ホゼ・カンセコ『禁断の肉体改造』ベースボール・マガジン社
MLB史上で初めて40本塁打-40盗塁を同一シーズンに達成したスラッガー、ホゼ・カンセコは、昨年、自らのステロイド使用体験を赤裸々に語った『JUICED』を発表して大きな反響を巻き起こした。米議会が公聴会を開く一方、「ステロイドを使った」と名指しされた選手たちは反発を露にした。
翻訳者のナガオ勝司は「訳者まえがき」にこう書いている。
「本書の出版の後、米議会はステロイド問題公聴会を開催。カンセコやマーク・マグワイア、ラファエル・パルメイロらのスター選手を召喚した。そこで我々が目的したのは、上院議員からの激しい追及を受けて、言い逃れにしか聞こえないコメントを繰り返したマグワイアの哀れな姿だった。一方、カンセコが本書の中で『ステロイドを注射してやった』と書いたラファエル・パルメイロは、同公聴会でそれを完全否定。ところが、7月に史上4人目の通算500本塁打&3000本安打を達成して殿堂入りを確実なものにした1ヶ月後、ドーピング検査で陽性反応が検出されて出場停止処分となった。」
…というあたりまでは日本でも報じられていた。本書は、その『JUICED』の翻訳だ。奥付では昨年11月25日の発行だが、私の知るかぎり、日本ではさほど話題になってはいない。版元のベースボール・マガジン社自体が、あまり宣伝に熱心でないような印象も受ける。
当初は「暴露本」の一種だと思って読み始めたが、読み進めるうちに、本書に「暴露本」という形容は相応しくないように思えてきた。
これは啓蒙書だ。カンセコはステロイドの使用が悪いことだなどとは、これっぽっちも考えていない。
カンセコが本書の中で主張していることは、彼自身の前書きにほぼ言い尽くされている。
「専門家の注視のもと、正しい医療アドバイスのことでなら、私はステロイドを使用することを是認する」
「私自身はいつの日か、ステロイドとヒト成長ホルモンとを併用するための知識や情報が、万人に認知されるようになると信じている。(中略)すべてのベースボール・プレイヤーとプロのアスリートが、簡単にステロイドを使用するようになれるのだ。その結果、ベースボールや他の競技は今よりもエキサイティングで面白いものになるだろう」
「私は、どんなステロイドでも正しく使えば安全だし有益なものだと信じている。すべてはそれが適量なのかどうかという問題なのだ」
そもそもMLBにステロイドを持ち込み、数多くの選手たちに薦めて普及させたのはほかならぬ自分自身だ、とカンセコは誇らしげに書く。そして、彼自身の体験や、彼が関わったさまざまな選手のステロイド体験(あるいは疑惑)が実名入りで生々しく語られている。
カンセコの記述が事実なのか否か私には判断がつかないので、ここで名前を出すことは避けるけれど、カンセコが名指しにした何人かの選手が、ある時期に急激に体格を巨大化させると同時に、それまでのキャリアからは考えられないほど多くの本塁打を記録するようになったことは、厳然たる事実だ。そして彼らの本塁打数が、21世紀に入った頃を境に、再び急激に減ったことも。
これは野球界で公然の秘密だった、とカンセコは主張する。コミッショナーやオーナーたちも黙認していた、と。彼らは、94年から95年にかけて行われたストライキによるダメージを回復させ、観客を野球場に取り戻すために、ステロイドの跋扈を知りつつも、それが数多くの本塁打と観客と富を生むが故に黙認してきた。そして、ドーピングに対する世間の目が厳しくなり、もはや知らぬふりを続けることが許されなくなった時に、「ステロイドの首領」であった自分が生贄の羊として差し出されたのだと。
それでもカンセコはステロイドを賛美してやまない。本書の終章のタイトルは「永遠の若さ」とくる。
「私は化学薬品のおかげで自分の身体を再構築した。20歳の子供のほとんどができないようなことをやって見せるし、世界で一番素晴らしい肉体を持つ40歳として生きている」
なるほど、確かにこれは「禁断の書」だ。ここまで明朗に繰り返されると、読み終わる頃には「ステロイドのどこが問題なのだろう」などと賛同しかねない気分になってくる。ベーマガが宣伝に熱心でない理由も、わかるような気がする。
