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日米野球の「役割」と、選手会の「役割」。

 日米野球の初戦と第2戦を2晩続けて見てきた。
 観客が大勢入っていたのが、ちょっと意外だった。満席とはいかないが2試合とも4万人前後。公式戦に比べて割高なチケットの上、日米ともに出場辞退者続出だというのに、スタンドはなかなか盛り上がっている。

 MLBの野手陣は、二冠王ハワードや首位打者マウアー、盗塁王レイエスとライトの三遊間コンビといった活きのいい若手や、ジャーメイン・ダイやアンドルー・ジョーンズなどキャリア・ハイを迎えたベテランまで、旬の選手を揃えて見応えがあった。
 特にライアン・ハワードには驚いた。引っ張ってジャストミートした打球が速いのはともかく、流し打った打球があれほど速い打者は初めて見た。遊撃手レイエスのスナップスローも、溜め息が出るほど見事だ。トロントのライル・オーバーベイは初めて見たが、地味な左打ちの一塁手マニアの私の好みに合う。オルルッドもティノ・マルティネスも引退してしまって寂しかったが、来年は彼に注目してみたい。

 試合に登場したらスタンディングオベーションしようと待ちかまえていた城島は遂に出番がなかったし(これほど使われないのでは、ケガでもしたのではないかと不安になってくる)、日本側は「日本代表」とは到底言えない顔触れだった。
 とはいえ、日本一になって元のホームグラウンドに凱旋してきた小笠原は貫禄を見せたし、梵の守備はフットワークが小気味よい。内海や涌井のような売り出し中の若手投手がMLBの強打者に苦心惨憺して立ち向かう姿は観客を惹き付けていた。9回を迎えても席を立つ観客があまり目立たないというのは、この手の催しでは珍しいことだ。全体としてはそれなりに楽しめる試合だった。

 日米野球には、学生時代は熱心に通った。79年に米両リーグのオールスターチームが来日して対戦を繰り広げた時のメンバーは、今にして思えば考えられないほど豪華絢爛だったし、81年に来日したカンザスシティ・ロイヤルズは、前年のワールドシリーズを戦った顔触れがほとんど残っていて印象深かった。日本の高校生がメジャーリーガーをナマで見る機会など、それ以外にはありえなかった。
 その後、テレビで日常的にMLB中継が放映され、日本人メジャーリーガーが次々と誕生し、MLBの公式戦が日本で開催されるに至って、「本番が見られるのに、花相撲を見ても仕方がない」という気分になり、日米野球には興味を失っていった。
 だが、このごろはまた一回りして、「花相撲であっても、見る値打ちのあるものが見られるのなら、それで十分」という気分に戻っている。レイエスとライトとハワードとダイとマウアーとオーバーベイと井口と城島を全員見ようと思ったら、アメリカに住んでいたとしても結構手間がかかりそうではないですか(笑)。東京ドームにいながらにして、これらのメンバーに加えて小笠原や青木や福浦や里崎や梵がついてくるのだから、この効率の良さはなかなか捨てがたい。

 だが、日米野球の今後の存続は、かなり危うい雲行きになっている。
 選手会は「来秋に予定される日韓野球、2年後の日米野球には選手会として参加しない旨をNPB側に通知した」のだそうだ。「選手会として参加しない」という表現は曖昧だが、素直に読めば、選手は日韓野球にも日米野球にも出ませんよ、という意味だろう。宮本会長は夏にもWBCができたことで「日米野球の役割は終えた」と話している。

 私はむしろ、WBCができたことで、日米野球の役割はかえって明確になったと思っている。
 「世界一リーグ決定戦」などというのは単なる主催者のアオリ文句であって、日米野球が双方ともに真剣勝負であったことなど過去に一度もない。しかし花相撲には花相撲なりの役割というものがあるのであって(だからこそ本場所とは別に花相撲が存在している)、従来のように真剣勝負のふりなどせず花相撲に徹すれば、日米野球は依然としてファンを喜ばせることができる。

