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Jリーグが「戦力均衡化」を唱えない理由。

 昨年2月に書いた「上原君、頼むからカート・フラッドの名前くらい覚えてくれ。」というエントリが、最近になっていろんな方に発見(笑)され、いくつかコメントをいただいた。もともとのエントリは、ジャイアンツの上原浩治投手が公式サイトに書いた文章の、MLBのFA制度の歴史に関する認識を批判したものだが、これに関して、「中日ドラゴンズ観測所」のnobioさんから、こんなコメントをいただいた。

>上原は「まず疑問に思ったのは、サッカー界は1年おきの契約で、なんで野球界は経営者側に長い保留権があるかってこと」と書いてますが、これ、私にとってもかねがね不思議です。
>サッカー界にはドラフトもないみたいだし、それでも、そのやり方が戦力不均衡を招いているという声も聞かないし、サッカーと野球ではどうしてこれほど違うのでしょうか。

 コメント欄で長いレスを書いたのだが、これはこれで単独のエントリを立ててもいいような気がしてきたので、一部を加筆修正して以下に記してみる。nobioさん、勝手に名前出してすみませんが、いきがかり上ということでお許しを。


 nobioさんのご指摘の中で新鮮だったのは「戦力不均衡を招いているという声も聞かないし」という部分だった。
 ここ数年、プロ野球改革を唱える人々の多くが(野球界の内外を問わず)、「戦力均衡化」を目標に掲げている。そうでないのは読売ジャイアンツと福岡ソフトバンクホークスの関係者くらいだ。その世界を見慣れた目でサッカー界を眺めれば、nobioさんのような疑問が出てくるのは自然なことだと思う。
 「戦力不均衡を招いているという声も聞かない」という認識は、おそらく正しい。しかし、そういう声が上がらないのは、必ずしもJリーグ各クラブの戦力が均衡しているからではない。
 Jリーグにも戦力の不均衡があり、それはむしろ広がりつつある。昨年初め、ジュビロ磐田は、もっとも予算規模の小さいクラブのひとつであるジェフ千葉から生え抜きの代表選手2人を引き抜いた。ここ2年間でもっとも安定した好成績を残している浦和レッズは、このオフ、二部落ちした東京ヴェルディをはじめ、いくつかのクラブから主力選手を獲得している。このような引き抜きは、選手を引き抜かれたクラブのサポーターからは呪詛の対象になっているが、サッカー界全体では特に問題視されてはいない。
 要するに、そもそもJリーグは、戦力均衡化を目指してはいないと考えることができる。

 なぜJリーグでは戦力不均衡が問題にならないのか。
 NPBの戦力均衡化を求める人々は、「試合やペナントレースの魅力を維持するため」という理由を挙げる。上位チームと下位チームの戦力に差がつきすぎると、ワンサイドゲームが増え、試合の魅力が減退するから、これを避けなければならない。それはそれで合理性のある主張だ。

 サッカーの場合、まず前提としてゲームそのものが、戦力差が試合結果にダイレクトに反映しづらい性質を持っていることを踏まえておきたい。11人の個人能力の総和には大差があっても、劣る方のチームが組織的に守備を固めれば、そう簡単に点は奪えなくなる。一方的に攻め続け、シュートを打ちまくったチームが、得点できないままカウンター一発で敗れるという試合展開が、しばしば起こりうる。従って、戦力の格差が、即座にリーグ戦の興を削ぐとは言い切れない面がある。

 次に、Jリーグは二部構造を備えていて、一部リーグの下位クラブと二部リーグの上位クラブが常に入れ替わる仕組みを持っていることが挙げられる。並み外れて弱いクラブは一部リーグから退場させられるので、一時期の阪神タイガースのように、来る年も来る年も最下位に居座ることは、Jリーグでは構造的に不可能だ。従って、戦力格差は、弱い方に関しては、ある程度以上広がらない歯止めが存在する。