そもそも、ステロイドはなぜいけないのか。たとえば、財団法人日本アンチドーピング機構は、ドーピングが許されない理由として次の4点を挙げる。
(1) 選手自身の健康を害する
(2) 不誠実(アンフェア)
(3) 社会悪
(4) スポーツ固有の価値を損ねる
リンク先には、それぞれの項目について説明文がついているけれど、率直に言って、私は(2)以下の項目については、あまり納得できない。そこに書かれている文章は、「禁止されているからダメなんだ」というトートロジーにしか見えない。
とすれば、もしカンセコが主張するように、専門家の指導の下、健康を損なう怖れがゼロに等しい形で薬物による筋肉増強を行うことが本当に可能なのだとしたら…スポーツ界は、きわめて高いレベルの説得力を持つ倫理や哲学を改めて構築しなければなるまい。一部の有力選手だけが「チーム誰某」と呼ばれるような支援組織を形成し、運動生理学者や栄養学者、用具メーカー、心理カウンセラー、広報マネージャーなど数多くの専門家の支援を受けて強化をはかることは容認されているのに、薬物使用だけが特異的にアンフェアなのだと、すべての関係者に納得させられるだけの理論武装が。
本書はステロイドに関する本であると同時に、カンセコ自身の伝記でもある。さほど将来を嘱望されたわけでもないルーキー時代から現在に至るまでの歩みの中で、カンセコはステロイドに関する記述と同じくらいの、あるいはそれ以上の熱意を込めて、自分がいかに球界やメディアに不当に扱われてきたか、球界でいかに白人が尊重されヒスパニックが差別待遇を受けているかを力説する。同時期に同じチームに在籍し、同程度の活躍をしても、アングロサクソンで白人のマグワイアは社会から守られて、羽目を外しても咎められることもないのに、自分は何をやっても非難の的になる、と。
そんな環境も、彼の行動の背景にはあるのかも知れない。
バリー・ボンズのWBC不参加表明を伝える1/25付スポーツ報知の記事には、イチローが「予想していた通りのこと。別に驚かないですよ」というコメントを寄せていた。
ボンズもまた、ステロイド使用が疑われ、本書の中でもカンセコに名指しされている選手のひとりだ。
(ボンズが愛用してきたサプリメント会社の社長と彼自身のトレーナーは、ステロイドの一種テトラハイドロゲストリノンを、名前を偽ってアスリートに提供したとして2004年初めに起訴された。
参考記事:
2003年12月05日「新種薬物疑惑、ボンズが米連邦大陪審で証言 (ロイター)」
2004年02月14日「ボンズのトレーナーら起訴 禁止ステロイド、虚偽表示し売却」)
そして、エントリ「嘘だと言ってよ、ヒデキ」にも記したように、WBCでは五輪と同様のドーピング検査が実施される。罰則規定はMLBのルールよりもはるかに厳しい。
イチローがボンズの不参加を予想した理由は、私の考えと同じだろうか。
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コメント
自分は圧倒的に(4)に関心があります。義手、義足、ステロイド、アンドロイド、サイボーグという具合に連想が広がるので。
投稿: sori | 2006/01/26 12:49
珍しく早めにコメントさせていただきます(笑)
確かに仰る通り、ドーピングをスポーツから排除する正当な理由は、健康を傷害する事ただ一点だけなのかも知れません。しかし実際、私たち見物人がドーピングに反対するとき、選手たちの健康を気遣って反対しているのでしょうか。もっと論理的な整合性を持たない、ある種の抵抗感で反対しているように思います。健康障害は、見物人ではなくアスリートの論理のように感じます。
私がドーピングというものから感じる「アンフェア」な印象(ここでいうアンフェアとはアスリート間での不公平な競争という意味でのアンフェアではありません)、違和感の正体は、本来そこに存在する必然性がないものによって、アスリートの能力が飛躍的に変わることへの抵抗だろうと考えます。栄養やトレーニングの管理、用具などは全てアスリートが競技を戦うために必須のものです。しかし、ドーピングは、競技者がそこへ「本来必要ではないものを持ち込む」という行為であり、それに不公正さを感じてしまうのではないでしょうか。ちょうど堀江氏の株式分割のような、うさんくささに抵抗を感じるからこそ、私はドーピングに反対です。