 現に、チケットを買ってスタンドに来たファンは喜んでいる。MLBには意欲を持って参加してくる一流選手が結構いる。それなのに、日本の選手会は「役割は終わった」と宣言して降りてしまうのだという。
 今回の日米野球では大量の出場辞退者が出ているが、大会そのものはそれなりにつつがなく行われている。今回のように、やる気のある選手だけでやれば、それでいいではないか。わざわざ選手会が大会そのものをボイコットする意味がどこにあるのだろう。メジャーリーガーのプレーを間近で見たいとか、剛速球を打ってみたい、強打者に投げてみたい、という選手が日本にいたとしたら(きっといると思うけれど)、この選手会の決定はとても迷惑なのではないかと思う。

 宮本選手会長は最近、ポストシーズンの試合数等に関する交渉に際し、NPBから満足な返答が得られなかったことから、「プレーオフか、あるいはどこか5試合ほどやらないことを考える」とも話している。
 そんな経緯を見ると、日米野球に協力しないという宣言は、単に日米野球の問題というよりも、ポストシーズンに関する一連の交渉材料のひとつと捉えてのことなのかも知れない。

 だとすればなおさら、選手会が試合への不参加を交渉材料として用いることには強い違和感を覚える。
 2004年のストライキが野球ファンや世間から圧倒的に支持されたのは、それが球団数削減という異常事態に対抗するための緊急措置だったからだ。
 現在行われている交渉は、もっと日常的な条件闘争だ。日刊スポーツ記事によれば、ポストシーズン導入に伴って選手会が要求している事項は、1)球場施設の改善、2)日程の緩和、3)故障者リストの導入、4)先発投手の登録日数を改善…の4点。3)4)はFA権取得までの日数短縮が目的と思われる。選手会がそれを要求することに異論を唱えるつもりはないが、どのひとつをとってもファンの利害とは直接関係がなく、ファンを巻き込むような性質の事柄ではない。労使の間でじっくりやればいい。
 選手会がこれらの要求を通すためにストライキをしたところで、支持するファンがいるとは思えない。宮本会長はそんなことも判らないのだろうかと思うと哀しくなる。何を焦っているのか。

 詳しい交渉内容を知りたくて選手会公式サイトを訪ねてみたが、この件についての記載は見当たらず、選手会主催イベントの宣伝ばかりが目立っていた。
 いきなりボイコットとか言い出す前に、まずファンに自分たちの主張の是非を問うてみてはいかがだろうか。
 
 
 
追記
パの東西対抗戦が今年限りで終わるのも、このへんの状況と無関係ではなさそうだ。私は一度も見に行ったことがないのだが、昨日のNHKサンデースポーツを見ると、リーグ全体のファン感謝デーの趣があり、パ各球団の応援団たちが仲良く相互乗り入れしていて、なかなかいい雰囲気だった。
もっとも熱心な顧客層が、これほど喜び、継続を望んでいる催しを打ち切ることについて、選手会はどう考えているのだろうか。

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コメント

>1)球場施設の改善、2)日程の緩和、3)故障者リストの導入、
>4)先発投手の登録日数を改善…の4点。
>選手会がそれを要求すること>に異論を唱えるつもりはないが、
>どのひとつをとってもファンの利害とは直接関係がなく、

いや、それは違うと思います。「球場施設の改善」には、例えば外野手が思い切ったプレーをできるようなラバーフェンスの導入なども含まれていますし、「日程の緩和」も、最高のパフォーマンスをファンに見せるためには詰まった日程では選手としても苦しいという事情はあります。

投稿: KuiKuga | 2006/11/06 22:30

なんであれ、選手の利益になることが結果として試合でのよいプレーにつながる可能性があるのは当たり前で、

>いや、それは違うと思います。

と言うほどのことでしょうか。ここで言われているのはそれらが、ストの理由として野球ファンが熱く支持するほどの内容とはとても思えん、ということでしょう。

KuiKugaさんの御意見にはなるほどと思わされることがたまにあるのですが、異を唱えることがあらかじめ目的になってるように見えるコメントがあまりに(あまりに、というほどでもないかも知れませんが)多く、どうも「自身の考えを再考いただくための、唯一の効果的な手段」の、わざわざ逆を行っておられるように見え、勿体ないよなー、と思います。