 では、強いクラブの強引な強化が批判されないのはなぜか。

 「ルール上認められているから(サッカー選手は原則的に全員が野球でいうフリーエージェントと同じ身分で、契約期間が満了すれば、どのクラブと契約することも可能だ。ただし上原の認識とは異なり、有力選手では複数年契約が一般化している)」とか「それが世界の常識だから」ということは理由にならない。読売ジャイアンツの選手獲得方法はルール違反ではないし(ドラフト対象選手への裏金は別)、MLBでジャイアンツ程度の補強をしているチームは珍しくないが、それでも日本では盛大に批判を浴びている。

 NPBとの違いとして考えられるのは、Jリーグか天皇杯に優勝したクラブに、アジアチャンピオンズリーグへの出場権が与えられる点だ。この大会に優勝すればトヨタカップ世界クラブ選手権にアジア代表として出場できる。Jリーグを代表するクラブが世界で勝ち進み、存在感を示すことは、Jリーグを含む日本サッカー関係者の共通の利益と考えられている。従って、上位クラブの強化は批判されるどころか、さらに強大になることが期待されているといってもよい(現実に、この大会に出場すると他クラブよりも過密日程で数多くの遠征をこなさなければならないので、質量ともに巨大な戦力を持たなければ対処できない。その意味で、ACL出場チームの強化は、決して不必要とか過剰とは言えない)。

 ここまで述べた構造は、Jリーグ独自の仕組みではなく、世界の多くのリーグに共通している(私が知っている例外は、USAのプロサッカーリーグ、MLSくらいだ。MLSはリーグが一括して選手と契約し、各クラブに配分するという仕組みを、少なくとも発足当初には採っていた)。優勝チームが世界大会に出場し、その結果が問われるという環境の中では、国内リーグの中で戦力均衡をはかることよりも、上位チームが世界に通用する戦力を持つことの方が重要視されるのは必然だろう。

 そう考えると、NPBが「戦力均衡化」を目指さなければならないのは、優勝したチームの「強さ」が外部から問われる機会がなく、最下位チームも翌シーズンには同じスタートラインに立てるという「閉じたリーグ」なるがゆえの現象と言えるかも知れない(これはMLBなどUSAの4大プロスポーツリーグにも共通している)。
 だから、将来のプロ野球において、アジアシリーズで日本が負け続けたり、MLB優勝チームとの対戦が実現し、かつ惨敗が続いたりするようなことがあれば、強豪チームの戦力の巨大化をファンやメディアが熱望するようになる可能性も、ないとは言えない。


 ただし、同時に指摘しておかなければならないのは、現在のJリーグが、世界的にも珍しいほど戦力が均衡化したリーグだということだ。2005年のリーグ戦は最終節まで5チームに優勝の可能性が残る接戦となった。2005年度の3大タイトルを獲得した3クラブのうち2クラブは、これがJリーグ発足以来の初タイトルだった。2005年元日に天皇杯を制した東京ヴェルディが1年後には二部に落ちている。こんなに浮き沈みの激しいリーグはめったにないだろう。
 イングランド、スペイン、イタリアなど欧州の主要リーグでは、タイトルを獲る可能性があるのは、一握りの金持ちクラブに限られている(欧州の中堅国のリーグにも、さらに極端なところが多い)。それがリーグ人気が停滞する理由のひとつに挙げられてもいるようだ。
 Jリーグが将来、欧州トップモードに追随して、2,3の金持ちクラブだけであらゆるタイトルを分け合うような状況になってしまったら、「戦力均衡化」が課題として指摘されるようになるのかも知れない。


 長くなったので、保留権については改めて。そっちの方が複雑で難しいので、勉強しないと書けません(笑)。

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コメント

鉄さんありがとうございました。いつもながら勉強になります。

ドラフトとかFAとかしょっちゅう議論のネタになりますが、
野球ファンの目でサッカー界を見ると、その手の諸問題が、いちいち
うまく行ってるように見えて、何故だろう、と思うわけです。

国内リーグの外側に国際試合があるから、という理由は確かになるほどですが、
しかし国際試合のことを考えずに国内リーグ戦の盛り上がりという点だけ見ても、
「戦力均衡しないと優勝争いが盛り上がらなくてつまらん」
という現象は起きてないみたいですね。(ヨーロッパには起きてるそうですが)

