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ブルペンを嗤う者がブルペンに泣く。

 読売ジャイアンツが弱い。
 前にも少し書いたが、今年のジャイアンツが勝てるかどうかは、頼りになるクローザーを用意できるかどうかにすべてがかかっている、と私は思っていた(去年も一昨年もそうだったけど)。
 従って、ミセリがダメだった時点で、すでに事態は絶望的だ。シーズンは始まったばかり、などと慰めても意味はない。現有勢力から「頼りになるクローザー」が出てこないことは、昨年のうちに実証されている(ルーキーの三木あたりが化ければ別だが)。
 先発投手陣も打たれっぱなしではあるが、クローザーが確立すれば、先発陣にもある程度は好影響を与えることができるだろう。どんな仕事でも、終りが見えないのは辛いものだ。「6回までリードを保てば逃げ切ってくれる」と思うことができれば、ずいぶん心理的な負担は減るに違いない。

 投手陣の再編成が必要なことは素人目にもわかるけれど、このチームは伝統的にブルペンの役割分担を嫌う。連日リリーフ投手陣が定見なくつぎ込まれ、全員揃って疲弊していく起用法も、すでにすっかり見慣れたものになってしまった。
 こういう投手起用は、かつては「長嶋のやることだから仕方ない」と認識していた人が多かったようだが、長嶋監督の下で長く投手コーチやヘッドコーチを務めた堀内現監督が同じ過ちを犯しているのを見ると、彼にも相応の責任があったのだろうと改めて感じられる。

 もっとも、監督ひとりに責めを負わせるわけにもいかない。
 ジャイアンツのフロントが、いかにリリーフを軽視しているかを示す傍証として、以下の数字をご覧いただきたい。

中日   104(26)
ヤクルト 21(21)
読売   22(7.3)
阪神   105(52.5)
広島   41(20.5)
横浜   132(66)

西武       2(2)
福岡ソフトバンク 32(16)
北海道日本ハム  28(14)
千葉ロッテ    79(39.5)
オリックス    155(77.5)
東北楽天     4(4)

 これは、各チームの一軍コーチ陣(監督を含む)の通算セーブ数の合計と、1人あたり平均セーブ数(もちろん投手出身者に限る)である。球団によって投手出身者の人数がまちまちなのでばらつきが激しいものの、セではジャイアンツがとびぬけて少ないことはおわかりいただけると思う。
(パには極端に低いチームが2つあるが、西武は、投手陣のやりくりを知り抜いた名捕手・伊東勤が監督を務めることでカバーできるという考えなのだろう。東北楽天は、そもそも投手出身のコーチが一軍・二軍とも1人づつしかいない)

 要するに、ジャイアンツの一軍コーチ陣には、リリーフ投手として成功した経験を持つ投手がいない(阿波野秀幸はジャイアンツで、香田勲男は近鉄で、それぞれ中継ぎ投手として過ごした時期はあるけれど、いずれも力の落ちた晩年だった)。

 そんなことがチームの強弱に関係あるのかとお思いかも知れない。少なくともジャイアンツにおいては関係らしきものが見られる。
 90年代以降にジャイアンツが優勝した年のコーチ陣を調べると、長嶋監督時代の94年、96年、00年には「8時半の男」と呼ばれた宮田征典がおり(00年には水野雄仁も)、原監督で優勝した02年には通算セーブポイント数3位(216)の鹿取義隆がいた。
 彼らが具体的にどのような役割を果たしたのか、一介の見物人には知る由もない。だが、先発投手とリリーフ投手の職種が違うことはわかる。セットアッパーとクローザーでも微妙に違うはずだ。調整法も日々の生活も最適なメンタリティもそれぞれに異なる以上、それぞれの仕事に熟知した人物が指導する方がよいだろうという推論が成り立つ。
 例えば、一軍に4人の投手コーチ(これは飛び抜けて多い人数だ)を抱える中日は、森繁和チーフと小林聖始の2人が最優秀救援投手のタイトル保持者だ。佐藤道郎二軍監督も2度のセーブ王経験がある。このチームがいかにブルペンを大事にしているかが、こんなところにも現れている。

 もちろん、近年の優勝チームのすべてがリリーフ出身の投手コーチを置いている、とは言い切れない。
 しかも、現在のジャイアンツがブルペンに最大の問題を抱えているということは、知らぬ者のない事実だ。にもかかわらず、この球団にはリリーフ専門のコーチを補強するという発想が出てこない。監督もフロントも、その必要性を認識していない、ということになる。