せっかくなのでもう少しKuiKugaさんについて。他人を装って書き込むという行動がまずナゾだし、それが「自身の考えを再考いただくための、唯一の効果的な手段だと思ったから」という解説もさらにナゾですが、それ以上にワカランのは、その「行動」と「解説」の間のインターバルの長さです。

複数人物を装ったという行動が根本的な不信感を招いたということを理解しつつ、「そういうことをされるモチベーションは何なのでしょうか?」という質問を長いことスルーし続け、その間何事もなかったかのように新たな話題にコメントを投げる、というやり方が、エントリーの内容について再考を促すための「効果的な手段」とはとても思えないのですが。

投稿: nobio | 2006/11/06 23:57

実に近い感性の持ち主だと感じました。
試合自体が良いのだから、出たい人を出してやれば良いと思います。
宮本選手の件ですが、いきなりボイコットを持ち出す神経を疑います。
ファンを盾に脅すのは、許し難い暴挙ですよ。
球団なり、機構なりが理不尽なら、まずファンにアピールすべきです。

投稿: ファン | 2006/11/07 01:38

>KuiKugaさん
>「球場施設の改善」には、例えば外野手が思い切ったプレーをできるようなラバーフェンスの導入なども含まれていますし、「日程の緩和」も、最高のパフォーマンスをファンに見せるためには詰まった日程では選手としても苦しいという事情はあります。

ごもっともですが、それらはファンにとっては「間接的な利害関係」です。応援していたチームが消滅するダメージの直接性とは比較になりません。


>nobioさん
同じ方から何度も的を射たコメントをいただくと、だんだんとそのHNによるコメントを謙虚に読むようになりますから、たぶん名前は変えない方が効果的なのでしょう(nobioさんがまさにそういう1人なのですが)。


>ファンさん
こんにちは。
宮本会長にしてみれば、いろんな経緯があって「もう我慢できん」という心境なのでしょうが、ファンの大半には経緯が見えていませんから、共感や支持を求められても難しいでしょうね。そう考えると、

>球団なり、機構なりが理不尽なら、まずファンにアピールすべきです。

というのは同感です。
意思決定に透明性が感じられないんですよね、選手会側も。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/11/07 08:59

たまたま新聞で見たんですが、ホークスの大村選手、5日にあったパ・リーグ東西対抗戦(静岡市)に出て、とんぼ返りで日米野球(東京ドーム)に出場しています。

こういう話を聞くと、素朴に「NPBは何をやっとるんじゃ?」と感じます。「花相撲」は「花相撲」でよいのですが、「オールスター」を名乗る「花相撲」が同一日にバッティングするのは、誰がどう考えてもよろしくない。興行的にもマイナスですし、選手にも負担を強いることになる。NPBの「興行師」としての見識を疑います。(大村自身は楽しんでいたようですが。そこが「花相撲」のいいとこでしょうけど。)

おおかた、シーズン終了後の日程について、あっちこっちのそれなりに有力なプロモーターから持ち込まれる話を、NPBが整理しきれていない。一昨年の球団統合問題時に露呈したようにもともとガバナンスがたいへん悪い組織なので、有力筋の利害が対立すると「断る」ということができない「調整能力の欠如」があらわになるのだと思われます。

そういう無責任な体制に振り回される選手はたまったものではないわけで、イライラが溜まって宮本会長の強い発言になったものと思われます宮本って、鉄さんも以前のエントリで書いておられたように、たいそう「できた」人物じゃないですか。彼がそこまで言うのであれば、それは相当のことがあったということだと思います。

選手会側も説明が足りないと思いますが、ちゃんと説明すると「NPBってこんなにダメダメな組織なんですよー(誰が決めるのかわからない、結論を言わない、前例に囚われる、すぐ先送りしたがる、etc.)」ということを言わなくちゃいけなくなるので、言えないんだと思います。「うちのボスは大馬鹿野郎です。」というのは、事実であればあるほど、言えないものです。それは社会人としてのタブーですし、スポーツ選手のメンタリティとしてはなお言えないでしょう。「俺たちにそこまで言わせるのか」という「やるせなさ」にあふれているのが選手会側の気持ちだと思いますよ。そうやって腹にためるから余計フラストレーションが溜まるわけですが。