まあ、「そういう現象が起きないのはいいことなのかどうか」は、また別ですが。
「安定的に毎年強いチーム」がふたつかみっつ定まった方が、(リーグ戦の興趣は減るとしても)
日本サッカーの国際競争力は上がるんじゃないかと(なんとなくですが)思い、
なんでJリーグがなかなかそうならないのか、というのはちょっと不思議です。

投稿: nobio | 2006/01/20 23:44

プロ野球は、アメリカ式の「閉じたリーグ」ですよね。
もし、サッカーのような「チームが浮沈する」というシステムになっていた場合、例えば阪神タイガースのリーグ優勝は「2部リーグ優勝」という形になっていたのかもしれません。

選手個人のレベルにおいて、野球では選手自身の一軍・二軍の浮沈をかけて戦いますが、サッカーでは「チームそのものが浮沈」するため、勝ち続けなければ翌シーズン、そのリーグに「チーム自体がいない」ということになります。

もっとも、Jリーグにとって日本一は「目標の一部」に過ぎず、サッカーにおいては他国同様、
「世界と互角に戦うチーム」
「世界一を狙えるチーム」を目指し、
あわよくば「世界を獲る」ことまでも視野に入れています。

そのためのアプローチとして、
「圧倒的に強いチームが引っ張る」
「均衡を保ちながらレベルアップする」
のどちらがよいのか、難しいところですね。

投稿: はたやん | 2006/01/21 00:27

>nobioさん
>「安定的に毎年強いチーム」がふたつかみっつ定まった方が、(リーグ戦の興趣は減るとしても)
>日本サッカーの国際競争力は上がるんじゃないかと(なんとなくですが)思い、
>なんでJリーグがなかなかそうならないのか、というのはちょっと不思議です。

磐田・鹿島の2強が圧倒的に強い時期もあったのですが、あまり長くは続きませんでした。
続かなかった理由はそれぞれにあるのでしょうが、当時はまだクラブ世界選手権がなく(1度だけ開催され、それきりでした)、アジアで勝ち進むことのメリットがさほど大きくなかった、という面もあると思います。磐田はACLの前身であったアジアクラブ選手権で3度決勝に進出し、1度は優勝していますが、たぶんあまり知られていないのでは(笑)。

ここ数年は、浦和、横浜Mなどが豊富な資金を背景に力をつけており、今後ビッグクラブ化していく可能性もあります。また、昨年、トヨタカップがクラブ世界選手権になったことで、ACLからトヨタカップに進み、欧州や南米の強豪と戦う道が開けました。ですから、近い将来、nobioさんが言うような状況になっていくこともありうると思います。


>はたやんさん
>そのためのアプローチとして、
>「圧倒的に強いチームが引っ張る」
>「均衡を保ちながらレベルアップする」
>のどちらがよいのか、難しいところですね。

まあ現実には、リーグが制度をコントロールしてどちらかを選ぶというのは難しいので、結果的にどちらかになっていくのだと思います。

ただ、「閉じたリーグ」の中で戦力均衡を優先しすぎると、リーグ全体の水準に目が向かなくなる怖れはあります。
実際、NPBでは「日本プロ野球のレベルは上がっているか」という議論は、あまりないですよね。昔に比べてレベルが上がったとか落ちたとかいうのは、年配のOB解説者の「年寄りの繰り言」的な印象批評でしか語られません。もう少し真剣な課題として意識されていいような気はします。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/21 10:54

お役に立てて光栄です。

プロ野球なら「日本一」が究極の目標なのだろうけど、サッカーだと「本当の勝負はこれからだ!」ということになるのでしょう。

投稿: はたやん | 2006/01/21 22:55

日本サッカーがまだまだ成熟していない、と言ってしまえば済んでしまう面はあると思います。欧州については、戦力均衡についておかしくなってきたのはここ10年くらいで(最大の原因は移籍基準を変えてしまった95年のボスマン判決ですね)、しかも表面化したのはここ2,3年です。欧州リーグは6位まで欧州カップの出場権があるところもあり、多少の戦力不均衡があってもモチベーション的には恵まれていた、にもかかわらず観客動員に響いてきたのは、一部の上位クラブがそれだけやり過ぎた結果なのだと思います。この面では、日本は優勝以外メリットがそんなにない分、どこかで問題になりそうな気がします。


