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2005年12月3日午後に考えたあれこれ。

 私が見ていたのはNHK総合のセレッソ大阪-FC東京戦の中継。会社で仕事しながら、ちらちらと。

●セレッソ大阪2-2FC東京
 日本将棋連盟の会長である米長邦雄永世棋聖が、よく著書に書いている。
 勝負の世界に生きていると、「自分にとっては勝っても負けても大した違いはないが、相手にとっては命運を分ける一番」というものを経験することがある。この時、相手に同情心を起こして手心を加えるようなことを、決してしてはならない。そんなことをしたら勝利の女神から見放される。勝負師は、そういう一番にこそ、何が何でも勝たなければいけないのだ、と。
 我が東京に勝利の女神のご加護あらんことを。

 西澤は、この大一番でよく2得点したと思う。ただし、1点目も2点目も、西澤とセレッソ選手たちの手放しの喜びっぷりを見るたびに、「おい、まだ試合は終わってないだろ」という危うさを感じたのも確かだ(今これを書くのは、結果論ではあるけれど)。
 ベンチで試合終了を迎えた森島の無表情に、バイエルン・ミュンヘンが似た惨劇に遭った時のマテウスの姿が重なる。

●川崎2-4ガンバ大阪
 しかし、2000年ファーストステージ最終戦でセレッソを失意のどん底に突き落とした川崎Fは、その後、自身もJ2に降格して苦労する羽目になった。米さんも案外アテにならないのか。だからといってこの日の川崎が、ガンバに対して手を抜いたとは思わないけれど。
 NHKの中継で試合後のインタビューを見た。宮本の泣き顔が、個人的には今日のハイライト。監督より選手のインタビューの方がずっと含蓄があるというのはいかがなものかとも思うが(笑)。
 今年のMVPは誰になるのか。得点王アラウージョが大本命だろうけれど、こういう年には宮本が選ばれてもいいんじゃないだろうか。数字だけを追うのならディフェンダーは永遠にノーチャンスだし、そもそも選考委員なんか必要ない。

●鹿島4-0柏 ●新潟0-4浦和 ●千葉2-1名古屋
 他球場の経過が表示されるたびに、鹿島と浦和の得点が増えていく。得失点差で首位セレッソに優る両チームは、セレッソと勝ち点で並びさえすれば上に立てる。得点を重ねることだけが希望をつなぐ。そんな心情が、変化する数字から感じられる。鹿島の4点目は本田。浦和の4点目は山田。両ベテランの思い。

●京都1-2甲府 ●福岡1-1仙台
 こちらはネット速報が頼り。なんとまあ甲府が入れ替え戦出場だ。果たして俺は駆けつけることができるのだろうかと自分のスケジュールとチケット発売日を慌てて確かめる。


 J1が久しぶりに採用した1シーズン制には、壮絶なクライマックスが待っていた。リーグ戦後半を快調に飛ばしてきたガンバの失速とセレッソの浮上は、長期シーズンの醍醐味だったと思う(混戦そのものは去年までも何度かあったけれど)。チャンピオンシップはなくなったけれど、終盤の緊張した試合の連続は、それを補って余りある(テレビ中継が少ないのが難点だが)。もはや歴史が後戻りすることはなさそうだ。

 個人的には、来年の今頃は、贔屓チームが優勝を争うスタンドにいたいものだが。

 最後に、もうひとつ。
●磐田1-0神戸
 磐田・山本監督のシーズン総括
「年間を通しては、改革の道半ばだが、いろいろな新しい選手に来てもらって、今までの固まったジュビロのスタイルというのを一度壊して、新しいものを、世界で戦えるような基礎作りを考えていた。その部分に関しては、新しい芽も出てきて、壊して均した中からまた新しいものが見えつつあるので、そのへんをさらに来年伸ばしていきたいと思っている。今シーズンの反省は、データ的にもいろいろ出てきているので、これからじっくりと健闘して、来期につなげていくことになる。」
 この時期まで来れば、こう言うしかないのだろうし、前向きで結構だとも言えるけれど、あれだけの大型補強をしておいて、こういう総括でいいんだろうかなあ。シーズン前の予想に限りなく近いような気が。まあ、今年は3年計画の初年度だそうだから、それでいいのかも知れませんが。
(なぜ私はいつもこんなに山本監督に冷淡なのだろう。我ながら不思議なのだが、彼の発言には、いつもどことなく引っかかる何ががある)