 これまでのような、先発で起用しても勝てない投手をリリーフに回す、という起用方針を変えない限り、ジャイアンツの投手陣が好転するとは思えない。キャンプで準備していないものが、シーズンに入ってからバタバタしたところで間に合うとも思えない。
 いろんな選手の消長を見ていると、クローザーという役割には、競争の中から徐々につかんでいくというよりも、抜擢して役割を任されることによって、はじめてクローザーにふさわしい能力が育つ、という性質があるような気がする(捕手にもそういうところがある)。
  しかし、最下位という状況下では、実績のない若手を抜擢したとしても、その選手の成長を待つ余裕が今のジャイアンツにはない。
 ここまで来てしまったら、上原浩治をクローザーに回すくらいの荒療治をやらなければ、チーム全体を蝕む「ブルペン蔑視症候群」は治癒しないのではないだろうか。

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コメント

第2次長嶋政権の初期は、それでも「勝利の方程式」と銘打って先発→橋本→石毛という流れを作りかけたんですけどね。周りがこの2人を怪我と制球難で大成させられなかったことがその後の巨人救援陣の方向性を決めてしまったような気がします。槙原、河原を除いては、しばらく余所からストッパーを引き抜いては失敗の繰り返しでしたから…

しかし、見ていて非常に辛いです(苦笑)

投稿: アルヴァロ | 2005/05/06 02:12

ソフトバンクの三瀬のように最初から?クローザーとして補強する球団もあるような時代の流れの中で、巨人の「先発完投重視」はここ数年苦労し続けているのにも関わらず、体質を変えようとしないので超保守体制として逆に賞賛すべきかも。

大魔神も今年は小魔神級の活躍しかしていませんが、彼もプロ入り直後から抑えの役割を期待されていました。

セリーグとパリーグではDH制の有無で打順まで代え時を引っ張る、引っ張らないの差がありますけど、パリーグの方が投手の分業化はより意識している印象はありますね。

ロッテの好調は絶対的抑えの小林雅が控えているのはもちろんなんですけど、中継ぎが点を取られていないのが一番利いています。
昨日は先発加藤の流れが悪く、あとを継いだ小宮山も今ひとつだったので、連勝が途切れてしまいました。もちろん先発ローテの清水、渡辺俊、小林宏、小野らが立ち上がりの流れをきちんと作っているからこそなんですけどね。

投稿: エムナカ | 2005/05/06 08:34

>アルヴァロさん
結局、先発陣並みのステイタスを確立したクローザーが、ジャイアンツには久しくいないんですよね。角、槙原くらいで。メンバー表の中の「クローザー」枠が、年によってあったりなかったり、という不安定さを感じます。

>エムナカさん
>ソフトバンクの三瀬のように最初から?クローザーとして補強する球団もあるような時代の流れの中で

ジャイアンツでも内薗のように似た試みをしたことはあるのですが、成功しませんでしたね。鴨志田がそういうタイプになるのでは、と期待したのですが、なかなか出てきません。

いずれにしても、半端に首位を争うよりは、このまま悲惨な成績に終わった方が、ジャイアンツにとってはチーム編成を根本から考え直すよい機会になるかも知れない、という気もします。投手陣だけでなく、生え抜き野手陣も阿部26歳、二岡29歳で、あとは全員30代ですから。一部の雑誌が書いている中畑監督説には?ですが。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/05/06 09:16

 そう言えば、堀内氏が解説者の時に、「巨人は一番良いピッチャーが最初に出てきて、次は2番目に良いピッチャーが出てくる、その後は3番目、という伝統があるんです。今でもあります」という意味のことを言っていたことがあります。現在の分業制とは遠いところにいる人だという印象がありますね。
 先発完投を十何年続けて成功した人ですからね。例えば酷使で投手寿命を短くした権藤氏などとは全然発想が違うんでしょう。

投稿: 水谷秋夫 | 2005/05/06 09:50

>水谷秋夫さん
>堀内氏が解説者の時に、「巨人は一番良いピッチャーが最初に出てきて、次は2番目に良いピッチャーが出てくる、その後は3番目、という伝統があるんです。今でもあります」という意味のことを言っていたことがあります。

ああ、それはいかにも言いそうですね(笑)。この「伝統」について、現在の彼の見解を聞いてみたいものです。ただ、堀内が現役の頃には、中3日くらいで先発完投した上にクローザーも兼務するのがエースの役割でしたから、専任のクローザーという存在に納得しきれないのだろうとも思います。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/05/07 00:21

全然関係なんですが、列車事故の後の様々な報道(特にJRの不祥事)に関して、鉄さんの意見を是非読みたいと思っているのですが・・・、催促してはまずいですか(笑)

投稿: ペンギン君友人 | 2005/05/09 18:53

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