以下、東京サポーターの妬みに近いものもありますが(笑)
日本もいずれ問題は起きるだろうな、と思います。今日いくつかのクラブのサポーターと話しましたが、浦和のここ2年くらいの補強に呆れている人は思ったよりも多そうです。収入がそれだけあるクラブなんで完全に妬みなんですけど(笑)、ただみんな「どこが浦和を止めるんだよ…」という諦めの嘆きを既にしている状態です。浦和が来年のシーズン、2チーム分の戦力も整えて、アジアで戦う一方でリーグも独走、などとなったときにJリーグ全体の盛り上がりがどうなるのか、これは私はちょっと不安ですね。

投稿: アルヴァロ | 2006/01/21 23:32

>日本もいずれ問題は起きるだろうな、と思います。

という言葉が重複してしまいました。申し訳ありません。

投稿: アルヴァロ | 2006/01/21 23:34

>アルヴァロさん
>浦和が来年のシーズン、2チーム分の戦力も整えて、アジアで戦う一方でリーグも独走、などとなったときにJリーグ全体の盛り上がりがどうなるのか、これは私はちょっと不安ですね。

そうそう目論見通りに勝てるものかどうか、という気もしますが、集めた選手を使いこなせなければ「飼い殺し」との非難は出るでしょうね。まあサッカーの場合は、欲しがるクラブがあって選手本人が望めば最終的には移籍可能なので、野球ほど深刻な問題にはならないでしょうけれど。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/21 23:54

プロスポーツのチーム競技としては今年できたばかりのbjリーグは別として、野球とサッカーが日本では広く認知されているわけで、この2つの競技の移籍に対するスタンスの違いはかなり顕著ですから気になるところではありますね。

競技特性や入れ替えの有無に関しては皆さんのおっしゃるとおりと思います。もう一つはサッカーの年間予算はいくら浦和が多いといっても支配下選手やスタッフの数が基本的に倍以上で、年間試合数が4倍以上のプロ野球はそれをはるかにしのぐ額のお金を動かさなければ強豪で居続けることはできないということです。

さらにプロ野球は選手供給をすべて学校と社会人チーム(クラブもあるがほとんど企業チーム)に頼っていて、チームの下部組織を持っているサッカーにドラフトを導入することは却って移籍問題をややこしくすることになります。

逆に言えばドラフト制度が定着している現在でプロ野球が提携先も含めた下部組織を持ちはじめ、他球団の下部組織出身の選手がドラフト指名を受けるとまたややこしくなりそうです。
特に育成にお金をかけない球団に手塩にかけた秘蔵の選手をドラフトでかっさらわれたらトップチームとしてはたまらないでしょうから、あえてドラフト制度を背景に下部組織を持たないようにしているのでしょう。

投稿: エムナカ | 2006/01/22 01:12

>チームの下部組織を持っているサッカーにドラフトを導入することは
>却って移籍問題をややこしくすることになります。

なるほど。

>支配下選手やスタッフの数が基本的に倍以上で、年間試合数が4倍以上のプロ野球は
>それをはるかにしのぐ額のお金を動かさなければ強豪で居続けることはできない

なるほど。以前、鉄さんの『プロ野球に二軍は必要か』
http://kenbtsu.way-nifty.com/blog/2005/11/post_6360.html
を読んだときは感動しましたが、ますます「二軍撤廃戦略」は有効なような気がしてきました。

FAで野口が巨人に行き、その人的補償で中日が小田を獲った、ということが先日ありました。巨人は28人(でしたっけ)をプロテクトし、その28人に漏れた選手から、中日が小田を選んだわけです。「もしプロテクト枠が28人でなく、40人だったら誰が獲れただろうか」と考えると、「大体どのチームも、40人もいりゃ十分じゃないのか」と、思わずにいられません。

