』新潮社 | トップページ | 見物人の節度。 »

コメント

「やるのは選手、責任とるのは監督」という覚悟はあるようなので、まあ暖かく見守れば良いのではないかと思います。

もちろん会見での言葉ですから、選手に対しては違うことを言っているかもしれませんが、
山本さんはジーコ同様、かなり正直に見えます。他にも西野さんもそうですね。

反対にアマノジャクなのはオシム(苦笑)、ジョークを交えて答え難い事ははぐらかすのがオジー・アルディレス

投稿: エムナカ | 2005/04/18 00:16

>エムナカさん
こんにちは。
ジュビロもようやく2勝目、これでいくらか落ち着いてくるのでは。オシムに「いい時代は終わった」と言われたことで、名波あたりが相当に気合入ってるかも知れませんね。

一般論として言えば、記者会見でもインタビューでも力のある言葉を口にできる監督は、コーチとしても優秀であるという印象を持っています。選手に対して考えを言葉で伝えて理解させなければならない以上、それは監督の力量の一部でしょう。オシムの場合は、選手の前でもああいう禅問答をしているわけではないでしょうけど(笑)。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/04/18 09:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50507/3682821

この記事へのトラックバック一覧です: それを言っちゃあおしめえよ、山本さん。:

» 山本昌邦指南録 [スポーツ侍の「本を読む!」徹底して読む!]
Title: 山本昌邦指南録 Who: 山本昌邦 What: 様々な代表レベルで [続きを読む]

受信: 2005/04/30 19:47

« 佐藤優『国家の罠』新潮社 | トップページ | 見物人の節度。 »