本来、こういうことは選手に代わってマスコミが指摘すべきことです。が、日本では残念ながらマスコミは「ダメダメな体制側」に属していてまったく報道がされない状況です。球団統合問題くらいに問題が大きくならないと(かつNPBの迷走が大きくならないと)「事実」に関する報道すらされないというのは、非常な問題だと思います。

投稿: 馬場 | 2006/11/07 10:09

>馬場さん
ご指摘の通り、パの東西対抗(静岡)と日米野球(東京)が同日に行われるという日程は馬鹿げたものですし、公式大会であるはずのアジアシリーズの前に花相撲である日米野球をはさむという日程には釈然としません(韓国や台湾の出場チームが決まる時期が日本より遅い、という事情もあるのでしょうが)。
そもそも、WBCの開催年に日米野球をしなくてもいいじゃないか、とも思いますし、WBCアジアラウンドと日米野球とアジアシリーズは3つとも読売新聞社の主催事業ですから、もうちょっと調整したら?という思いは残ります。

それでもなお、それらに対する選手会の反応が「日米野球には参加しない」「試合のボイコットを考える」でいいのか、ということです。問題と対処の重みが釣合っていない、と私は思います。

選手会は「日米野球と東西対抗を同じ日にやるのはやめてくれ」と求めているわけではありません。彼らの要求は「廃止」です。
パの東西対抗が打ち切られる理由のひとつは、選手会の要望とされています。
http://www.sanspo.com/baseball/top/bt200611/bt2006110604.html

blog「りきは吠えるがやきう好き」のりきたろうさんがパ・リーグ事務局と選手会事務局に電話した結果を紹介していますが、選手会も東西対抗の打ち切りを求めたことを認めているようです。
http://yakyu.s96.xrea.com/sblog/eid216.html

しかし、選手会は東西対抗の廃止を求めるにあたって、ファンの意見を聞いたり、ファンに理解を求めるという段階を踏んではいません。いわゆる「密室での話し合い」に選手会も加担することによって、大勢のファンが草薙まで旅をする恒例のイベントが突然消滅したというわけです。「東西対抗」「選手会」のキーワードで検索をかけると、パ・リーグファンの怒りの声が記されたblogを大量に見つけることができます。


>本来、こういうことは選手に代わってマスコミが指摘すべきことです。が、日本では残念ながらマスコミは「ダメダメな体制側」に属していてまったく報道がされない状況です。球団統合問題くらいに問題が大きくならないと(かつNPBの迷走が大きくならないと)「事実」に関する報道すらされないというのは、非常な問題だと思います。

「まったく報道がされない」とは何についてでしょうか?NPBとの事務折衝の後で宮本会長がメディアに対して発言した事柄は、エントリ本文中にリンクした新聞記事をご覧になればわかるように、その都度、報道されています。
そして、それらの発言や交渉の経過についての報告は、選手会公式サイトには紹介されていません(少なくとも私は見つけることができませんでした)。

メディアはもっとこういう事柄を報道しろ、と主張なさることに異論はありません。
しかし、選手会という組織はまさに「こういうこと」を言うために存在しているのですから、誰かが「選手に代わって」「指摘すべき」であるとは私には思えません。
 
 
 
ついでにもうひとつ言いたいのですが(馬場さんに、ということではありませんが)、

ケガが心配で野球もできない、という人たちが、毎年オフのテレビ番組の中で嬉しそうに運動会をしているのは、どういうことなのでしょうか?
本業の野球をすることと、寒い季節に慣れない運動をすることと、どっちがケガのリスクが大きいの?