投稿: nobio | 2006/01/22 05:09

>エムナカさん
>チームの下部組織を持っているサッカーにドラフトを導入することは却って移籍問題をややこしくすることになります。

確かに。ただ、日本リーグ時代に若年層の育成組織を持っていたのは読売クラブ(現在の東京ヴェルディ)などごく一部で、今のように全クラブが持つようになったのは、Jリーグが発足時にこれを義務づけたためなので、「下部組織があるからドラフトをしない」というよりは、「下部組織を持つ」「ドラフトをしない」という2つの選択を同時に行ったことになります。
なぜそうなったのか正確な理由は知りませんが、たぶん欧州に倣ったのだろうと思います。国内でドラフトをしたところで、平山のケースのように有望な学生を直接欧州に持っていかれたのでは無意味ですし。
(野球では日米間に紳士協定があり、NPBがドラフト指名した選手にNLBは手を出さないことになっています)

>特に育成にお金をかけない球団に手塩にかけた秘蔵の選手をドラフトでかっさらわれたらトップチームとしてはたまらないでしょうから、あえてドラフト制度を背景に下部組織を持たないようにしているのでしょう。

NPBが下部組織を持たないのは、ご指摘の理由のほかに、そんなコストをかけるよりも、高校や大学が育てた選手を刈り取った方が楽だからだと思います(また、プロが有望な高校生を囲い込むことは、高野連の反発を買う怖れもあります)。
ただ、阪神が中卒選手を獲得したり、ジャイアンツが小学生向け野球学校を作ったり、若年層育成に向けた動きが起こりつつあるので、この傾向が強まるのであれば、エムナカさんが指摘する問題がいずれ障害になってきますね。

>nobioさん
>ますます「二軍撤廃戦略」は有効なような気がしてきました。

たぶん、この思いつきが機能するには、故障者続出などで必要が生じた際に、シーズン中でも他チームやアマチュアから戦力を調達できる人材流動性が必要だろうと思います。そうなると、ドラフト制度とどう兼ね合いをつけるか、という課題が残りますね。
「二軍は必要か」のエントリでぼむさんという方が教えてくれたNFLのPSという練習生制度(他のチームが一軍登録するなら引き抜いてよい)も参考になります。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/22 08:28

サッカーについてよく知らないのですが、口出しさせてください(笑)

>鉄さん
>サッカーの場合、まず前提としてゲームそのものが、戦力差が試合結果にダイレクトに反映しづらい性質を持っていることを踏まえておきたい。

同感です。前の『ようこそ先輩』のコメントや私のブログでも触れさせていただきましたが、野球は基本的には一対一の対決の積み重ねで成り立っているスポーツなので、ゲームの中での組織力に勝敗が左右され、試合の中で一対複数という状況も起こりうるサッカーと比べれば、個人技の総和がダイレクトに出やすく、チーム構成が問題になるのだと思います。
しかし、サッカーと言えども、資金にものをいわせ秀でた選手を集めていけば、チーム力は強化していくはずで、そのようなビッグクラブがJリーグを牛耳っていくような事態も起こりうるのではないでしょうか(今は選手の海外移籍などもビッグクラブ出現の歯止めになっているように思います。)アルヴァロさんの懸念に同感です。そして、問題なのはそのようなビッグクラブが出現しても、世界に伍して戦えない場合にはどうなるのだろうと思います。Jリーグが箱庭のように矮小化し、戦力均衡化のみが問題化されるような事態が生じうる可能性は如何でしょうか。

投稿: 考える木 | 2006/01/22 09:19

先の鉄さんのコメント
>国内でドラフトをしたところで、平山のケースのように有望な学生を直接欧州に持っていかれたのでは無意味ですし。
(野球では日米間に紳士協定があり、NPBがドラフト指名した選手にNLBは手を出さないことになっています)

