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本場はいろんな場所にある。

 えのきどいちろうがサントリークォータリーVol.79(WINTER 2005)の連載コラム「スポーツオタク」(VOL 02「何だかわからないアイテム」)で、タオルマフラーについて熱く語っている。欧州サッカーファンの応援アイテムであるマフラーが日本に入ってタオルになり、さらに野球場のスタンドに移植され、と独自の発展を遂げていく過程をたどる文章はたいへん面白いのだが、それは実物をあたっていただくとして、ここで触れたいのは以下のくだりだ。

「野球より広範囲に定着しているサッカー、フットボールを見ても応援スタイルは多種多様だ。発祥国という意味での『本場』はイングランドだろうが、イタリアだってスペインだって『本場』だし、ブラジルだってアルゼンチンだって『本場』だ。」
 野球だって、何もかもUSAの基準で考えなくてもいいじゃないか、と、えのきどは論じる。まったく同感だ。

 JSPORTSはWBCのすべての試合を中継しているそうだが、残念なことに、日本と無関係な試合は、あまりじっくり見ることができなかった。再放送してくれないかな。
 それでもときどき夜中や早朝の中継をながめた印象では、もっとも盛り上がっていたスタジアムは、プエルトリコのサンファンだった。日本でもUSAでも空席が目立った予選リーグの段階から、プエルトリコのスタンドは満員で、ほとんどの観客が、試合前から試合後まで立ち上がってやたらに騒いでいる。欧州や南米のサッカー場ともちょっと違って、とても新鮮な雰囲気だった。野球そのものもパワフルでエキサイティング。キューバをのぞけば個々の選手はMLBで見慣れたスターばかりだが、同国人で固めたチームになると、これまでは気づかなかったエスニシティの匂いが立ち上がってくる。それもまた新鮮だった。
 陽気なスタンドの盛り上がりを見る限り、ベースボールの本場は中米ではないか。USAは野球の祖国だけれども、唯一無二の本場とは言えない。あの一次リーグの醒めたスタンド風景を眺めていると、理屈抜きにそう感じる。 

 2つのグループが完全に分かれて決勝まで対戦しない、という今大会の組み合わせは奇妙なものだった。おそらくUSAがドミニカと対戦せずに決勝まで進むことを目論んでいたのだろう(おかげで日本と韓国は三度戦うことになったが、それはそれで「野球における極東ダービー」という財産を残してくれそうな気がする)。
 この組み合わせが公正を欠いているのはもちろんだが、それ以上に、面白くない。日本がラテン系の国と対戦する機会がなかったことが、とても残念だ。
 国際大会の面白さは、同じ競技でありながら異質な解釈をしている人々とぶつかることにある。その意味で、これまで日本が戦った相手は、韓国はもとより、USAやメキシコも、さほど目新しくはない。
 だが、もしサンファンでプエルトリコと対戦したら、あるいは今大会では試合がなかったドミニカでドミニカ代表を敵に回して戦ったら…おそらく我々が考える「野球」や「ベースボール」の概念を超えた面白い体験ができたのではないかと思う。二次リーグを韓国と日本が勝ち上がったことで、日本では「スモールボールこそ正義」みたいな空気が強まるのかも知れないが、しかし本当のところは、ドミニカやプエルトリコやベネズエラとぶつかってみなければわからない。その機会が決勝しかないのは惜しまれる。

 だから、決勝でドミニカと戦いたい(キューバも日本にとって目新しくはない)のはもちろんだが、第2回大会では、二次リーグの組み合わせに一考を願いたい。そして本大会だけでなく、代表チームどうしの親善試合も開催してみたらいいと思う。
 アサヒスーパーカップとか名付けて毎年プエルトリコやベネズエラを呼んでみたらどうですか、スポンサーさん(今気づいたが、アサヒビールがWBCのスポンサーになったのは、サッカー界に思い切り食い込んでいるキリンへの対抗意識もあるのかも知れないな)。

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コメント

私、プエルトリコの野球に関しては全く分かりません。今回のWBCでも、観ることが出来なかったのは大変残念ですが、年中野球をやっているような連中の野球がどんな野球か、とても興味があるところです。
最高の野球が観たいのなら、MLBを観れば事足りるというようなMLBのリーグ経営者の意識が見え隠れしてきたWBCですが、強弱の差はあれ、世界中にいろいろな野球があることが本当にメジャーに認知され、WBCが真の世界大会に発展していくことを望みます。

投稿: 考える木 | 2006/03/18 14:21

私的には本場を自負するMLBおよびUSA代表が、実はUSAという国内にしか注目してこなかったことで、中米やアジア勢の力をかなり見くびっていたことに気づかせたことが、最大の収穫ではないかと思います。

ただ、これはナショナルチームとしての戦い方をUSAがまじめに研究してこなかったというつけでもあります。五輪予選も一線級の選手は関わってこなかったし、今回の代表でもランディジョンソンのような絶対打てそうもないピッチャーがあと2人いるだけで、ぜんぜん違った結果になったはずです。

それに打撃陣も1ヶ月近くグループリーグを
実施していたらきっと大爆発する日があると思います。短期決戦には向かない、特につなぎのバッティングを求められていない選手をいくら並べても三振の山を作るだけ。超芸術”トマソン”級の大型扇風機が並んでいるのを見るのはある意味壮観です(笑)

投稿: エムナカ | 2006/03/18 22:30

>考える木さん
私もそれほど判っているわけではないのです(笑)。
JSPORTSが中継したドミニカ-キューバ準決勝の前に両チームのダイジェスト映像が流れましたが、実際にはプエルトリコが出ない試合は満席というわけにはいかなかったようです。しかし得点シーンの盛り上がりは、やはり凄い。
プレーで目立つのはフルスイングとエラー(笑)で、その点でもラテン野球はスモールボールの対極ですね。守備でも凄いファインプレーの直後に何でもないゴロをこぼしたりする。ソリアーノは典型的なこの地域の選手なのだと、よくわかりました(笑)。

>エムナカさん
まあ、問題はWBCへの参加を拒んだ選手たちや、消極的だったコーチやオーナーたちが、この大会をどのように捉えたかでしょうね。代表選手たち(USAだけでなく他国代表も)がチームに戻り、いろんな体験を周囲に話して、それではじめてMLBにとってのこの「経験」が完結するのだと思います。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/03/19 11:26

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