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弁護士がスポーツ代理人に向いているとは限らない。

 オリックスとの交渉決裂から10日あまり。中村紀洋の去就に関する記事は依然としてスポーツ紙を賑わしているが、記事の中に「茂木立仁弁護士」という文字が見当たらなくなってきた。
 メディアはトレーニングに励む中村自身に直接取材して話を聞いている。選手が代理人と契約している以上、契約の進展に関するコメントは代理人の口から語られるのがノーマルな形だと思われるが、彼らの関係はどうなっているのだろうか。中村は、オリックスとの交渉が決裂に終わった際に、「自分自身が契約の場にいればよかったなと思う」と代理人交渉を後悔するような発言をしていたから、もう契約を解除してしまったのだろうか。

 日本のプロ野球界で、外部から理解の困難な判断や発言を行ってきた実績においては、球団ではオリックス、選手では中村紀洋が、他を圧している。その両雄の間で行われる契約更改交渉となれば、何が起こったとしても驚くには値しない。
 とはいうものの、一連の交渉の中でも、奇異に感じた出来事はある。
  たとえば、12月25日に行われた3度目の交渉の後で、茂木立代理人が口にした以下の言葉だ。

<数字(成績)が悪いのは明らかだが、だれが見ても有名選手。数字にしにくい部分があるはず>(12/26付 大阪日刊スポーツ)

 有名選手なのだから年俸もそれなりに出すべき、とはまたずいぶん乱暴な意見だな、と当時、私は感じた。
 (「球界には数少ない華のある選手」という表現も目にして、何年前の話をしているのかと訝しく感じた記憶もあるのだが、どこを検索しても実例がみつからないので、とりあえずここでは触れない)
 同日付のスポーツニッポンが紹介している発言は微妙に異なる。

<中村は明らかに有名選手。球団がそれを前面に押し出す限りは評価すべき>

 なるほど。プロモーションに利用するなら、それなりに報いよ、と。それなら理解できなくもない。だとすれば、中村のおかげで2006年のオリックスはどれだけ利益を伸ばしたのか、中村グッズはどれだけ売れたのか、中村はどれほど人気のある選手なのかをデータによって明らかにしてみたらどうだろう。「数字にしにくい部分」を数字に落とし込み、最終的に報酬額に反映させるのが代理人の仕事ではないのかな。そんな印象も受けた。
(ちなみにオリックスでは2006年オールスターゲームのファン投票で清原、菊池原、谷の3人が部門トップ=谷は外野3位=になっているが、中村は三塁手部門の2位だったに過ぎない)。

 別の日の<“請われてきたのに、裏切られている”という思いが本人の中にはある。謝って済む問題ではない>(12/29スポーツニッポン)という言葉も代理人の発言としては珍しい。なかなかきつい表現で、球団に対する非難と考えてよさそうだ。
 選手が交渉の場に出ることで生じる感情のもつれを避け、冷静に成績と報酬との相関関係を話し合うことは代理人の主たる役割のひとつだと私は思っていたが、茂木立代理人は中村の怒りの代弁まで引き受けてしまったようだ。

 上述したように、オリックスと中村紀洋の契約更改交渉で中村の代理人を務めるというのは、この分野でもっとも困難の度合が高い仕事だと私は思う。中村がニューヨーク・メッツとの契約をひっくり返した経緯やドジャース加入後の発言の数々を思い起こせば、クライアントとの間に信頼関係を築くのも容易なことではなさそうだ。あるいは、代理人として売り出そうという立場であれば、この困難な契約を成功に導いて名を挙げたいと思うかも知れない。
 茂木立弁護士がどういう考えで中村の代理人を引き受けたのかはわからない。いずれにしても、最初に交渉に臨んだ時点では、オリックスは8000万円なら払う気があったし、中村はオリックスをやめる気などなかった。球団と選手の双方が望まない結果を導いてしまったという一点において、この契約更改交渉が失敗に終わったことは疑う余地がない。


