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アジア・シリーズは、続けていくことに意義がある。

 アジアシリーズに出場し、準優勝となった韓国代表・三星ライオンズは、主砲の故障欠場などもあって、本来の力量を発揮しきれなかった、と韓国野球通の解説者は話していた。
 その評価が正しいのかどうか、彼らの「本来の力量」を知らない私には判断のしようもない。
 ただ、試合を見ていて意外に思ったことがある。
 千葉ロッテと戦った2試合で、三星の打者たちが放った安打の多くは、センター返しや、右打者によるライトへの流し打ちだった。たとえば決勝の最終回に小林雅から打った4安打のうち3本は、決していい当たりではないセンター前ヒットだった。
 韓国の野球を見た経験はあまりないのだが、2年前に札幌で行われたアテネ五輪予選では、全試合を観戦した。五輪出場を逃した韓国は、主力打者が強引に引っ張るバッティングを繰り返してチャンスを逸していたという印象が強い(その中心にいたのがイ・スンヨプだった)。日米のプロ野球に在籍した韓国出身の打者も、パワフルに引っ張ることが中心で、いささか粗いという傾向がある。
 だから、韓国球界では相応のスター揃いらしい三星の打者たちが、無理せず逆方向に打ち返す姿は新鮮に映った。

 三星の監督は、96年から4年間、日本の中日ドラゴンズでクローザーとして活躍した宣銅烈(ソン・ドンヨル)だ。宣は昨年ヘッドコーチとして三星に加わり、今年、監督に就任して、いきなり優勝した。三星に加わる前の一昨年は、中日の二軍にコーチ留学していた。来日前から韓国球界のスーパースターだったとはいえ、指導者としては日本の影響を強く受けていると考えてよい。
 11/12の東京新聞には、宣監督へのインタビューが掲載されている。中日ドラゴンズの親会社による取材という点を割り引いても、宣が中日と日本野球に多くを学んだことがうかがえる。
「4年間、中日でプレーして学んだのは、投手力を整備しなければ、優勝を目指せないということ」
「(中日の)99年の優勝は先発から中継ぎ、抑えという勝ちパターンを確立させて、少ない点差で逃げ切る野球。まさにその野球で今年、優勝した。2点差以内で勝った試合が80%近くある」
「(日韓の)レベルの違いは明らか。投手は制球力もいいし、変化球も巧み。打者は簡単には三振しない。米国式、日本式の野球とよくいわれるが、アジア人の体格を考えると、8割以上は日本の野球を取り入れたいと思っている」
(カッコ内は引用者による)

 伝統的にアメリカ指向が強く、パワーに頼った野球を好むと言われる韓国で、今年のリーグ戦を制したのは日本に学んだ「スモールボール」だった、ということになる。アジアシリーズで、日本野球の中でも試合運びの巧みな千葉ロッテと2試合戦い、いずれも安打数で上回りながら敗れたという経験は、選手たちの意識を変え、宣監督のスモールボール志向をさらに浸透させるかも知れない。
 台湾の興農ブルズも、中国の選抜選手たちも、同じような印象を受けたのではないかと思う。圧倒的な速球やパワフルな打撃に叩き潰されたのではなく、さほど速くはない球の前に凡打を繰り返し、四球やエラーに集中打を連ねられて失点した経験を、彼らがどう受け止めるかは興味深い。

 今年始まったアジア・シリーズが、この先どうなっていくのかはまだわからない。大会として、ものすごく面白かったかといえば、それほどのものではない。千葉ロッテの試合運びに、パのプレーオフや日本シリーズほどの重みは感じられず、目を覆うような守備のミスもいくつか出た。同じ緊張を持続しているとは到底言えまい。
 かといって、単なる親善試合でも決してなく、選手たちは、アジア王者というタイトルに一定の敬意を抱いてプレーしているように感じられた。他の国の選手たちにしても同様だ。
 大会の権威などというものは、やっているうちに生まれてくるものだ。サッカーのワールドカップだって、最初は欧州の主要国から無視されていた。費用の面など難しいこともあるだろうけれど、我慢して続けていくことが大事なのだと思う。コナミは頑張って野球ゲームを売って、大会スポンサーを続けて欲しい。
 日本野球を覆う閉塞感を打破するには、日本シリーズ王座の先に、挑むべき世界が必要だ。そして、その戦いの場にMLBを引っ張り出す交渉の上で、東アジア4リーグの結束とレベルアップは、MLBが無視できない重みを持ってくるはずだから。

