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地域リーグの生きる道。

 先週、四国に出張する機会があり、4/9に松山で四国アイランドリーグの試合を見てきた。愛媛-徳島、坊っちゃんスタジアムでのナイターだ。4月のナイトゲームは、四国といえども、やや肌寒い。

 客席は内野一階席のみ解放。入場者数は602人と発表された。
 観客の大半は愛媛マンダリンパイレーツのチームカラー、オレンジ色の帽子やシャツ、法被を身に付けている。三塁側のベンチ裏が応援の中心地帯。法被の背中には「愛勇会」と書いてある。古式豊かな野球の応援団、という感じ。
 本来なら両ベンチ裏のスタンドに双方の応援団が陣取る、という高校野球風の風景が期待されるところだが、徳島側の応援は、ぱらぱらと10人くらい。女の子2,3人が淡々と選手の名をコールしている。もう少しサポーターが遠征にもついてくると盛り上がるところだ。
 スタンドには子供が目立つ。それも、小学校低学年や幼稚園くらいに見える小さい子供たちが、自分の頭より大きそうなグローブを持ってファウルボールを追いかける姿は微笑ましい(とはいうものの硬球だ、取りそこねて誰かケガでもするのではないかと冷や冷やもするが…)。
 グラウンドは、やや薄暗い。照明灯を見ると、一部のライトを落としている。これも経費節減のためだろうか。

 試合開始には間に合わなかったので、試合前にどんなアトラクションがあったかは判らない。
 5回終了後のグラウンド整備、スタンドのグッズ売り場、いずれも試合に出ていない選手が交代でやっている感じ。グラウンド整備の時間には、両軍の新入団選手がバックネットに向かって並び、マイクで一言づつご挨拶。ディレイを起こして、何言ってるのか全然わからなかったが(笑)。

 試合は投手戦。といえば聞こえはよいが、どちらかといえば打撃が奮わないように見えた。なかなか外野にも打球が飛ばない。
 打撃低調なのは昨年からの傾向らしく、公式プログラムに記載された昨年の成績を見ると、本塁打王が6本、チーム本塁打数も最多で20本だ。90試合やっているのだから、タイトルホルダーは20本近くは打って欲しいところだ。
 選手はNPBに比べると概して小柄。率直に言って、上手くはない。
 例えば打席でのボールの見送り方、内野ゴロに向かって走り寄る姿、マウンド上でのたたずまいなど、ちょっとした動作・所作が、どうにもしっくりせずに、ぎくしゃくして、あるいはガサツに見える選手が多い。上手な選手の多くは自分の間合いを持っており、一連の動作が予定調和のように滑らかに完了するものだが、そういうものを感じさせる選手が、なかなか見当たらない。
 開幕直後だし、客席にいると冬支度でちょうどいいくらいの気温だし、そもそも1試合だけで判断されては迷惑だろうから、割り引いて聞いていただいてよいのだが、四国アイランドリーグが経済的に成り立っていくためには、やはり野球そのもののレベルをもう少し上げなければ厳しいのではないかという印象を受ける。

 選手たちは無名ではあるが、昨日今日野球を始めた、というわけではない。それなりに強い高校や大学を出て、甲子園出場経験も結構いる。ということは、彼らの多くは、一度はNPBのスカウトの目に触れて、「不要」という判断を下されたことになる。いわば白紙ではなくマイナスからのスタートなわけで、そういう選手が再びスカウトの目を惹くには、学生時代よりもよほど飛躍的に成長する必要があるだろう。
 高校や大学を卒業した時点で優秀な選手は、直接NPBに行く。ここに集まってくるのは、NPBに採用されるには何かが足りなかった選手だ。その「何か」を補うことは、ただ「懸命に練習する」だけでは難しいのだろうと思う(学生時代にだって、それぞれ自分なりに懸命に練習してきたのだろうから)。
 つまり、四国アイランドリーグが切実に必要としているのは、彼らにブレイクスルーをもたらす力を持った指導者ということになる。

 そういう目で各チームのメンバー表を見ると、残念ながら、監督やコーチの多くも、選手と同様に若くて無名だ。大半がNPBの選手経験者だが、はなばなしく活躍した経歴を持つ人はいないし、NPBのコーチ経験がある指導者も少ない。彼らが選手にどれだけの付加価値をつけられるのは、失礼ながら、はなはだ心許ない。
 となると、まずコーチたちを指導する人材が必要だ。中西太、上田利治ら地元出身者がそれぞれのチームアドバイザーとなっており、NPBの監督・コーチ経験者が巡回コーチをする制度も設けているそうだが、どのくらい機能しているのだろう。こういう面でこそ、NPBが支援に乗り出せばよいと思うのだが。
(以前「プロ野球に二軍は必要か。」というエントリでも書いたように、私は、NPB各球団が選手を大量に自前で抱えるよりも、社会人野球や独立リーグのような下部構造を支援して育成システムを整備する方が、NPBと野球界全体の利益につながるのではないかと考えている。「育成ドラフト」などという妙な制度を作るよりも、四国アイランドリーグにコーチを派遣した方がよいのではないか)