 ところが、世の中にはそうは思わない人もいるらしい。
 blog「津久井進の弁護士ノート」で、茂木立弁護士とは同期で親しくしているという兵庫県の津久井弁護士は、茂木立代理人について<ずいぶん苦労をしているようですが,実によく頑張っていると思います。>と好意的な見解を示している。
 このエントリに先立つ1/13の<決まりごとを守らない野球財界〜ノリ退団>ではこの件について論じ、<どうも世間の認識は,なんかちょっとずれとるなあ,と感じていました。>と書いている。津久井弁護士によると、世間の認識は以下の3点において<ずれとる>のだという。

<1つ目は,プロ野球界というのは圧倒的に球団側が強者ですが,強者の側が「決まり」を守らない,ということ。

 2つ目は,これを見守る世間やマスコミも,「決まり」の存在を軽く見ているなあ,ということ。

 3つ目は,プロ野球交渉における「代理人」というのは,相手方のスケープゴードにもなっちゃうんだなあ,ということ。 >

 <1つ目>の<「決まり」>とは、選手の報酬の減額制限を定めた野球協約92条。<本人が拒絶しているにもかかわらず,最後までこの60%ラインを前提に交渉を進めてきたわけで,明らかに「決まりごと」を軽視しています。 ><私は,    ・本人の意思に反して「同意」を求めようとする   という契約強要の悪徳商法のごとく,形式だけの順法精神に違和感を覚えるわけです。 >と津久井弁護士は説く。

<2つ目>については<「契約交渉」なのだから,契約手続きの内容が論点でしょう。 ところが,契約の周辺事情のいきさつにスポットをあてて,契約内容や手続きの当否に目を向けないのは,「中身を見ないで雰囲気だけで決めちゃう」,という軽薄さのあらわれです。 ><ファンをはじめとする大衆が,本当の論点に目を向けない点に,違和感を感じました。>と書かれている。

 <3つ目>は<これは「オリックスにはめられた」と思われる点です。>だという。
 <今回は,相手方であるオリックスが,自分たちのずるい主張や立ち回りを棚に上げ,言った言わないの問題についても,その問題の原因を,全て代理人に押し付けています。><今回のドタバタ劇を振り返ってみると,オリックスのツケを代理人に回された,「してやられた」と感じるのです。 >として、津久井弁護士は<どうして,その点が理解されないのだろうか。 >と嘆く。


 この3つの論点のいずれもが、私には<なんかちょっとずれとるなあ>と感じられる。

 <1つ目>の野球協約92条をめぐる議論は、これは法律家らしい見解で、筋が通ってはいる。ただし、津久井弁護士の言う通りに、選手に対して減額制限を超える提示をすること自体が許されないのであれば、球団に残された選択肢は自由契約か任意引退しかない。それは「決まり」に反してはいないけれども、だからといって球団も選手も望むところではないだろう。

 では、現実には、この規則はどのように運用されているだろうか。
 選手会がオリックス球団に送った抗議文書を見ると、球団が制限を超える減額を提示する際には、同時に選手を自由契約にして他球団と交渉するチャンスを与えるべきである、そのタイミングはトライアウトが実施される以前でなければならない、というのが選手会の見解だとわかる。例えばこのオフに日本ハムの坪井は一度自由契約になった後に、減額制限を超える年俸で日本ハムと再契約しており、選手会は、オリックスも中村に対してそのようにすべきだった、としている。バランスのとれた現実的な解決策だと思う。
 津久井弁護士の主張は正しいけれども、それだけを力説しても解決にはつながらない。

 <2つ目>はどうか。契約交渉なのだから契約内容に注目するべきだ、というのはご指摘の通り。
 オリックスと中村との契約内容とは何か。もっとも重要な内容は金額だ(その他の契約内容は、統一契約書を用いている以上、どの選手も大きな違いはないはずだ)。
 中村への提示額8000万円が妥当か否か、もっといえば2006年の報酬額2億円が妥当だったのかどうか。その点を吟味した上でなければ、中村の憤慨が妥当なものかどうかを判断することはできない。

 プロ野球選手の参稼報酬が決まる要因には複雑怪奇なものがあり、ある金額が妥当かどうかを決めるのは容易ではない。ただし、たとえば選手相互の成績と報酬を比較することで、ある程度の判断基準を得ることはできる。
 オリックスの主力打者で中村と年齢の近い選手に北川博敏内野手がいる。両者の過去3シーズン(北川は2004-6、中村は2003,4,6)の打撃成績を比較してみよう。

