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日本プロ野球パッシングが始まるのか。

 とうとうこういう日が来たのだな、というのが正直なところ。

 先日の都市対抗で橋戸賞(MVP)を獲得した新日本石油の田沢純一投手が、NPBからのドラフト指名を断り、MLB入りを志望することを表明した

 もともと今秋のドラフトでは複数球団が一巡目で指名するだろうと予想されていた有力選手だ。そのクラスの選手が、日本のプロ野球を経由せずにMLB球団入りするケースは、これまでなかった。

 なかったけれど、時間の問題ではあった。
 1998年のドラフト会議でジャイアンツを逆指名して入団した上原浩治(大阪体育大学)は、入団前にアナハイム・エンゼルスにも勧誘されたことを隠していない。上原がエンゼルスを選べば同じ問題が起こったはずだ。
 そして、日本のプロ野球や国際大会であれほど活躍した上原が、ようやくFA権を得て海を渡れるというオフを前にした今シーズン、これほど成績を落としているのを見れば、「行ける時に行っておかないと」と思う若者が現れたとしても無理はない。

 NPBは緊急に対策会議を開いたりしているようだが、田沢はNPB内の人ではない。社会一般のルールからいえば、彼とMLB球団との契約に関してNPBは無関係な第三者であり、口出しすることはできない。

 これまでこういうことが起こらなかったのは、NPBとMLBとの間に紳士協定と呼ばれる約束事があったからだと言われるが、紳士協定である以上、強制力もペナルティもない。MLBのオーナーたちが紳士であるとも思えない。
 10年間放置しておいた問題が表面化したからといって急に騒ぎ立てても、よい対策が出てくることは期待しづらい。1995年の野茂渡米と同じように、これが契機となって、以後同じように海を渡る選手が増える可能性は充分にあると思う。

 2002年ごろに表面化した“世界ドラフト構想”を見てもわかるように、相手は手を出す気満々なのだ。日本側が何を要望しようと、望むような条件をMLBが承諾するとは考えにくい。
 それ以降の6年間で、MLB入りした日本人選手の評価はさらに高まっているだろう。と同時に、松坂を見ていればわかるように、たくさんの球数を投げる日本式の投手の練習方法は、まったく評価されていない(成果を評価するのなら、過程も尊重したらどうかと思うが)。
 “日本人の馬鹿げた指導法で有望な素材が潰されないうちに獲得して手元で育成したい”なんて、いかにも彼らが考えそうなことだと思いませんか。

 これは一青年の「職業選択の自由」に関わる問題だ。自由主義・資本主義・民主主義を旨とする日米両国においては、正義は田沢とMLBの側にある。彼らの自由を阻止しようとするNPBは、非関税障壁だと批判を浴びるのが落ちだろう(そもそも30年前に、ドラフト会議を経ずに行われた江川卓とジャイアンツの契約を、「職業選択の自由」を掲げて擁護したのは読売新聞であった。当時の論理が正しいのなら、田沢の選択も正しいはずだ)。

 選手の側からいえば、従来はMLBでは入団時に多額の契約金を払うということをしなかった*。入団時の一時金は、文字通り日本がケタ違いに多かったので、収入面では、まずNPB入りすることにメリットが大きかった(そこで成功してからMLBに行けば最高だ)。
 だが、田沢についての報道では、MLB側もかなりの金額を用意していると伝えられる。近年はアマチュア選手に代理人がついて入団時の契約金や年俸吊り上げを図っていると聞くので、金銭面でMLBがNPBに近づいているのかも知れない。金の張りあいなら日本がMLBに勝てるはずもない。
 ほとんど唯一のアドバンテージが失われたことも、このタイミングでこういう事態が起こった理由のひとつだろう。

 だから、「10年放置しておいた問題」と書いたものの、10年前から真剣に対策に取り組んだとしても、NPBに何ができたかといえば、はなはだ心許ないものはある。実質的に止めようがなかっただろうとは思う。