投稿: 考える木 | 2006/01/26 13:53
>soriさん
こんにちは。
>義手、義足、ステロイド、アンドロイド、サイボーグという具合に連想が広がるので。
義手、義足は道具ですからルールで規定することが可能ですね。しかし、たとえばテーピングによってパフォーマンスを向上させることはどうなのでしょう。そんなことも考えてしまいます。
アンドロイドは「人間型ロボット」で人間ではないので、さしあたり切り離してよいと思いますが。
>考える木さん
>もっと論理的な整合性を持たない、ある種の抵抗感で反対しているように思います。
>ちょうど堀江氏の株式分割のような、うさんくささに抵抗を感じるからこそ、私はドーピングに反対です。
まさにおっしゃる通りで、そこに譲れない核があるのだと思います。
しかし、明文化した規則によってドーピングを防ごうとすると、その「ある種の抵抗感」や「うさんくささ」が行間をすり抜けて捉えられなくなってしまう。そこに、この問題の難しさがあるように思うのです。
だからこそ、その正体を逃さず、きちんと仕留められるような倫理や哲学を用意しなければならない、と。
それとはまったく別の次元の素朴な疑問ですが、カンセコは「みんながステロイドで肉体改造すれば素晴らしい野球が見られる」というけれど、みんなアストロ超人みたいになった野球というものが、果たしてそんなに素晴らしく面白いものなんでしょうかね。
投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/26 21:12
サッカー狂が、たまには野球をお好きな方を挑発する機会かなと。
>それとはまったく別の次元の素朴な疑問ですが、
>カンセコは「みんながステロイドで肉体改造すれば
>素晴らしい野球が見られる」というけれど...
サッカーの場合、この念仏の鉄さまの疑問に対する回答は簡単なのですよね。おそらく、ステロイドは、選手の即興性や判断力を向上させる事はないので、たとえステロイドを使って肉体改造を行っても「素晴らしいサッカー」を見る事ができないのは自明かなと。
投稿: 武藤 | 2006/01/27 02:06
「道具ですからルールで規定することが可能」といえばそれまでですが、そのルール(の趣旨・精神)の解釈についての紛争は当然起こるでしょう。Casey Martinのカート、Edgar Davidsのゴーグル、Jose Cansecoのステロイド。
なんとなく現段階では「欠落の補填は正義、それ以上の発展は不正義」という程度のラインで不鮮明な合意があるような気もしますが、しかしやっぱりアンドロイドまで論理的断層を見つけられそうにありません、今のところは。
投稿: sori | 2006/01/27 14:11
>武藤さま
>おそらく、ステロイドは、選手の即興性や判断力を向上させる事はないので、たとえステロイドを使って肉体改造を行っても「素晴らしいサッカー」を見る事ができないのは自明かなと。
私は野球とサッカーの一方だけに肩入れする気はないので「挑発」と言われると困ります(笑)。カンセコの意見を支持する野球人も少ないと思いますし。
それはそれとして、カンセコの主張によれば、ステロイドは筋力とスタミナを増強するそうです。とすると、選手が即興性や判断力を発揮することを妨げる要因(フィジカルコンタクトによる妨害や疲労)を取り除く効果が期待できますから、間接的に「素晴らしいサッカー」に貢献する可能性はあるのではないでしょうか。
また、サッカー界の趨勢としても、選手の筋力とスタミナが必要とされる度合は高まっており、あまりにも強靱なスピードとスタミナを備えていることから興奮剤の使用さえ噂されたチームもあります。とすれば、サッカー界にもステロイドの誘惑が生まれる素地がないとは言えないのでは?