中村 307試合 272安打 54本塁打 178打点 .248
北川 360試合 377安打 44本塁打 210打点 .285

 本塁打数以外はすべて北川が大きく上回っている。その北川の2007年の推定年俸は7000万円だ。念のため付け加えると、中村の2006年の打撃成績は85試合に出場して.232、12本塁打、45打点。これで8000万円もくれるというのなら、中村は憤慨するどころかオリックスに大いに感謝してよいのではないかと私は感じる(オリックス野手では、2億5000万円の清原、1億円の村松に次ぐNo.3になる)。皆さんはどう思われるだろうか。

(ちなみに上の数値に中村がアメリカにいた2005年の成績は入っていない。この年のMLBロサンゼルス・ドジャースにおける成績は、17試合に出場して39打数5安打3打点、本塁打なしで打率.128。もし単純に「過去3年」で比較するなら、中村の成績は上記をさらに下回り、北川とは比較にならないほどみすぼらしい数字になる。中村がタイトルを争ったり獲得したのは今のところ2002年が最後で、もう4年も不成績が続いている)

 もちろん、8000万円の提示額に感謝すべきというのは私の個人的感想であり、普遍性も妥当性も検証されてはいない。異論の出る余地はあるだろう。
 だが、オリックスと中村の契約内容の是非を論じようというのであれば、少なくともこの程度のデータを示し、提示額の妥当性について何らかの見解を示すことが前提になるだろうと私は思う。
 そういう部分に一切言及しないまま<手続きの当否>だけでこの問題を論じようとしている津久井弁護士の姿勢は、<形式だけの順法精神>のように私には感じられる。<本当の論点に目を向けない>のは誰だろうか。

 だいぶ長くなったので<3つ目>については簡単に済ませる。
 上述したように、交渉の過程では茂木立代理人にも記者会見する機会は何度もあった。にもかかわらず<スケープゴード>(賢明なる読者はご存知のように、この言葉は世間一般では「スケープゴート」と表記される。法曹界で「スケープゴード」と表記するのかどうかは私にはわからない)にされてしまったのだとしたら、それは単に茂木立代理人の交渉力なり表現力なりが不足していたに過ぎないのではないだろうか。また、報道に見る限り、公然と茂木立代理人に対して批判的な発言をしたのは彼のクライアントであり、オリックスではない。
 ちなみに津久井弁護士は、その具体的な根拠を一切示さないままに、茂木立代理人は「オリックスにはめられた」「してやられた」と力説している(そもそもどのような不利益を被っているのかも具体的には示されていない)。法律家には珍しい記述態度だと私には感じられる。*


 ここまで紹介してきた津久井弁護士の物の見方・考え方が、弁護士一般に共通するものなのか、それとも彼個人の特殊な考え方なのか、私には判断がつかない。だが、文中には<世間>や<大衆>という表現が見られるので、「世間や大衆とは異なり弁護士である自分はこう考える」と津久井弁護士は認識しているのだろう。

 もしこのような考え方が弁護士一般に通じるのであれば、弁護士はスポーツ代理人にはあまり向いていないのかも知れない。
 津久井弁護士は中村=茂木立サイドに正義があるという主張を繰り返しているが、代理人の本分は正義の味方をすることや白黒つけることではなく、クライアントにとって好ましい解決に事態を導くことにあるはずだ。少なくとも、これほど明白に失敗した交渉に関して<実によく頑張っている>と考える理路が、私には理解できない。法律家なら誰でもそう考えるものなのだろうか?他の弁護士さんの意見も聞いてみたいものだ。

 茂木立代理人の仕事のうち我々の目に触れるのはほんの一部だが、その範囲を見ただけでも、彼がプロ野球界の事情に精通しているとは到底思えない。例えば、中村紀洋の「ブランド力」を持ち出すことがどれほど世間の反発を買うか、彼には予測できなかったのだろうか。また、手首の痛みに耐えて試合に出たことを考慮してほしいと交渉の場に持ち出すプランがあったのなら、その数日前に彼のクライアントがゴルフコンペに公然と参加することも止めた方がよかっただろう。オリックスに「してやられる」までもなく、中村と茂木立代理人がファンの反感を招くような言動を自ら行っていたことは否定できない。また、中村=茂木立側には年俸調停を申し立てるという選択肢もあったはずだが、彼らはそれをしないまま交渉決裂を迎えている。