 そういったもろもろを考えると、最初のアジア・シリーズ出場チームが千葉ロッテになったのは、天の配剤とも言える幸運だったように思う。
 上述したように、今年の千葉ロッテが、日本の「スモールボール」を代表するようなチームであったこと。
 韓国の至宝イ・スンヨプを擁しており(これも偶然ながら福浦の欠場がイを今大会のレギュラーにした)、彼が打席に立つと韓国側スタンドからも拍手が湧いたこと。
 とかく観客動員に苦戦しがちなアジア単位の催しにもかかわらず、外野スタンドを埋め尽くした白いユニホームの人々が、左右両翼からのパワフルな歌声で東京ドーム内を圧倒したこと。
 そして、いずれはMLBに戻って監督をするであろうボビー・バレンタインが「ファースト・アジア・チャンピオン」という自らの肩書を全米に喧伝してくれるであろうこと。
 これらはきっと、この大会の将来に、よい影響を与えてくれる。

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コメント

決勝戦を見ながら、行けばよかったと後悔しました…。
レフト・ライトスタンドだけでなく、(1塁側しか確認してませんが)2階席が総立ちで応援していたのには度肝を抜かれました。これまではコンサートでしかあんなことはなかったのですが(笑)、2階の一番前は注意しないと落ちそうで危ないんですよね(というか、ものすごく怖いです)。コンサートでは最前列を立入禁止にしているのですが、ロッテ戦もそうしなければいけないかも(笑)

自分のブログでも書きましたが、正直ロッテには日本のすごさを見せて欲しいと思っていました。もちろんファンを始め、実力の差を見せることはできたとは思います。が、サムスンが韓国野球の中で飛びぬけたレベルなのか否かはわからないのですが、2戦見た感じでは「毎年日本が優勝というわけにはいかないかもなぁ」という印象でした。競技人口など、バックグラウンドについては日本が飛びぬけているのは間違いないですし、いくらヒット数で上回れても負ける気がしない。でも、それは日本野球が最も世界に誇れる強みである「スモールベースボール」を最大限活かすロッテだからであって、例えばあれが巨人なら…と思うと不安です(笑)時期的にも日本から見た価値的にも、本調子で出られる大会ではない一方、他の国はもっと必死に来ますからね。

日本が短期的に得るものはないのかもしれませんが、東アジアのレベルアップにはこの大会は確実につながりますし、新たな楽しみが生まれた気がします。

投稿: アルヴァロ | 2005/11/14 23:34

>アルヴァロさん

入場者は3万7千人ちょっとでしたから、試合が始まってからでも行けば入れたかも知れませんね。

>2戦見た感じでは「毎年日本が優勝というわけにはいかないかもなぁ」という印象でした。

総合力で勝っていたとしても、いい投手が出てきて好投されれば負けることはあるし、今の大会方式では、それが決勝戦で起これば万事休す、です。韓国や台湾には、そういう可能性を持った投手はいるでしょうね。


>日本が短期的に得るものはないのかもしれませんが、

ただ、「アジア王者」という肩書の意味は、我々が思っているよりも大きいかも知れません。
我々は日本が東アジアで圧倒的に強いと思っているけれど、五輪では韓国に負けたこともあるし、MLBでは韓国や台湾の選手も活躍している。客観的・対外的に「日本がアジアのリーダー」と証明できる指標が、今まであまりなかったような気がします。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/11/15 00:54

大会形式の見直しや各国持ち回りなど見直す点は確かにあると思います。

しかしながら、選手のメジャー流出か逆の助っ人外人以外に国際交流の無かったプロ野球の世界に初めて真剣にタイトルのかかった試合が行われたのですからこれは画期的なイベントだったと思います。


できればこのタイトル保持者が、北中米地域のチャンピオン(間違いなくMLBのチームになるでしょうが)とインターコンチネンタル杯みたいなものを賭けて戦えないかなぁと思います。

小林雅英はもう先月にタイトルのかかった試合を落とした経験がある分、打たれても冷静でした(苦笑)。もちろん芯に当てて外野にライナー性の打球が飛べば少しはあせったでしょうが、球種が少なく、どちらかと言えば速球での勝負が多い彼は、軟投派の渡辺俊に苦しんでいたサムソンの選手にとってはひょっとしたらやりやすかったのかも知れませんj。

投稿: エムナカ | 2005/11/15 23:18

>エムナカさん

>しかしながら、選手のメジャー流出か逆の助っ人外人以外に国際交流の無かったプロ野球の世界に初めて真剣にタイトルのかかった試合が行われたのですからこれは画期的なイベントだったと思います。