これを見て、競技の国際マーケットの広さを考えるとパンパシフィック地域にほぼ限定されている野球に比べてワールドワイドのサッカーのほうが規模が圧倒的に広いわけです。

さらにサッカーの移籍市場では若い選手の契約途中での移籍には移籍金が発生することになっていて、30歳を超えるまではかなり高い移籍係数が「平均基本報酬(前年年俸、移籍元次年年俸、移籍先次年年俸の平均額で移籍元の次年年俸が減額される場合は一定のバイアスが掛けられる、詳細は以下のURLで http://www.jfa.or.jp/kiyaku/sheet2.html )」に対して掛けられるため、育成した選手の引き抜きに対するプロテクトをしています(そのためシーズンオフの契約解除された選手をトライアウトで獲得する場合は移籍金発生せず、資金が潤沢でないクラブにとっては金のなる木が転がっているともいえますが、それは前所属チームから解雇された理由如何では貧乏くじになる場合もあります)。
しかも移籍金の話はプロクラブ同士の移籍に関するものですから、平山のようにアマチュアチームから海外のプロクラブが一本釣りした場合は移籍金ゼロです(国内チーム同士の場合、JFAが規定しているルールに基づき、育成資金として手当てが前所属および前々所属のアマチュアチームに在籍年数に応じた定額が支払われます)

競技特性以外にもUSAがスタンダードの野球とEUがスタンダードのサッカーとの文化的背景の違いがありますよね。日本もUSAも学校体育主導ですし、地域クラブの存在はどちらかというと2番手ですよね。

まあ、理由をいろいろ考えると違いはいくらでもありそうですが、移籍マーケットが大きいサッカーのほうが、国際標準に準じた形で運用しないといろいろな歪が生じて難しいのだというのがドラフト導入を避ける理由の一つにはなっていると思います。

投稿: エムナカ | 2006/01/22 09:44

>チームの下部組織を持っているサッカーにドラフトを導入することは
>却って移籍問題をややこしくすることになります。


ううむ…そういえばドラフトを行なっているbjリーグはユースを持つことを視野に入れているので、将来的にこの「ややこしいシステム」を目指しているんですよね。というか、bjについては初年度ということもあり、移籍システムが未だに見えてこないので、これはこれで自分もじっくり考えてみようと思います。


ちなみに最近出た「迷走 プロ野球」という雑誌の中で、江本孟紀が豊田泰光との対談の中で、以前鉄さんが指摘されていた「2軍撤廃&マイナーリーグ化」を唱えていました。江本についてはこれまで、いつもいろいろわめいているなぁ、という印象でしたが、サムライベアーズなど、なかなか考えているんだなと歓心しましたね。

投稿: アルヴァロ | 2006/01/22 10:28

アルヴァロさん

>ううむ…そういえばドラフトを行なっているbjリーグはユースを持つことを視野に入れているので、将来的にこの「ややこしいシステム」を目指しているんですよね。というか、bjについては初年度ということもあり、移籍システムが未だに見えてこないので、これはこれで自分もじっくり考えてみようと思います。

bjリーグの場合、選手供給源の学校の協力を得るのが難しい(JABBA/JBLがbjと関わらないよう公式か非公式かはよくわかりませんが通達を出しているらしい)というのが下部の育成組織を持たせようとしている最大の理由だと思います。
ただ高校時代まではやはり地元で生活するほうがスポーツ留学するより多いでしょうから、リーグが統括して育成を管理する申し合わせができているのなら、そのまま内部昇格するのでなく、ドラフトという枠組みを考えてもいいのではないかと思います。
たとえばある年度の下部組織ではPGがとりわけ豊作の年だったのに、実際にトップチームが緊急補強しなきゃいけないポジションがCだったりするとそのミスマッチを埋めるために他のチームからCをつれてきて、PGがほしいチームに育成してきた選手を出さなきゃいけなくなることもあるのではないでしょうか。特にバスケットボールのようにオンコートの人数が少ない競技では体格やスキルによって向いているポジションが変わってきますから、育成というプロセスという上でのミスマッチも避けられないのではないかと思います(もちろんエリートシステムで1ポジション2人までに絞っていく方法もあるので一概には言えませんが)

bjに限らずJBLの新設チームの福岡が後半戦を前にチーム解散の事態に追い込まれるなど、下手をすると全体的にバスケットボールリーグが縮小していきかねない状況です。日本で開催される世界選手権を前にプロアマ協力してバスケットボールを盛り上げるという発想がないのが非常に心配です。