 欧米のプロスポーツ界では大勢のスポーツ代理人が働いている。サッカー界ではFIFAが代理人の公認制度を設けて資格試験を実施しており、日本でも何人もの代理人が生まれて選手のために働いている。
 選手のために大型契約を勝ち取る辣腕代理人もいれば、球団と良好な関係を築いている代理人もいる。親身になって選手のキャリア形成や財産形成、その他私生活全般をサポートする代理人もいる。弁護士もいるが、そうでない人も多い。契約に関する法的知識は必要だが、それだけでは十分ではない。

 日本のプロ野球界では、NPBと選手会との申し合わせにより、代理人は弁護士に限られ、同時に複数のクライアントを抱えることは認められていない(外国人選手は別らしい)。
 だが、当然ながら、弁護士だからといって誰もがスポーツ代理人に必要な資質を備えているとは限らない。クライアント1人という制限を設ける限り、代理人の経験を積むことのできる弁護士は限られ、必要な資質もなかなか明確にはならないだろう。そんな状況下では、優れた代理人が育つことも難しいのではないかと思う。オフの契約更改時にのみ付け焼き刃的に交渉に立ち会うだけの代理人が今でも少なくないようなら、なおさらだ。

 「優れた代理人」が「高額契約を勝ち取れる代理人」とイコールであれば、球団側にはなかなか是認しづらいことだろう。だが、たとえば現在では人格や社会性をたたえられる宮本慎也や小久保裕紀のような選手でさえ、若いころには怪しげな節税指南屋にひっかかって、うっかり脱税をしてしまったりするくらいに野球選手が迂闊で無防備であることも事実だし、そのような面も含めて選手をサポートできる人材が育つことは、野球界にとって決して悪いことではない。
 そろそろNPB側も、スポーツ代理人を「できれば排除したい好ましからざる異物」のように考えるのをやめて、彼らを「野球界の一員」と認めて位置づけ、望ましい代理人のあり方を選手会と協議しながら考えていく時期になってきたのではないだろうか。経営への圧迫が心配なら、それを避けるためのルールも合わせて考えればよい。

 代理人の資格を弁護士に絞ったのは、その導入時に、野球界から「好ましからざる異物」(おそらくは団野村というたった一人の人物)を締め出すための手段だったのではないかと思うけれど、そのためにかえって別の「好ましからざる異物」が入ってきてしまう可能性も否定はできない。
 代理人による交渉も年数を重ねて実例が増えてきた。選手側も代理人側も球団側も、それぞれに経験を積んできた。球団側も、当初の嫌悪感や拒絶反応は薄まり、代理人の効用を実感するような局面もあったのではないかと思う。このあたりで、それぞれの経験を持ち寄り、制度を見直して再構築してもいいんじゃないだろうか。


* このエントリには、オリックスについて<代表の宮内氏は,規制緩和政策(=言い方を換えると,「従来の決まり事を破ろう」という扇動運動)の先頭を行っていた人で,まさに自己に都合の悪い規制を数多く廃した原動力となった人です。>というようなユニークな見解も記されている。

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コメント

言ってしまえば、代理人だけではなく「弁護士」というものそのものが
>正義の味方をすることや白黒つけることではなく、クライアントにとって好ましい解決に事態を導くことにあるはずだ。
の仕事だと思いますが・・・・。
例えば、悪徳政治家や医療ミスを犯した病院などの担当弁護士が「犯罪しました~!」なんて言わないですもんね。(一部例外もありますが。その場合もクライアントに少しでも有利になるよう動きますね)
そういった意味では茂木立仁弁護士は「代理人」どころか「弁護士」にも向いているのかどうか・・・・・・疑問だw
勿論いままでと違うハタケのことをやるので「勝手」が分からなかったのかもしれないですが・・・・・(この人に詳しくないので「経験豊富」なら失礼!)