投稿: 念仏の鉄 | 2006/11/08 10:01

鉄さんの仰る通りファンを巻き込む類の話ではないことは大前提として―

まぁなんの世界にしても「協会」なんて物は出来の悪いものなのでしょう。
最近では荒川の金メダルが記憶に新しいフィギュアも所得のなんのでもめていましたし、五輪なんかも以前の記事にて鉄さんが議論していた通りのものです。
さて、本文リンクも合わせ読んだ感想ですが、「選手会は悪くない」とは決して言えませんが、やはり悪いのはNPBでしょう。
「たかが選手」なんて言った某橙球団(元?)オーナーの事件から何も変わってないのでしょう。

「これだけ働け!」「なら環境(待遇)良くして」「やだ!」「じゃ、(試合)やんないも~ん」
まるで子供のケンカみたいだw

まず選手会がすることは「盾」になんで盾にしてるか事情説明だとおもいます。とりあえず宮本会長も意固地になって強行するほどの強い意志表明まではしてないようですし(あくまで個人意見らしい)。

なんにせよ、やはり労使間の問題ですからねぇ。プロならプロらしく「白鳥のバタ足」をそんな‘これでもか’みたいに見せ付けないでほしいが・・・・・(結局ただの雇用問題の延長みたいな物のようだし)


投稿: KTY | 2006/11/08 23:21

鉄さん、馬場です。

私が知りたいことは、「NPBが本当にダメな組織かどうか」という一点です。一昨年の騒動の経過&組織人としての自らの経験その他を通じて、個人的には「NPBはダメ組織」という強い確信があります。しかし、具体的な「ダメっぷり」が公にならない限り、ダメな組織というものは再生しないものですから、その後「NPBのダメっぷり」に関する報道がないことを非常に残念に思っています。(おそらく「ダメでなくなった」わけではない。)

田中金脈問題を持ち出すまでもなく、日本のマスコミは「知っていても書かない」ということをよくやります。特に、自社及び同業他社の利害のからむことについては、まったく報道しないことがよくある。

だから、「選手会が情報発信しない」と選手会だけを批判できるのかな?と素朴に疑問に思うわけです。NPB側に選手会を激怒させるような事実がもしあっても、ちゃんと報道されているのかしら、と思うわけです。
当事者である選手会が「情けなさすぎて」言えないような事実が、ひょっとして隠れていないかという懸念が拭えないものですから、ああいう書き方になりました。

私の意見は以上です。
この場はマスコミ論をする場ではない、ということは弁えておりますので、無理にお返事をいただく必要はありません。
どうも失礼いたしました。

投稿: 馬場 | 2006/11/09 01:08

>KTYさん
>まぁなんの世界にしても「協会」なんて物は出来の悪いものなのでしょう。

それじゃ困るんですけどね(笑)。
近ごろ評判の悪い日本サッカー協会にしても日本スケート連盟にしても、総合的に見れば、いい仕事をしているとは思うんです。JFAはなんだかんだ言っても十数年でサッカーの普及と強化の双方をかなりの程度進めてきたわけだし、スケート連盟のフィギュア部門は男女ともにあれだけの人数のメダル候補を育て上げた。
しかし、トップにひとつ不始末があると、そのことが短期集中的に報道されて、多くの人が組織全体がダメなのだろうと思ってしまう。難しいものです。
(もちろん、不始末そのものにはきちんと落とし前をつけてもらわなければいけませんが)

組織としてのNPBの最大の問題は、「組織の体をなしていないこと」だろうと思います。サッカー協会のように会長とその実行部隊という実体があるわけではなく、12球団の寄り合い所帯に過ぎないので、いちいち全体で会合を開かなければ何も決まらず決定がやたらに遅いし、声のでかい球団の言い分が通ってしまう傾向が強い。

変化がめまぐるしい今の世の中に対応するには、コミッショナーの権限とNPB事務局の機能を強化して判断と実行のスピードを速める必要があると思うのですが、そういう組織改編が行われる兆しが見えないのは大いに不満です。とりあえずセ・リーグとパ・リーグの事務局は合併してしまえばいいと思うんですが。