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コメント

数年前に、最後の5分間で優勝チームが2度変わったことがありましたが、それ以来の激戦でした。それに加えて、鹿島・磐田の二強時代が終わって、1リーグ制に移行、その1年目でガンバ大阪が関西勢として初優勝と1シーズン制最高のスタートだったのではないかと思います(ホークス・ライオンズ二強時代を経てプレーオフが導入されたパ・リーグとちょうど逆)。

ヴァンフォーレ甲府の入れ替え戦出場には私もおどろきました。数年前にネット上でチーム存続のための署名活動をしていたのを覚えていたので、あのチームが…と。入れ替え戦の相手は柏レイソルですか。今年の優勝監督、西野朗を解任してからはずっと低迷続きでした。そういえば、新生ヴァンフォーレが始まったのも、西野朗が解任されたのも2001年だったかと思います。

投稿: E-Sasa | 2005/12/04 19:52

少々お久しぶりという感じです。最近バスケの方に時間を使うようになってしまい、WBCを始め野球についてはこのオフもいろいろと思うところがあるのですが、流れに乗り損ねてしまっているのでコメントできませんでした(笑)

とりあえずJについての感想ですが、本当に世界に誇れるリーグになってきたと自分で思えてきたのがうれしいです。中盤までは予想もできなかった展開でしたが、結局は調子のいい時期がずれていただけで実力に大きな差はない、理想的ではあります。アジアを見たときにはこのままではというのもありますが。


>相手に同情心を起こして手心を加えるようなことを、決してしてはならない。そんなことをしたら勝利の女神から見放される。勝負師は、そういう一番にこそ、何が何でも勝たなければいけないのだ、と。

東京は本当にがんばってくれましたが、一方で数人の友人が、京都の甲府との戦い方を猛批判していました。自分もチェックしてみないとわからないのですが、「あれは八百長と言われてもおかしくない」くらいの内容と失点シーンだったそうです。


最後に、鉄さんからマテウスの話が出てきたのには驚きました(笑)

投稿: アルヴァロ | 2005/12/04 22:17

>E-Sasaさん

>数年前にネット上でチーム存続のための署名活動をしていたのを覚えていたので、あのチームが…と。

そう、よくぞここまで…と思います。ただ、甲府にJ1でやっていけるだけの基盤があるかというと、いささか不安でもあるのですが。


>アルヴァロさん

しばらくでした。bjリーグも前途多難という感じですね。スーパーリーグの側がどう梃入れしているのか、という面も気になります。

>一方で数人の友人が、京都の甲府との戦い方を猛批判していました。

試合を見てみないと何とも言えませんが、京都がそこで手加減するような理由も思い浮かびません。ホーム最終戦なのだから力が入って良さそうなものですよね。不思議です。

>最後に、鉄さんからマテウスの話が出てきたのには驚きました(笑)

そりゃまあ、あちらも鉄人ですし(爆)。
下手な冗談はともかく、ワールドカップ90年大会はなぜか初戦から西ドイツに肩入れして見ていたので、マテウスは引退するまで気になる選手でした。ドイツ代表の律義なサッカーは、今でもわりと好きだったりします。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/12/05 00:23

>(なぜ私はいつもこんなに山本監督に冷淡なのだろう。我ながら不思議なのだが、彼の発言には、いつもどことなく引っかかる何ががある)

これは鉄さんに限らず、私の旧知のサッカーファンは彼と西野朗G大阪監督が大嫌いだという人が多いです、なぜか。

彼らの言い分を聞くと、彼らが監督じゃなかったらアトランタとアテネでもっといい成績を上げられたはずというのです。西野は頑固すぎて、山本は方向性がはっきりしないので、選手はその力を存分に発揮することができなかったとのこと。

Jリーグで100勝以上挙げているのは西野さんだけだし、山本さんにしても代表のコーチやユース代表の監督として実績を挙げてきたんですから、もっと評価されてもいいはずなんですが、やはり彼らに共通しているのはメディアに対して無難な物言いをすることなのかな?
そこがいまひとつ彼らに共感を覚えられない部分なのかも知れません。

投稿: エムナカ | 2005/12/09 19:54

>エムナカさん

山本監督に対しては、一言でいえば、「いつまでいい経験すれば気が済むの?」という気分ですね、私は。
西野監督は、某協会会長の贔屓の引き倒しが癇に障る、という面もあるのではないでしょうか(笑)。アトランタの時には、指導者としての引き出しが足りなかったという印象を受けます(オーバーエイジ枠を使わなかったこと自体が、彼の限界を示していたと思います。カズや柱谷を呼んでも、彼には使い切れなかったのでしょう)。協会のバックアップも不十分だったし、サッカー界全体がアマチュア時代の体制をひきずった端境期だったのでしょうね。

投稿: 念仏の鉄 | 2005/12/09 20:52

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