MLBのステロイド汚染を他人事と考えるよりも、他山の石ととらえるのが建設的ではないかと思います。
>soriさん
>なんとなく現段階では「欠落の補填は正義、それ以上の発展は不正義」という程度のラインで不鮮明な合意があるような気もしますが、
ご指摘のカートやゴーグルの例では、おっしゃるような線で落ち着いたようですね。それはたぶんスポーツ界の外側の常識にも沿っていると思います(「常識」自体が「不鮮明な合意」とも言えますが)。
投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/27 23:56
>鉄さま
>みんなアストロ超人みたいになった野球というものが、果たしてそんなに素晴らしく面白いものなんでしょうかね。
ドーピング野球が面白いかどうかは別にして、アストロ球団は好きでした。
特にリュウ坂本が好きでした。彼が超人でなかったときには、随分がっかりしたのを覚えています(笑)
閑話休題
>だからこそ、その正体を逃さず、きちんと仕留められるような倫理や哲学を用意しなければならない、と。
鉄さんは論理的な方なので、ドーピングを締め出す正当な理由が見つからない状況では居心地が悪いのだろうと思います。その点、私などルーズなものですから、「胡散臭さで締め出す」という矛盾を抱えたような状況でもドーピングに反対してしまいますね(反省) しかし、閉じられた社会の中で、どのように正当な倫理や哲学を構築しても、それに従わない人物は必ず現れてくるのではないでしょうか。いつの時代も変わらず常人の枠を超えたヒーローや勝者が賞賛される、という事実が変わらない以上、倫理や哲学でドーピングを締め出すことは大きな困難を伴いますね。ドーピング関連の薬品の入手経路を徹底的に断つということが、実際的かなと……。
それにしても、明らかにドーピングに手を染めていると思われるアスリートでも、確かな証拠がなく、明るみにさえ出なければ(その不自然な肉体や、ある時点からの成績の激変が証拠といえば証拠でしょうが、)その名誉が保たれているという現実は不公平で悲しいものです。もちろん、多くの人には分かっているとはいえ……
投稿: 考える木 | 2006/01/28 20:32
>考える木さん
>倫理や哲学でドーピングを締め出すことは大きな困難を伴いますね。ドーピング関連の薬品の入手経路を徹底的に断つということが、実際的かなと……。
「ドーピング関連の薬品」が特定されており、未来永劫変わらないのなら、それでもいいでしょう。しかし実際のアンチドーピングは、次から次へと出現する新物質とのイタチごっこです。
誤解なさっているのかも知れませんが、私は倫理や哲学で選手の行動をコントロールしようと言っているわけではありません。これから生まれてくる新物質を「ドーピング関連の薬品」と定義し禁止するために、いずれ現在よりも精緻な論理構成が必要とされるだろうと予測しているだけです。
競技力を向上させ、健康への被害がゼロに近く、選手であれば誰もが容易に入手可能(=公平性を損なわない)な物質が出現したら、現在のアンチドーピング規定は無力になります。禁止薬物に指定しても、選手から訴訟を起こされたら勝てるかどうか。今の流れを見ていると、いずれそんな日が来るような気がします。
問題は私の居心地ではなく、アンチドーピング規定の成立基盤にあるとお考えください。
投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/29 21:55
素人の素朴なアンチドーピング論です。
ドーピングが「アンフェア」な感じがするのは「楽してがっぽり大儲け」というイメージがあるからだと思います。他の選手が営々と汗を流して獲得するもの(筋力、スタミナetc.)を、クスリによって楽々と獲得するのだとしたら、それはやっぱり「ズルイ」と思います。
「競技力を向上させ、健康への被害がゼロに近く、選手であれば誰もが容易に入手可能(=公平性を損なわない)な物質」が普及したら、上記の「ずるさ(公平性)」の問題はなくなるんですけど、そしたら選手の薬物による肉体改造がどんどんエスカレートしますよね、確実に。それはアスリートを常人と隔絶した「超人」としてしまわないでしょうか。体格も体力も明らかに常人と異なった集団ができる。そして競技特性に応じた肉体的な誇張が起こる…。そしたらそれはもう化学的サイボーグと言うべきでしょう。身長2m以上ばかりのバスケ集団の隣に身長150㎝体重100㎏の重量挙げ集団がいる光景とかを想像すると、かなり私は「引いて」しまうのですが。