投稿: KTY | 2007/01/25 21:51

ご無沙汰しております。

中村ノリについては、やや異なる見解を持っております。

>最初に交渉に臨んだ時点では、
>オリックスは8000万円なら払う気があったし、
>中村はオリックスをやめる気などなかった

これが違ったのではないでしょうか。
オリックスは「できれば契約したくないが世間体を考えて8000万円と言ってみた」
中村ノリは弁護士に「8000万円ならば契約せずともよい、絶対上乗せせよ」
だったのではないでしょうか。

気の毒な弁護士先生は、
「買い手(オリックス)が8000万円と差し値している訳ですから、それよりも悪い状況になどなるはずはない」
として、1銭でも上積みすべく、「有名だから」「華のある」など、ありとあらゆる屁理屈をつけて交渉したのでは?

ところが、オリックスは最初の差し値を反故にするは、中村ノリは「本当は8000万でもよかった」と言うは、双方からハシゴを外されてしまったのではないかと。

>日本のプロ野球界で、外部から理解の困難な判断や発言を行ってきた実績においては、
>球団ではオリックス、選手では中村紀洋が、他を圧している。

これが全てに思えます。弁護士先生はクライアントの指示通り働いたのだと思えてならないのですが。

代理人論については賛同いたします。ただ、いまだプロ野球選手の年俸は高過ぎるように思えるので、その問題の解決を果たさないと、なかなか改善は難しいように思えました(サッカー人のひがみかもしれませんが)。

投稿: 武藤 | 2007/01/25 23:49

>KTYさん
弁護士もクライアントのために働く仕事というのはおっしゃる通りですね。津久井氏の考え方は、弁護士としてもユニークなのかもしれません。blogの他のエントリを見ると、社会正義に邁進している方のようですし。

茂木立弁護士は、弁護士業でどういう仕事をしてきた方かはわかりませんが、プロ野球代理人としてはこれまで名前を聞いたことがありません(検索しても昨年以前には見当たりません)。最初に手がける案件としては、筋が悪すぎましたね(笑)。


>武藤さん
>これが全てに思えます。弁護士先生はクライアントの指示通り働いたのだと思えてならないのですが。

ご推察のような状況も十分に起こり得る案件だとは思います(笑)。交渉を重ねたわりに争点が絞れないままでしたし、クライアント自身が何がしたいのかよくわかっていなかったのではないかとも想像できます。代理人が気の毒といえないこともないのですが、中村の過去の行状を見れば、想定の範囲内の出来事という気がします。

>ただ、いまだプロ野球選手の年俸は高過ぎるように思えるので、その問題の解決を果たさないと、なかなか改善は難しいように思えました(サッカー人のひがみかもしれませんが)。

中村がかつて近鉄から5億円の年俸をとっていたように、経営状態が実質的に破綻しているにもかかわらず球団が高年俸を出してしまうという実情があるから、代理人が頑張る余地もあるのでしょうね。不健全な状況ですが、MLBという競争相手のことを考えると、なかなか下げづらい面もあって難しいと思います。
「ひがみ」とおっしゃいますが、プロ野球の経営者たちはたぶん、報酬額の面ではさほど無茶な要求をしないサッカー選手とその代理人を見て、むしろうらやましいと思っているんじゃないでしょうか。

投稿: 念仏の鉄 | 2007/01/26 00:20

プロ野球界の収入がゆるやかに減っていく一方で、福留みたいな勝ち組の要求は何故か年々高まっていくようで、たぶん来年以降も、年俸がネックになりかけてる選手に対する大幅減俸提示は増えるんでしょうね。現状の92条は何の役に立ってるんでしょうか。早いとこ

1:戦力外通知はトライアウトの◇日以上前に行うべし
2:○%以上の減額提示は、さらにそれより☆日以上前に行うべし
3:○%以上の減額提示を受けた選手には自由契約を要求する権利が、球団にはその要求に即刻応じる義務が発生する

ぐらい、ぺナルティまで含めて協約に明文化すべきだと思うんですが。

投稿: nobio | 2007/01/26 18:01

>nobioさん
明文化については同感です。実際のところ、減額制限を超えようが超えまいが選手の同意がなければ契約は成立しないですし。実効性を持たせるためには、ご指摘のように、減額制限を超える提示には通告期限の厳守と自由契約を義務づける、というのがよいように思います。