投稿: エムナカ | 2006/01/22 16:56

>考える木さん
>そして、問題なのはそのようなビッグクラブが出現しても、世界に伍して戦えない場合にはどうなるのだろうと思います。

某プロ野球チームのように大金を投じて選手をかき集めても成績が伴わないという現象はサッカーの世界でも起こりうるわけですが(というか名古屋が既にそうなってますが)、もし、日本のトップクラスの選手を集めて国内リーグではぶっちぎりに強いクラブがACLに出ても一向に勝ち抜けないという事態が起こったとしたら、それはもう日本の実力がその程度なのだと考えるしかないのでしょう(ACLのレギュレーションがアラブに有利だという問題はひとまず措きます)。あるいは、有力選手が挙って海外に出ていく現象の帰結としてそうなることも考えられます。クラブあるいはJリーグとしては、レベル向上に励むか、流出した日本人選手の代わりになるような外国人選手を集めてくるしかないでしょうね(外国人枠を広げるという手もなくはありません)。

>Jリーグが箱庭のように矮小化し、戦力均衡化のみが問題化されるような事態が生じうる可能性は如何でしょうか。

Jリーグが何らかの規則制定によって戦力を均衡化させることが可能なのだろうか、という疑問が、まず浮かびます。選手の流動性がこれほど高い以上、均衡させる手段はあまりないでしょう(後述しますが、Jリーグは流動性を抑えるローカルルールを持っているけれど、それでも野球とは比較にならないほど流動性が高いのが現状です)。思いつくのはサラリーキャップくらいですが、もし浦和でもどこでも大金を払ってロナウジーニョを連れてきてくれるなら、どのクラブだって大賛成でしょうし(笑)。
というわけで、ビッグクラブの弊害が生じたとしても、「戦力均衡」が錦の御旗と化す可能性は低いのではないかと思います。
なお、昨年4月、ジャイアンツの清武代表がJリーグにヒアリングに訪れた感想として「戦力均衡という意識そのものがJリーグにはない」と話しています(http://www.sanspo.com/baseball/top/bt200504/bt2005040609.html)。

>エムナカさん
ご紹介されている移籍金制度については、留意すべきことが2点あります。
第1に、これは契約期間中だけでなく、契約満了後30か月にわたって有効だということです(リンク先の3-1【4】(4)をご参照ください)。ですから、実はプロ野球における保留権に近いものを、Jリーグのクラブは選手に対して持っています。
第2に、しかしながらこれは日本国内だけで通用するローカルルールで、国外のクラブに対しては強制力を持ちません。契約期間内に海外移籍が行われる場合には移籍金が発生しますが、契約満了後には発生しません。ですから平山だけでなく、マルセイユが中田浩二と契約した際に鹿島に移籍金は支払われていません。
(この話、最近書いたばかりなのに見当たらないな…と思ったら「上原君…」の方のコメント欄でした(笑))

こうやっていろいろ考えていくと、ドラフト制度というのは、ある育成システムから供給される選手を、ひとつのプロリーグが独占的に獲得できる場合にのみ成立するのだな、と改めて思います。「閉じた市場」とでも言うべきでしょう。

あと、バスケットそのものの細かい話題はわからない上にあまり関心もないので、私はコメントをパスします(笑)。

>アルヴァロさん
>そういえばドラフトを行なっているbjリーグはユースを持つことを視野に入れているので、将来的にこの「ややこしいシステム」を目指しているんですよね。

ほお、ドラフト制度があるんですか。JBLとbjという2つのリーグがあるので上述の「閉じた市場」の条件を満たしていませんね。bj入りの意思を確認した上で指名の対象にする、ということでしょうか。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/22 23:58