 ファンサービスも地域密着も大事だが、やはり試合そのもののレベルをもう少し上げないと、見世物としては厳しいのではないか。坊っちゃんスタジアムではNPBの公式戦も行われる。同じグラウンドで見ると、力量の差がよくわかってしまう。

 愛媛県でいえば、サッカーの愛媛FCが今年からJ2に昇格した。開幕戦はホームに横浜FCを迎えた。「キング・カズ来る!」という試合に勝って、大いに盛り上がったらしい。天皇杯に出場すればJ1のクラブと戦う機会もあるし、理論的には優勝の可能性もある。
 同じ地域のクラブだけに、両者が置かれた立場の違いは、普通の市民の目にもよくわかってしまうはずだ。サッカーでは、地方の小クラブがトップレベルに進む道が開けている。しかし、四国アイランドリーグは、ただ四国4県の中で戦うだけの閉ざされた構造にある。どんなに頑張っても、清原や松坂と試合ができるわけではない。だからこそ、石毛代表は「選手がNPBに進む」という形で開いていこうと腐心しているのだろう。
 とはいうものの、率直に言えば、その可能性のある選手は、ほんの一握りではないかと思う。NPB入りの夢だけでリーグ全体を支えていくのは難しいだろう。それだけではない、独自の魅力が必要だ。

 現在の運営や宣伝を見ていると、主として地元に目が向いているようだ。それはもちろん正しいと思うのだが、一方でアイランドリーグは四国の観光資源という面も持っている。野球だけを見に行く人は多くはないだろうが、四国は観光地でもあるのだから、他の何かと組み合わせれば十分に観光コンテンツたりうるのではないかと思う。
 その意味では、県や市の観光振興にもっと組み込まれてよいと思うし、試合のある日には駅や空港に表示されているとよい。そもそも四国アイランドリーグの公式サイトには、試合日程はあっても、スタジアムへのアクセス方法が記載されていない。他地域からの観客にも、もう少し目を向けた方がよいのではないだろうか(自分がそういう立場だけに、そう思うわけだが)。

 また、ひとつの可能性として考えられるのは、他の地域リーグとの交流だ。例えば中国地方に独立リーグが生まれ、両者のチャンピオンが「瀬戸内シリーズ」として戦うというのは、なかなか魅力がありそうな気がする。
 実際、ほかの地域にも、地域リーグ構想を唱えるグループがいくつか見られる。萌芽はあるのだ。続こうという地域がやる気を失わないためにも、四国アイランドリーグには歯を食いしばって存続してもらいたい。

 とりあえず一観客として、微力ながらも少しは金を置いてこようと帽子やTシャツを買い込んだ。派手なオレンジ色の野球帽をかぶる機会がそうそうあるとは思えないけれど、次に草野球をする時には、かぶってみようかと思う。

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今後、4月下旬には海外出張などがありまして、更新およびコメントが滞る見込みです。
その後も5月下旬までは更新頻度が下がることになりそうです。訪ねてくださった方には恐縮ですが、ご了承ください。(2006.4.20)

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コメント

アメリカに居たとき、僕が住んでいた町にはシカゴ・カブス傘下の1A球団でしたが、はっきり言って下手でした。たぶん、あのチームから将来メジャーに進める可能性は限りなくゼロなんじゃないかと思いました。

球団も選手も財政的にはカツカツだし、選手にはほとんど将来の希望は無くモチベーションを保つのは難しい。名目では育成が目的の組織だけれど、実際にメジャーでプレイできるような素材は数週間プレイしただけですぐに昇格してしまうし、そういう意味ではアメリカのマイナーは2Aのレギュラークラス以上にいないと、メジャーの目に届くところには入っていないでしょう。

実際に四国アイランドリーグに行った事がないので、想像上でしか書けませんが、念仏の鉄さんが仰るように、このリーグでプレイしている選手の可能性が限りなく低いと思います。

選手の育成や不合格の烙印を押された若者にもう一度チャンスを与えるために場が設けられていることは素晴らしいことです。しかし、四国アイランドリーグの最も大きな存在意義は、これまでプロ野球チームが存在しなかった四国に創設することで、野球好きやスポーツの楽しさに飢えていた潜在的なファンが集まる場を提供したことだと思います。

だから、リーグ創設以降の石毛や事務局を見ていると、『選手育成』や『ドラフトに選ばれる』とかそっちの方向ばかりに、目が向いていて、ちょっと不安を覚えています。
大事なのはリーグが永続的に存在するために、しっかりと観客を入れファンを大事にし、マスコミとの連携でリーグの知名度を増やすことだと思っています。

そうすれば5年後や10年後ぐらいにはドラフトに引っかかりそうな選手が運良く出てくるでしょう。(笑)
今の環境で、選手のレベルで、日本の野球の構造でプロへの育成機関として存在するのは難しすぎる。
だったら、四国の人々の休日の憩いの場として存在したほうが将来の野球界の発展に繋がると思うんですが、どうなんでしょうね。そういう意味では僕は欽ちゃん球団をすごく評価しているのですが。(笑)