>さて、本文リンクも合わせ読んだ感想ですが、「選手会は悪くない」とは決して言えませんが、やはり悪いのはNPBでしょう。

この件に関しては、私には、どちらがよい悪い、という判断はつきません。
そもそもポストシーズンに試合が増えるのがそんなに問題か、という思いが拭えませんし(確か10月は契約上の拘束期間内ですから、ほとんど試合がなかったこれまでの方がおかしい、とも言えます)、争点となっている選手会の要求事項のうち、私が積極的に賛成なのは「球場施設の改善」くらいで(この点についてはNPB側も調査に入っているようです)、他の事項については、双方折り合いのつくところでやってください、としか言いようがありません。

宮本会長が「回答がない」と怒った件については、たぶん宮本会長には、ここで何らかの回答があるはずだという期待(ないしは約束)があったのでしょう。もし約束したのに回答がないのであれば、その点についてはNPB側が悪いと言えます。ただ、その日が回答期限だったのか否か、現在、最終決定までのどの段階にあるのか等については、報道からも選手会サイトからもわかりませんので、そこで回答がないのが不当なのかどうかは判断しづらいです(NPB側は「持ち帰って検討する」と言っており、まだ要求を拒否したわけではありません)。

>「たかが選手」なんて言った某橙球団(元?)オーナーの事件から何も変わってないのでしょう。

この2年間で、アジアシリーズが始まり、WBCが始まり、パが先行したプレーオフ制度にセも同調することが決まりました(パにセが追随したのは、おそらくプロ野球の歴史の中で初めてのことです)。日常的にも、すべての球団がファンサービスに力を入れている(巧拙はありますが)。
当時と変わったことは、それなりにいろいろあると私は思います。もちろん、変わっていない(変わるべき)こともたくさんありますが。

>なんにせよ、やはり労使間の問題ですからねぇ。プロならプロらしく「白鳥のバタ足」をそんな‘これでもか’みたいに見せ付けないでほしいが・・・・・(結局ただの雇用問題の延長みたいな物のようだし)

まったく同感です。


>馬場さん
>私が知りたいことは、「NPBが本当にダメな組織かどうか」という一点です。

個人であれ組織であれ、ダメな部分もあれば、いい部分もあります。どの観点から見るかによっても判断は異なります。NPBを「持続的な経営が成り立たないとわかっていながら選手に膨大な年俸を払い続ける破綻した企業体」と言うこともできるし、「こんなに儲からない商売を70年以上も続けて観客を喜ばせてくれる素晴らしい事業体」という見方も間違いとはいえませんから、何が「ダメな組織」かを定義するのも容易なことではありません。

「本当にダメな組織かどうか」などと○×式の回答を求めるような議論は不毛ではありませんか。

>その後「NPBのダメっぷり」に関する報道がないことを非常に残念に思っています。

一例を挙げれば、昨年7月に書いたエントリ「『完全ドラフト制度』だと勘違いしてたりして。」http://kenbtsu.way-nifty.com/blog/2005/07/post_2dda.htmlに紹介した新聞各紙の記事などは、その後の「『NPBのダメっぷり』に関する報道」に該当すると思われますが、いかがでしょう。

>(おそらく「ダメでなくなった」わけではない。)

昨年の千葉ロッテ、今年の北海道日本ハムのように、スポーツビジネスとして自立した経営を目指している球団がチーム成績と観客動員の両面で成功していることは、必然的にこれらの球団のNPBにおける発言力を増し、NPB全体をよい方向に導く原動力になると思います(営業面では成功している東北楽天も)。
NPBは主要な意思決定において全球団の合議制と多数決をとっているので、まともな判断力のある球団が増えれば、それはそのままNPB全体の判断力の向上につながるはずです。
たとえば来年からのポストシーズン制度についても(その是非は別として)、パが始めた制度にセが追随するという出来事は、少し前まではまったく考えられませんでした。NPBに変化が起きているのは確かです。

「ダメ」か「ダメでなくなった」か、という二分法では、このような変化を論ずることはできません。「ダメ」と「ダメでない」の間のどこにいるか、どちらに向かって動いているか。大事なのはそういうことではないでしょうか。


なお、私が宮本選手会長を批判しているのは「拙速に試合ボイコットを持ち出したこと」においてです。
「選手会が情報発信しない」というのは、試合ボイコットを言い出す前にファンに理解してもらう努力をしたらどうか、という副次的な議論に過ぎません。念のため。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/11/09 23:42