そうですね。同時に、これまで商売にならないと思われていたアジアとの交流試合に、あれだけの観客が入り、テレビ視聴率も相応の数字を残したという面で、画期的だったと思います。
(日韓の選抜チームによる親善試合は中日新聞の主催で91、95、99年の3回行われ、以後は途絶えてしまいました。動員面での苦戦が原因だったようです。http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/01/21/20030121000048.html)

投稿: 念仏の鉄 | 2005/11/16 00:27

先の書き込み一部訂正。

選手のメジャー流出と書きましたが、実は米独立リーグにも何人か行ってますし、日本以外の東アジア地域には助っ人として海を渡った日本球界出身の選手も多数います。

表現が不正確でした。

今回の大会の成功には、タイトルマッチを前面に打ち出しているところではないかと思います。親善試合ではどうしても真剣さが薄れがちですし、どのチームも手を抜く雰囲気はありませんでした。ロッテにとって中国選抜戦は結果的に消化試合になったので、スタメンの7人(投手除く)を代えるのはやむをえなかったと思います。

それから可能ならば2回戦総当たり+決勝なんですが、これはやはりスポンサーの英断がないと難しいと思いますね。野球の場合1日1戦の消化は可能ですし、興行的に土日2回入れたい場合は土曜から1回戦目をスタートし1回戦と2回戦の間に休養日を挟めば日程調整できますから。先発ローテも初戦登板選手は決勝に出られますし。ぜひ検討してもらいたいものです。もちろん日本でやればこれは可能でしょうが、持ち回りで他の国がやる場合には難しいかもしれません。

投稿: エムナカ | 2005/11/16 06:18

>エムナカさん

>選手のメジャー流出と書きましたが、実は米独立リーグにも何人か行ってますし、日本以外の東アジア地域には助っ人として海を渡った日本球界出身の選手も多数います。

細かいことを言い出せば、台湾でダイエーホークス(当時)が公式戦を主催したこともあるし、台湾リーグに日本人監督が何人もいた時期もあります。アジアシリーズについても各国間での検討は10年くらい前から行われていました。
それがようやく実現に至ったのは、五輪のプロ参加、ワールド・ベースボール・クラシック開催といった一連の流れが影響して、おっしゃるような「タイトルマッチを前面に打ち出し」た大会が成り立つ機運が高まった、ということなのだと思います(やらなければプロ野球が危ない、という危機感も、それぞれの国にあるのでしょう)。

試合数については、もちろんタイトルマッチとして不十分ではあるけれど、当分は今のままが限界だろうと思います。
平日の昼間行われた三星-中国選抜戦には、私の見たところ観客は300人もいませんでした。日本絡みの試合と同数の「裏カード」が発生するのがこの大会の宿命です。
来年の開催は、今大会が始まった後でようやく決まったと聞きます。ということは、今年不入りなら来年はなかったかも知れないという程度のあやうい基盤の上に成り立っていると考えざるを得ません(その意味でも、ロッテファンの貢献は絶大だと思います)。
エントリのタイトルに書いた通り(笑)、私は大会の存続が最優先と考えているので、小さい規模でも定着させて人気を高めていくのがいいと思っています。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/11/16 09:40

準決勝で負けたとはいえ(福留の1発がなければ、どう転んでいたか……)、とにかく韓国代表はその実力を証明したと思います。トップの実力はNPBに勝るとも劣らぬものがあり、代表チームの組織力は、完全に日本を凌駕していました。あとは、国内リーグの層の厚さの問題でしょう。この韓国の活躍を受けて、これからのアジアシリーズも一段と盛り上がることを期待します。
MLBが、選手供給の場に限らず、経営的にもアジアに市場を求めるのであれば、極東のプロリーグの実力が無視できないものであることは、今回のWBCから幾らかでも感じ取ることができたはずだし、このシリーズのこれからの盛り上がりも、世界の野球勢力図に一石を投じることになるのでは、と考えます。
裏ゲームの存在は難しいですね。実力的には、今のところ日韓決戦に絞ってもよいのかもしれませんが……。
若い人たちにしっかりとパワプロやプロスピをやっていただいて(ゲーム自体がNPBの大きなプロモーションになっているということもありますし)、コナミがこの大会を長く支えてくれることを私も願っています。

投稿: 考える木 | 2006/03/20 00:33

>考える木さん
これで第2回は盛り上がるでしょうね。千葉ロッテ以外のチームが出場しても、観客がそれなりに入りそうな気がします。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/03/20 01:08

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