スポーツ選手がヒーローたりえるためには、凡人である私たちと「つながっている」という感覚が大事なのだと思います。もしアスリートが肉体改造を重ねたあげく異星人みたいになってしまうというのは、スポーツにとって非常に不幸な未来ではないかと思います。
そういう意味で、カンセコって悲しい人だなぁと思います。「永遠の若さ」なんてフェイクなのに。「サイボーグ・ブルース」というSF小説を思い出してしまいました。
投稿: 馬場伸一 | 2006/01/30 11:25
>義手、義足は道具ですからルールで規定することが可能
よく知りませんが、「アンチドーピング規定」というのは「ルール」じゃないのですか。
鉄さんの疑問は、個々の薬物を固有名詞や化学式で指定するのでなく、一般的に論理的にドーピングを定義し、そして、それを禁止すべきことの合理的客観的根拠を示すことは、将来にわたって可能だろうか、ということでしょうか。
それは不可能でしょう。現在も個々の薬物を指定してるだけだし(知りませんが)。「ルール」というのは多くは「禁止されてるからダメなんだ」というものだと思います。
例えばサッカーで手の使用が禁止されていることに、特に「精緻な論理構成」もないわけですが、「オレに手を使わせろ、と訴訟を起こされたら勝てるかどうか」なんて心配する人はいません。なぜドーピングに関してだけ心配されるのか、いまいちわからないのですが。
投稿: nobio | 2006/01/30 18:47
>馬場伸一さん
>スポーツ選手がヒーローたりえるためには、凡人である私たちと「つながっている」という感覚が大事なのだと思います。
そうですね。観客に支持されるか否かが、最後の歯止めになるのかも知れませんね。
>nobioさん
>鉄さんの疑問は、個々の薬物を固有名詞や化学式で指定するのでなく、一般的に論理的にドーピングを定義し、そして、それを禁止すべきことの合理的客観的根拠を示すことは、将来にわたって可能だろうか、ということでしょうか。
そうですね。疑問というより、それができないと、いずれドーピングは防げなくなるんじゃないか、という懸念です。
IOCのアンチ・ドーピング規定は、まずドーピングを定義し、それに該当する禁止物質を具体的に指定しています。この定義というのが実に曖昧で、すでにかなり無理があるような気がします。
>なぜドーピングに関してだけ心配されるのか、いまいちわからないのですが。
馬場伸一さんが「化学的サイボーグ」とか「異星人みたい」と書いておられますが、私はそういうものをあまり見たくないので、ドーピングに歯止めがかからなくなる可能性を心配しているわけです。
それでも構わないとか、そっちの方がいいという前提に立つのなら、何も心配する必要はないでしょう。
(どうせ根絶が不可能なら、いっそ解禁して徹底的にやってみたらどうなるんだろう、と思わなくもないのですが)
そもそもこのエントリと一連のコメントは「カンセコの本を読むと、こんなことまで心配になってくる」というところから出発しているので、「何をそんなに心配してるんだ」と聞かれると、ちょっと困ります。
あと、サッカーの例えについていえば、手を使わないのは競技規則であり競技の定義そのものですから「禁止されているからダメ」でOKです。しかしアンチドーピング規定は競技を競技たらしめるための大会規定で、禁止する根拠を示せなければ成立しない性質のルールだと思います。
投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/31 00:44
私の疑問は、ドーピングがもたらすグロテスクな未来を何故そんなに心配するのか、ということではなく、論理構成が厳密でないことがそんなに問題でしょうか、ということです。合理的根拠を示せなくてもたぶん歯止めはかかるだろう、と思うので、つまり言いたいのは
>そうですね。観客に支持されるか否かが、最後の歯止めになるのかも知れませんね。
これとほぼ同じことです。
投稿: nobio | 2006/01/31 13:09
>nobioさん
>合理的根拠を示せなくてもたぶん歯止めはかかるだろう、と思うので、つまり言いたいのは
>
>>そうですね。観客に支持されるか否かが、最後の歯止めになるのかも知れませんね。
>
>これとほぼ同じことです。
MLBの例で言えば、90年代末から00年代初頭、ステロイドで強化された可能性のある選手たちのホームランは観客から強く支持されましたが、その後はドーピング検査が導入されたこともあり、揺り戻しが起きています。前者に着目すれば心配になるし、後者に着目すれば、まあ大丈夫だろうという気もします。