サッカープロ選手の日本国内の移籍金が発生しないケースは前所属チームの次年度年俸提示が0円だった場合にも起こりますので、契約解除を公示してJFAサイトで公開されている移籍リストに掲載されている選手の移籍の際は、契約期間満了後30ヶ月や30歳未満にも関わらず移籍金0となります。
0円提示を一時期エキセントリックにメディアが取り上げたことがありますが、20代前半の選手の場合、移籍金という足かせがはずされる分移籍先が見つけやすくなるメリットもあるので、一概に0円提示は悪いわけではありません。

前回の当方のコメントはこの部分についてはまったく説明していなかったので補足しておきます。

投稿: エムナカ | 2006/01/23 00:52

>エムナカさん

0円提示というのは、プロ野球でいう「戦力外通告して自由契約にする」のと、ほぼ同じことですね。ここでは野球とサッカーの違いを論じているので、共通する仕組みについては特に触れずともよいと思います。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/23 09:45

>エムナカさん

レスありがとうございます。

bjは学校の協力が得られないことだけでなく裾野を広げる意味でユース構想は持っていそうなので、将来的にはJBLと和解してもそういう下部組織を持つのではないかと考えてます。以下、それを踏まえてですが…


>バスケットボールのようにオンコートの人数が少ない競技では体格やスキルによって向いているポジションが変わってきますから、育成というプロセスという上でのミスマッチも避けられないのではないかと思います

私がbjリーグの今後の選手獲得システムについて気になったのは、ポジション毎に専門性が求められることと、1チームの最大保有人数が15人と少ないことで、ユースとトップの融合がサッカーよりも難しいのではないかということです。専門性の問題はエムナカさんのおっしゃる通りですし、保有人数で考えても、1回のオフでの入れ替えは多くても5人くらいで、その中に他チームからの移籍、トライアウト&ドラフト、ユースからの昇格を含めなければならないとなるとユース組の入る余地は本当に小さくなりそうです。

現状、学校出身の有望選手はたくさんいろので、彼らのためにもドラフト制度は必須でしょう。そうすると、ユース組をリーグ管理の下でドラフトに掛ける仕組みはありそうですね。ただ、となると下部組織をチームが持つ意味が薄れてしまう気はします。金銭的には移籍金などで補えそうですが、ファン感情としては…。生え抜き選手を大事にする思想がある彼らからして、優先枠としてプロテクトしたとしても、ユース選手が他チームに持っていかれる可能性を大きく認められてしまうのはつらいものがあります(日本は同じ地域密着のサッカーを見ると、そこをこだわる感じなので、この辺の考え方は欧州に近そうです。米国のスポーツに詳しい方に何人か聞いた感じでは、米国のファンはそこまでこだわらないらしいです)。


なので、私の希望としては1チームの選手保有人数を増やして欲しいな、と。2軍というかサテライトというか、マイナーリーグのようなものを作ってそこに選手を溜めておけるシステムがあればいいなと思います(この絵空事が実現できるくらいbjが大きく成長すればですが…)


>念仏の鉄さん

>JBLとbjという2つのリーグがあるので上述の「閉じた市場」の条件を満たしていませんね。bj入りの意思を確認した上で指名の対象にする、ということでしょうか。

現状では確か、リーグトライアウトに合格した選手にチーム推薦選手を加えた中からドラフトで獲る、というシステムですので、要はそういうことですね。だからJBLはbjイアウトの受験に関して一部の選手にブロックをかけているという噂があります。本当だとすれば実に醜い争いです。

投稿: アルヴァロ | 2006/01/24 13:50

>アルヴァロさん

なるほど。そうなると、地域とか個々のチームの魅力以前に、bj全体に訴求力がなければ選手が入ってこないでしょうね。


ユースの件、コメントを拝見した限りの感想としては、ユースが「トップチームへの戦力供給」以外の目的や価値(地域貢献とか)を持たない限り、成立は厳しそうな気がします。経営収支から見れば、ユースは不採算部門でしかないわけですから。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/01/24 14:39

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