中村の事例についてもうひとつ感じるのは、上がり過ぎた年俸は、ひとたび成績が下降に転じた時には現役生活を続けることを困難にする両刃の剣でもある、ということです。MLBではかなり前からそういう傾向が顕著ですが、日本もいよいよそうなってきたのだな、と。

また、このオフの契約更改では、「寂しい」とか「愛がない」とか言う中村のほかにも、球団側があくびをしたとか携帯電話が鳴ったとかで感情的になった選手がいましたが、選手会が求めてFAだの代理人だのを制度化し契約をビジネス化した以上は、球団からの古きよき家族的かつ牧歌的な愛情を求めるのは、残念ながら筋が違うような気がします(ま、普通のビジネスマナーとしても、あくびや携帯コールはまずいとは思いますが)。

投稿: 念仏の鉄 | 2007/01/26 23:22

なるほど。上の日ハム坪井の事例なども合わせ読むと、選手が要求しようがしまいが
「○%以上の減額提示を受けた選手は、自動的に自由契約選手として扱われる」
と決めてしまえばいいんでしょうか。

>プロ野球の経営者たちはたぶん、報酬額の面ではさほど無茶な要求をしないサッカー選手を見て、
>むしろうらやましいと思っているんじゃないでしょうか

私はプロ野球ファンとしてサッカー界をうらやましく思ってるのですが、
どうしてサッカー選手は無茶な要求をしないんですか。

投稿: nobio | 2007/01/27 04:55

こんにちは。
>中村の事例についてもうひとつ感じるのは、上がり過ぎた年俸は、
>ひとたび成績が下降に転じた時には現役生活を続けることを困難に
>する両刃の剣でもある、ということです。

同感です。
中村の件がオリックス・選手の両者にとって不幸だったのは、昨年契約をした時点で、実力の衰えがかなり顕著であったにもかかわらず知名度の高い選手であったため、年俸が高くなってしまったことだと思います。
将来的に実力と年俸が乖離する可能性のある選手(ベテランやFA選手)の場合は、契約金や出来高報酬のウェイトが高まっていくと思います。今回のノリの場合は、5千万の年俸プラス最大5千万の出来高、とかなら、合意できたんじゃないかな。

投稿: Jun | 2007/01/28 14:42

感覚的なものなので詳しくはわからないのですが、プロ野球が成果主義で評価されるべきなのにも関わらず、選手の年俸を並べてみると年功序列的な雰囲気も感じるんですよね。若手とベテランの間の年俸格差はあっていいにしても、他のスポーツに比べると日本プロ野球はちょっと異常なのではないかと。これは「一度上がった年俸は下がらない」ような、旧日本的な空気があることが原因なのではないでしょうか。
早く活躍した選手には早期に億単位の年俸をあげる一方で、例えば1億円以上の年俸の選手については減俸の%制限を撤廃して、成績が悪いなら年俸を下げやすくする、などの改善は必要だと思います(そもそもこの制限は、年俸も立場も低い選手に対して意味のある制度であるはずです)。難点としては、それで選手の海外流出がどうなるのか、でしょうが…。

投稿: アルヴァロ | 2007/01/28 23:45

>nobioさん
>どうしてサッカー選手は無茶な要求をしないんですか。

しても無駄だとわかっているからではないでしょうか。クラブが財政事情をかなりオープンにしていますし、相場そのものがさほど高くありません。サッカー選手の報酬は世界最高クラスでも10億円ちょっとですし、日本人選手に高額年俸を払おうという海外クラブもまずありませんから、一言でいえば選手の側に年俸をふっかけるだけの交渉材料がないということでしょう。
ちなみに、Bloomberg.comに2005年5月に掲載されたサッカー選手の年俸・収入ランキングです。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=10000102&sid=ap_0LaDEKIsY
数字は100万ユーロですが、日本円に換算すると、ほとんどの選手のサラリーは10億円足らずのようです。


>Junさん
>中村の件がオリックス・選手の両者にとって不幸だったのは、昨年契約をした時点で、実力の衰えがかなり顕著であったにもかかわらず知名度の高い選手であったため、年俸が高くなってしまったことだと思います。