ここまで読ませていただいて疑問に思うことがあります。
今回の宮本選手の発言は一スポーツファンとしては大変残念でした。PSGも日米野球も東西対抗もファンとしては十分楽しめたからです。できるだけファンの声を聞いて、東西対抗などは今後も続けてほしいと思います。

それでも鉄さんの考えに違和感を感じるのは、本来ファンの声に耳を傾け興行に反映すべく努力するのは興行主たるNPBサイドであって、選手会はあくまで選手の利益第一に活動するものではないかと思うからです。

選手はグラウンドで全力を出し、また出せるように準備をするのが仕事です。また新庄選手に代表されるようにファンがより楽しめるようにプレー以外の面でファンサービスをするのもよいと思います。選手はファンを第一に考え、ファンのためにプレーすべきです。しかし、より多くの試合を楽しみたいファンの思いをすべて満たそうとすれば選手の負担が大きくなりすぎるのは明白です。そこで選手会が必要になるんじゃないでしょうか。選手がグラウンドで全力を発揮するのに障害になることがあればそれを排除するために動くことが選手会の仕事だと思います。選手会の仕事とファンの思いとでは相容れない部分が出てくるのは当然でしょう。そこを両者のバランスを取ってうまくまとめるのがNPBの仕事ではないでしょうか。

宮本選手の発言はファンとしては残念ではありますが、選手会会長の発言としてはそれほど非難されるものでしょうか。NPBがあまりにふがいないために、今の選手会には本来選手会が考える必要のないことまで求められているように思えます。

投稿: アリ | 2006/11/10 11:01

選手会会長として宮本選手の今回の戦法はいささか稚拙であるとは言えるでしょう。
ただそもそも選手会というものはファンや野球界の事を考える組織ではなく、選手の利益のみを求める立場にある組織ですから、ファンの事なんてそもそも選手会には関係無いと思いますよ。経営側が球団の利益のみを追求し、選手会が選手の利益のみを追求する事で選手の待遇のバランスがとれるって事ですね。

鉄さんは花相撲も必要とおっしゃられてますが、私個人としては花相撲よりは出たい人のみが出た真剣勝負の方が良いですね。私は球場へ行くわけではなく主にTV観戦ですから、花相撲なんてTVで見ても全く面白くないわけです。
現状プロの真剣勝負が見られるのはPSGとWBCぐらいですし。今回の賞金制はよかったのでは無いでしょうか。

投稿: っと | 2006/11/10 12:38

いや~鉄さんに「そうじゃないよ~」と一言も返せないくらいのコメントを頂いてしまいましたw
念の為書くと
>宮本会長が「回答がない」と怒った件については、たぶん宮本会長には、ここで何らかの回答があるはずだという期待(ないしは約束)があったのでしょう。もし約束したのに回答がないのであれば、その点についてはNPB側が悪いと言えます。ただ、その日が回答期限だったのか否か、現在、最終決定までのどの段階にあるのか等については、報道からも選手会サイトからもわかりませんので、そこで回答がないのが不当なのかどうかは判断しづらいです(NPB側は「持ち帰って検討する」と言っており、まだ要求を拒否したわけではありません)。

のあたりが読み取れてなかった為NPBが悪いように感じました。ストまで持ち出すので何か(約束等が)あったのだとおもってましたので・・・・
そのことを踏まえるとどっちもどっちな気もしますね


投稿: KTY | 2006/11/10 21:21

>アリさん
こんにちは。お書きになっていることはわかりますし、おっしゃるような形がNPBと選手会の本来あるべき姿なのだろうと思います。

まあ、私が概して選手会に厳しいのは確かです。
ストライキを実施した前と後であまり主張や行動に変化が見えないのを不満に思っていますし、「裏金問題」に関する欺瞞的な主張には不信感と怒りを覚えたままです(詳しくは「それでもまだ沈黙している人々。」http://kenbtsu.way-nifty.com/blog/2004/10/post_9.htmlや「沈黙どころか…。」http://kenbtsu.way-nifty.com/blog/2004/10/post_10.htmlをご参照ください)。野球選手が試合数を減らすことを要求したり、「要求をのまなければ野球をしないぞ」と交渉材料に使ったりすることにも、以前から違和感を持っています。
ご指摘のように選手の利益第一に活動している団体でありながら、二言目には「ファンのために」と言うあたりに対しても、いちいち俺たちをダシに使わないでくれ、という気分があります。