日本のスポーツ界では、まだドーピングが深刻な問題として表面化したことがないので、実際のところ、私も実感は湧きません。
ただ、上の方で考える木さんが「堀江氏の株式分割」を引き合いに出していますが、ああいう「ルールにないことは、先にやった者の勝ち。やらない奴は馬鹿」という精神性が世の中に蔓延しているのなら、スポーツ界だけが無縁であることは難しいだろうとも思います。
ここ10年あまり、我々は世の中のさまざまな局面で、「暗黙の了解」が崩れ、「起こるはずのないこと」が起こるのを見てきました。それも、この取り越し苦労の理由のひとつです。だんだん年寄りの繰り言めいてきましたが(笑)。
投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/31 20:03
念仏の鉄さま、ご無沙汰しております。
(既に忘れられているかもしれませんが)
ここでの議論はMLBが発端になっていることもあり、筋肉強化系のドーピングがベースになっているように思われますが、持久系のスポーツでもドーピングは大問題だったりします。(EPOや血液ドーピングによって(赤血球濃度)を上げる方法があります)
自転車のロードレースは持久系のスポーツの代表格と言っても良いと思いますけど、ここでは1990年代の後半くらいからドーピングが大きな問題となり、現在では非常に厳しい検査が行われているようです。
実際のドーピング疑惑の事例については以下の文章を参照していただいた方が良いかなと思います。
http://tokyo.cool.ne.jp/velochouchou/chyottositahanashi8.htm
・・・
ただ、上記のお話しは私が自転車競技をあんまり見ていなかった時期に重なることもあって正直なところ、人様に何か言えるようなものじゃないのです。
ただ、別の角度からのお話しということで上げさせていただこうという考えです。
では。
投稿: せっけん | 2006/02/01 02:20
>せっけんさん
ふくはらさんのところに出入りされてた方ですよね。ご無沙汰してます。
私も他の競技の事情はよく知らないのですが、たぶんMLBのように筋肉を増強させるタイプのドーピングはあまり多くないのでは。あまりに見え見えで証拠が残りやすい(笑)。ドーピングに対する規制がなかったから、あそこまで行ってしまったのでしょう。
ご紹介いただいたサイトでは、「選手の死」というコラムに驚きました。自転車競技で現役の有名選手が何人も急死したとか。薬物が直接の原因かどうかはわからないようですが、後遺症としての鬱病、という可能性は感じます。
この方が何度か触れていますが、ロードレースそのものの高速化が進みすぎて、選手の肉体にとって臨界点に近づいていたことが、ドーピングが蔓延する背景にあったようです。
サッカーの世界でも同じころ、同じような背景のもとに、イタリアでドーピング疑惑が問題になりました。欧州諸国で薬物の供給が組織的に行われているのなら、供給者たちが自転車だけでなくサッカー選手も顧客にしようと考えるのは自然な流れでしょうね。
投稿: 念仏の鉄 | 2006/02/01 09:34
仕切りなおしのコメント、フェアかアンフェアかという基準ならここのほうが向いていると思いますので、ここに再投稿します。あちらのエントリは流れが切れないように適切に処理してくださいませ。手間をお掛けして申し訳ありません。
渦中の2段モーション、MLBの審判と現役捕手の2人の見解では三浦、岩隈セーフ、藤川アウトとのこと(報道ステーションの栗山さんの取材)。
何でも藤川は足の静止中に手が動いていることがNG、三浦、岩隈は逆に足が止まっているときに余計な動きがないので、流れの中でタイミングを取っていると判断するのだそうです。
彼らMLBとしての立場は、明らかにタイミングをはずすために静止時間がばらばらになるようなことがなければ問題ないとのこと。要はアンフェアなプレーかどうかが一番の基準のようです。
追記:
これはMLB基準であり、インターナショナルスタンダードとは一応別です。ドーピングコントロールがMLBとオリンピックとで微妙に違うのと同じように
投稿: エムナカ | 2006/02/05 07:21
>エムナカさん
次からは、というつもりだったんですが(笑)。二度手間させてしまいましたね。失礼。