投稿: ふくはら | 2006/04/16 18:37

>ふくはらさん
>だから、リーグ創設以降の石毛や事務局を見ていると、『選手育成』や『ドラフトに選ばれる』とかそっちの方向ばかりに、目が向いていて、ちょっと不安を覚えています。

そうなんですよね。選手名鑑を開いても、今年の抱負として「一生懸命頑張ってNPB入りを目指す」みたいなことを書いてる選手は多いし、石毛代表自身も、アイランドリーグはNPBへのステップ、みたいな話が多い。
それだけで選手やファンを引っ張っていこうとすると、何年たってもNPBで活躍する選手が生まれなければ、みな失望してしまうのではないかと危惧しています。ローカルな独自性を打ち出すことで元気になれる面もあると思うんですがね。
(その意味では、みちのくプロレスには興味があります。見たことはないのですが)

投稿: 念仏の鉄 | 2006/04/17 00:27

貴重な書き込み 拝見させていただきました。
私は少なからず個人的にリーグ及びマンダリンパイレーツに関与している者ですが 鉄さんの意見最近私も他から耳にすることがありましたので やはりそうなんだと納得し関係者に伝えておきました。
反省し少しでもよくなるよう改革を訴えてゆきたいと思います。
今後ともこのリーグについてのご意見・叱咤をしていただくようお願いします。
 

投稿: maru-3 | 2006/04/17 19:33

>maru-3さん
はじめまして。
通りすがりの一観客の勝手な意見に耳を傾けていただき、ありがとうございます。
いろいろ苦しい面も多いでしょうし、最初からすべてがうまくいくはずもありません。でも、四国アイランドリーグは間違いなく全国の野球ファンに注目され、心情的に応援されていると思います。
選手たちには、胸を張ってプレーしてもらいたいですね。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/04/18 01:02

四国アイランドリーグは、私が香川の出身ということもあり、かねてより機会があれば一度観戦したいと願ってはおりますが、なかなか観ることができません。
独立リーグは、NPBとは異なり、リーグの経営というところからちゃんと出発しているという点で、その経営の方向性や成否にはたいへん興味を持っています。
四国は四県がお互いライバル視しているようなところがあり、野球とはたいへん縁が深い土地柄ですので、その規模の小ささゆえに、独立リーグが成功する可能性も備わっている地ではないかという気もします。今後のアイランドリーグの奮闘に期待してエントリーをTBさせていただきました。

投稿: 考える木 | 2006/04/20 00:47

>考える木さん
>リーグの経営というところからちゃんと出発しているという点で、

とはいうものの、まだ経営が成り立つところまでは届いていません。パフォーマンスも運営も、あらゆる面で成長していかなければならない時期にあるのだろうと思います。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/04/20 01:58

独立リーグがその地位を固めるためには、まず、しっかりとしたローカルな支持が必要だという趣旨でエントリーをまとめ上げてはみたものの、そのローカルな支持をひきつけるためのプロリーグとしての新たな価値が、やはり欲しいところです。私には良いアイディアが思いつきませんが、ファームの選手の養成の場としての価値はその一つになりうるもので、素晴らしい提案だと思います。
四国アイランドリーグが今どのようにNPBにアプローチしているのか、あるいは、NPBがアイランドリーグにどのようにアプローチしているのか。選手のセールスや人材のスカウトといったアプローチに限ることなく、NPBと独立リーグが今後どのような関係を築いていくことが望ましいのかを検討することは、双方にとって有益なことだと思います。
リーグとしての価値が高まれば、全国ネットでのメディアの注目も集まり、その結果、はじめて自分の暮らす地域にある独立リーグに注目する人、あるいは地域を代表するエンターテインメントとして、はじめて誇りを持てる人も現れるでしょうね。

投稿: 考える木 | 2006/04/21 19:07

>考える木さん
遅くなって失礼しました。
NPB側は、アイランドリーグを手放しで歓迎・協力というわけではなさそうです。とはいえ今年の開幕前にはジャイアンツの二軍がオープン戦を戦うなど、交流する機会も増えてきましたし、そういう試合で健闘していけば、さらにチャンスも広がっていくことでしょう。

全国からの注目という点では、四国の観光地をいくつか歩いてみて、四国の人たちは全国への宣伝があまり上手くない、という印象を持っています。アイランドリーグでもそのあたりは懸念されるところです。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/04/29 00:59

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四国アイランドリーグが存続していくためには、リーグが地域アイデンティティーを高めていくという効用を持つことが必要だろう。 独立リーグの存在が、地域アイデンティティーを高めていく。それは、つまり、お国自慢として「 野球リーグのある生活 」が語れることであり、四国の人々がアイランドリーグを介して結びついていくことである。四国四県はお互いライバル心も強い。野球リーグを介しての地域アイデンティティーを育てるのには絶好の地だと思う。 具体的には、職場や学校や住宅街で、挨拶のように独立リーグの話題から人と人... [続きを読む]

受信: 2006/04/20 00:41

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