このエントリも、おそらくそういう積み重ねの上に書かれています。バランスが悪いと言われればそうかも知れませんが、選手会がおかしなことをしている時に、「もとを正せばNPBが悪いのだから」という理由でそれを相殺しようとは思いません。選手会に対してもNPBに対しても、それぞれ是々非々に、その時に思ったことを書いていくだけです。

実際のところ、世の中にNPBを批判する言説はあふれかえっていますが、選手会に対するきちんとした批判はあまり目にすることがありません。こういうblogがひとつくらいあってもいいんじゃないだろうか、という気はしています。


>っとさん
こんにちは。

選手会に関するご意見については、おっしゃる通りだと思います。上のアリさんへのコメントにも書いたように、それなのに「ファンのため」を持ち出しすぎるきらいがありますが。

>鉄さんは花相撲も必要とおっしゃられてますが、私個人としては花相撲よりは出たい人のみが出た真剣勝負の方が良いですね。私は球場へ行くわけではなく主にTV観戦ですから、花相撲なんてTVで見ても全く面白くないわけです。

日米野球からの帰宅後に録画したテレビ中継を見直しましたが、私があれほど感激したハワードの流し打ちやレイエスのスナップスローの魅力は、テレビ画面ではほとんど感じることができませんでした。野球のテレビ中継というものは、プレーひとつひとつの味わいよりも、勝負の結果を伝えることに向いているのでしょう。スタンド観戦者とテレビ観戦者の利害は必ずしも一致しない、ということですね。
どちらをより大事にするかについては正解はなく、主催者の判断次第ということだと思います。

>今回の賞金制はよかったのでは無いでしょうか。

今回のMLB選抜は売り出し中の若手スターが多く、彼らは成績のわりにまだ年俸が高くありません。公式プログラムによると、マウアー、ハワード、ライト、レイエスの年俸はいずれも35-40万ドル程度で、城島(543万3333ドル)の10分の1にも満たない。出場ギャラも賞金も彼らの意欲を引き出すのに有効だったのでしょう。それだけの金額を積んで、なおかつ採算が合うのなら、興行としては今後も継続可能ということになります。


>KTYさん
レスにかこつけて、当方の書きたいことを書きまくってしまいましたね(笑)。失礼しました。

*************************************

諸般の事情で明日から2週間ほどアクセス困難な状況になります。
レスが遅れた場合はお許しを。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/11/10 22:35

ジャーナリストの大島裕史氏がWBC以来の「国際試合ラッシュ」で疲弊した韓国プロ野球のことを書いておられます。 
http://www.sportsnetwork.co.jp/adv_3/col_oshima.html

春のWBCから秋のアジアシリーズと、「野球の国際化」につれてポストシーズンの負担が増えているのは事実です。韓国に至っては、アジア大会にまでプロ中心で臨まなければならなかったという「酷使」のために故障者が続出しています。
ご参考までに。

投稿: 馬場 | 2006/12/25 17:16

>馬場さん
>韓国に至っては、アジア大会にまでプロ中心で臨まなければならなかったという「酷使」のために故障者が続出しています。

韓国における「国家代表」の位置づけは、どの競技においても日本とはかなり差があるようですから、その前提を抜きにしてこういう表現をされることには、いささか抵抗を感じます。大島氏の文章も、興味深い記述は多々ありますが、「酷使」と「故障」との相関関係についてはあまり実証的な書き方ではありませんね。

もちろん、「国際レベルのスケジュール調整が不可欠である」という大島氏の主張には同意します。その観点からいえば、来秋は五輪予選に専念したいので日韓野球はやめてほしい、という日本の選手会の意見はもっともだと思います(とりあえず来秋に限定した話ですが)。

投稿: 念仏の鉄 | 2006/12/27 22:24

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