率直に言って、2005年オフにオリックスが中村と2億円で契約したと聞いた時には驚きました。後ろ足で砂をかけるようにして出ていった彼を引き取ったことにも、そんな高額年俸を払ったことにも。仰木さんが健在なら、もう少しうまく使いこなせたのかも知れませんが。


>アルヴァロさん
>プロ野球が成果主義で評価されるべきなのにも関わらず、選手の年俸を並べてみると年功序列的な雰囲気も感じるんですよね。

年功序列的なところは確かにあって、若手選手が好成績を残しても1年だけでは簡単に上がらないという傾向は今でもあります。
ただ、このオフの日本ハムの八木やダルビッシュの交渉ぶりに見られるように、最近はそういう話では選手が納得せず、1年だけの活躍でも大きく上げるケースが出てきていますから、成績を大きく落とした時にも年俸が連動するのでなければ、球団としてはやってられないでしょうね。

投稿: 念仏の鉄 | 2007/01/29 01:17

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=10000102&sid=ap_0LaDEKIsY
興味深い資料を教えていただいてありがとうございました。
たしかにメジャーリーガーに比べれば安いようですが、しかし福留にこれを見せたら
「ベッカムが10億でカーンが8億でオレが4億なら、安いじゃんオレ」
と言いそうな気がする・・・

投稿: nobio | 2007/01/30 17:06

>nobioさん
昨日、テレビのバラエティ番組に出演していた福留が「僕にも譲れない金額がありまして、今、球団ともめてるところです」と明るく言い放ってました。司会の明石家さんまが「こんな番組でそないなこと言いなさんな」と珍しくツッコミどころに困っていたのが可笑しかったです。

福留に限らず、野球選手のこの種の金額へのこだわりには、なかなか部外者からは理解しづらいものがありますね。3億8000万でも4億でも課税後の手取り額には大差ないという指摘もありますし、収入よりもプライドにかかわることなのでしょう(岩瀬と同額では嫌なのかも知れないし)。
ま、このまま大ケガもなく順調にいって、FAでMLBに移籍すれば、福留なら10億に近い年俸を手にすることもできるかも知れませんが。

投稿: 念仏の鉄 | 2007/01/31 10:00

>クラブが財政事情をかなりオープンにしていますし、相場そのものがさほど高くありません。

これはちょっと意外でした。
少し調べるとロナウジーニョが来年の契約で約18億円になるそうですが、それにしてもML、NBAトップとは少し差がありますね。
(A・ロッド29億円、シャキール・オニール23億円)

レアルやバルサはヤンキースと比べても収入はそんなに変わらないはずですから移籍金の費用なんかも影響してるんでしょうか?

Jリーグは最低年俸の制限もないそうですが、なぜそこまで我慢できるのか・・・。
選手会なんかは何もいわないのでしょうか?

投稿: hiro | 2007/02/07 04:29

来シーズンの最高額はロナウジーニョではなく、チェルシーのジョン・テリーの約19億円(1月末にロンドン誌が伝えたもの)だそうです。
失礼しました。

投稿: hiro | 2007/02/07 05:10

>hiroさん
そうですか、ありがとうございます。私が参照した資料はやや古かったようですね。アブラモビッチが相場を引き上げてしまったのでしょうね。

>レアルやバルサはヤンキースと比べても収入はそんなに変わらないはずですから移籍金の費用なんかも影響してるんでしょうか?

80年代にNumberがこの手の特集を組んだ時には、ランク上位はボクサーばかりでした。その後MLBの人件費が暴騰したのは「世界最強の組合」の力によるところが大きいのではないかと思います。

>Jリーグは最低年俸の制限もないそうですが、なぜそこまで我慢できるのか・・・。
>選手会なんかは何もいわないのでしょうか?