>渦中の2段モーション、MLBの審判と現役捕手の2人の見解では三浦、岩隈セーフ、藤川アウトとのこと(報道ステーションの栗山さんの取材)。
さっき、たまたま点けたテレビで大沢・張本の「喝!」漫談を見てしまいましたが、「アメリカの審判とキャッチャーはこう言ってるらしいよ」と同じ話をしていました。他局の独自取材をそうと言わずに持ち出していいのか親分(笑)。
>これはMLB基準であり、インターナショナルスタンダードとは一応別です。ドーピングコントロールがMLBとオリンピックとで微妙に違うのと同じように
WBC公式サイトのFAQ(http://www.worldbaseballclassic.com/2006/about/index.jsp?sid=wbc)を見ると、判定基準はMLB基準でいくようです。ドーピングコントロールはOlympic-style drug testingでいくようですが、これはIBAFの公認大会にするための条件なのかもしれません。
投稿: 念仏の鉄 | 2006/02/05 10:43
カンセコって格闘家に転身したそうですね。知りませんでした。
DREAM出場のカンセコが来日、ホンマン戦へ意気込み
5月23日18時51分配信②スポーツナビ
総合格闘技イベント「DREAM.9(26日・横浜A)」でチェ・ホンマンと対戦する元メジャーリーガーのホセ・カンセコが23日、米国ロサンゼルス発の飛行機で成田空港に到着した。「日本に来るのは野球の日米戦以来。20年ぶりくらいかな?」と来日をよろこんだカンセコは、フライトで疲れた様子もなく、空港で待ち受けた大勢の報道陣に囲まれるとそのまま笑顔で取材に応じた。
カンセコの総合格闘技挑戦は、世界から大きな注目を集める一方で「愚行」「下品な見世物」などとして酷評を受けており、囲み取材ではカンセコ自身「45歳で総合格闘技に挑戦、しかもホンマンのような大きな選手と戦うなんてばかばかしい」と周囲から批判的な反応があったことを明かした。
「ジムを3〜4つ、掛け持ちして練習を積んできたよ。DREAMのルールは1ラウンドが10分と長いからね、特に持久力を磨いてきた。野球と総合格闘技はまったく違う競技。鍛える部分もまったく違うから比較はできないが、年齢に負けないだけのちからは身に付けてきたつもりさ」。対戦相手のホンマンはK−1出身で打撃を得意とし、リーチとパワーでカンセコを大きく上回っている。キックボクシングで20年以上の経験を持つカンセコだが、打撃勝負に特化するならホンマンの圧倒的有利はあきらか。しかしその不利を克服せんと、カンセコは総合格闘技で長身選手攻略に有効とされる正統派プランを用意していた。「ホンマンの顔まで俺のパンチが届くかどうかすら分からない。防御を固めてフットワークを使ってうまく逃げ回りながら、組んで倒して、寝技で決着を付けたいね」
世界が注目するカンセコの格闘技挑戦。型にはまらぬ性格と実力で球界に偉業を残した男のビッグチャレンジは茶番に終わるか、それとも新たな記録を刻むか!?
■DREAM.9 フェザー級グランプリ 2ndROUND
5月26日(火)神奈川・横浜アリーナ 開場17:00 開始18:00
<第10試合 DREAMミドル級王座決定戦>
ホナウド・ジャカレイ
ジェイソン“メイヘム”ミラー
<第9試合 フェザー級GP2回戦>
山本“KID”徳郁
ジョー・ウォーレン
<第2試合 スーパーハルクトーナメント1回戦>
チェ・ホンマン
ホセ・カンセコ
<第1試合 スーパーハルクトーナメント1回戦>
ボブ・サップ
ミノワマン
最終更新:5月24日8時44分
投稿: nobio | 2009/05/25 03:17
>nobioさん
以前どこかで記事を読みましたが、明日が試合なんですね。
カンセコが野球界の外で何をしようと(犯罪でなければ)とやかく言う筋はありませんが、nobioさんが引用された記事も、DREAMのオフィシャルサイトの選手紹介も、カンセコのMLBにおける実績を喧伝しておきながら薬物使用についてまったく触れていないのは釈然としません。
ま、格闘技の世界では筋肉増強剤使用は問題ではない、ということなら、それはそれでよいのかも知れませんが、昨日は横浜ベイスターズの始球式で佐々木と対決したそうです。
著書の中で現役時代の薬物使用を公然と認め、むしろ奨励する主張をしている人物を、公式戦の始球式に招くことがどういう意味を持っているのか、横浜ベイスターズはどの程度真剣に考えたのでしょう。
投稿: 念仏の鉄 | 2009/05/25 15:56