議論にはなっているようですね。Jリーグ選手協会サイトでこんな対談をみつけました。
http://www.j-leaguers.net/special/player2006/file025.html

甲府という小クラブの奈須や保坂という無名選手(失礼)がこれだけきちんと自分の言葉で議論できるというのは立派なことだと思います。
ちなみに選手協会サイトにある契約制度についての見解は次の通りです。
<現在、Jリーグのプロ選手契約はA、B、C契約制度といって、新人や実績のない選手はまずC契約からのスタートとなり、全体として報酬を抑えるシステムを採用しています。またプロ野球などと違って契約金制度も禁止しており、さらには最低年俸制度もありません。これはクラブの経営問題や資金力による有能選手の偏りを回避するためには有効ですが、プロの世界なのだから完全自由にすべきという選手の声も少なくありません。

 JPFAではJリーグ全体の活性化やクラブの経営問題なども考慮しながら、子供やアマチュアの選手がプロ選手に対する大きな夢を持てるような制度にするようにJリーグに働きかけています。

 一方、日本のプロサッカー界はまだ発展の途中であり、完全自由化によってクラブチームの財源を圧迫するあまり、解散の危機が訪れるような結果も想定されます。そのことは、自分たちの職場を小さくしてしまうことにも繋がりますので、お互いに協調しながら進めていこうとは考えています。>

投稿: 念仏の鉄 | 2007/02/07 07:57

Jリーグ選手協会は「おとな」ですねぇ。「自分たちの職場を小さくしてしまう」危険性を認識している。
思慮深い文言に感服しました。
このへんは、クラブ経営の透明性が高いJリーグの優れているところだと思います。
「親会社の宣伝部」として発足したプロ野球が今に至っても自立した「球団経営」ができていないことと対照的ですねぇ。

投稿: 馬場 | 2007/02/07 09:50

>「自分たちの職場を小さくしてしまう」危険性を認識している

僕も選手会のインタビュー読ませていただきました。
あっけらかんとしていてあまり考えてない選手もいるみたいですけど、若くして色々考えている選手も多いんですね。

福留選手の事はイライラしていただけに、こういう話は感心してしまいます。
公開されている情報を見ると今後も厳しい経営が続きそうですからこういう大人の対応はJリーグとしてもありがたいでしょうね。
それでも、クラブ側はもうちょっと権利に関して要求して良いように思うんですけど・・・。

プロ野球の経営に関して色々と問題はありますけど、個人的には何でも欧州の真似をして秋春制などどう考えても経営に響きそうな事をしようとしているJリーグチェアマンの方が疑問に思う事が多いです。

前後期でそれぞれ優勝チームを決め、優勝チーム同士でチャンピオンシップをするというやり方も久々に地上波で15%を取ったと聞きました。
しかし2004年で「欧州にあわせるべき」としてわざわざ盛り上がったやり方を放棄してしまった。
今でもなぜそこまでして欧州にあわせなくてはいけないのか理解に苦しみます。
代表有りきなのは分かりますが、もっと「Jリーグ全体が収入を増やす」という事に拘って良いと思うんですが・・。

投稿: ヒロ | 2007/02/07 22:58

>馬場さん
Jリーグ選手協会の公式サイトは、できるだけ多くの選手の肉声や実情、考えを紹介しようという姿勢が感じられて、私は好きです。読み物としても面白いですし。プロ野球選手会の、誰が書いてるのかわからない理屈ばかりの公式サイトと対照的です。


>ヒロさん
チャンピオンシップがなくなったこと自体は私も残念ですが、長丁場の1シーズン制の面白さ、終盤の盛り上がりというのもあるので、まあ仕方ないかなと私は思っています(ホームアンドアウェーが基本単位のサッカーでは、1試合総当たりの半期で優勝チームを決めてしまうことには無理があるでしょうし)。
春秋シーズンについては、欧州の中でも北欧では(冬が寒すぎるので)夏場にリーグ戦をやってますし、あくまで日本の選手と観客にとって最良となる条件をよく見極めて欲しいですね。

投稿: 念仏の鉄 | 2007/02/09 21:38

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» 年俸軟着陸計画に向けて [観測所雑記帳]
中村紀洋33歳は2006年、年俸2億円プラス出来高払い5000万円でオリックスと契約していた。2006年シーズンの成績は85試合、2割3分2厘、12本塁打。2007年に向けての契約交渉でオリックスは40%の減額制限を超える60%減の年俸8000万円を提示し、決裂。2007年2月3日現在、就職先未定の状態が続いている。 立浪和義37歳は2006年、年俸2億2500万円で中日と契約していた。2006年シーズンは113試合、2割6分3厘、1本塁打、31打点。2007年に向けての契約交渉で中日は56%... [続きを読む]

受信: 2007/02/03 05:17

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