 ただ、ひとつだけ残念に思うのは、NPBと社会人球界との間に、どれほどの一体感や信頼関係があるのだろうな、ということだ。

 “日本の野球界をMLBの植民地にしないために、ドミニカのように冬場にしか自国リーグを開催できないような国にしないために、有望な若手は、最初はNPBに入るよう指導してくれませんか。”

 そのように、NPBの然るべき地位にある人々が、社会人球界や学生球界の指導的立場にある人々に頭を下げて回る、というようなことが行われていたら、アマ球界からの直接流出は、少しは可能性を抑制することができたのかも知れない。
(まだ実例がひとつもないうちにそこまでする必要はないのかも知れない。だが、数年経ってこの数行を読み返した時、「あの時にすぐそうやっておけば…」と残念に思う可能性は結構高いような気がしている)
 現実には、慌てふためくNPBに対するアマ球界の視線は、かなり冷淡なものなのではないかと想像している。


 記者会見で田沢の隣に座っていた監督の、大久保秀昭という名に記憶があったので調べてみると、確かに私が記憶していた通りの人物だった。
 アトランタ五輪代表を経て、27歳で近鉄入りした捕手だった。慶大主将として2連覇を経験、日本石油で社会人を代表する捕手となった。
 私が覚えていたのはそこまでだ。Wikipediaによると、プロ入り後は故障で外野に転向、レギュラーを獲得することもなく、通算22安打2本塁打、5年で引退している。梨田監督付き広報を経験後、04年には湘南シーレックスの打撃コーチ、そして06年からは古巣・新日本石油の監督に就任した。

 都市対抗に出場するクラスの強豪社会人チームでで、プロ経験を持つ指導者は珍しいのではないかと思う。選手として活躍はできなかったが、引退後も球団に残り、別の球団からも声がかかるということは、人柄や指導力に一定の評価(あるいは期待)があったのだろう。
 とすれば、田沢の一件については、大久保監督に対してプロ野球界の人脈から、さまざまなアプローチや説得があったであろうことが容易に想像できる。監督付広報をしていたのなら、梨田(現日本ハム監督)から「何とか田沢君を説得してくれよ」などと電話の一本もかかってきたら、苦しい思いをすることになったんじゃないだろうか(実際にそんなことがあったかどうかはもちろん知らないが)。

 にもかかわらず、大久保監督は、渡米するという田沢の意思を尊重し、「いろいろな圧力でご破算になることは避けたい。田沢は純粋な気持ちでいる。非難の声は僕が浴びればいい」と言い切っている。相当な覚悟が感じられる。と同時に、プロ野球界に対する厳しい感情も想像される。田沢だっておそらく、プロ野球で捕手経験をもつ監督に、じっくりと相談したに違いない。その結果、田沢は日本のプロ野球を選ばなかった。


 この一件ひとつで、NPBと社会人球界の関係性まで忖度するのは、想像力過剰かも知れないとはわかっている。
 だが、念願のプロ入りを延期してまでアトランタ五輪に賭けた経験のある大久保監督が、この夏の北京の試合を見たとしたら、自分たちが大切にしていたもの、長年積み上げてきたものに対する敬意の欠如に、深い失望を感じただろうなとは思う。そして、それもまた今回の決断の背景にあるかも知れないな、と。

 この一件がすべて決着し、ある程度の時間が経った頃に、大久保監督が胸のうちをじっくり語ったようなインタビューを読んでみたい。「野球小僧」あたりでやってくれないかな。


*
この点は事実誤認。98年にエンゼルスと読売ジャイアンツが争奪戦を繰り広げた上原浩治の場合、エンゼルスはジャイアンツを上回る契約金額を提示したと当時報道された(ただしマイナー契約で年俸は100万円程度、とも)。MLBでも90年代半ばから日本円にして数億の契約金で入団する選手が現れており、上位指名における高騰は10年前にすでに始まっていた。下位指名選手は今でも安い。

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コメント

>念願のプロ入りを延期してまでアトランタ五輪に賭けた経験のある大久保監督が、この夏の北京の試合を見たとしたら、自分たちが大切にしていたもの、長年積み上げてきたものに対する敬意の欠如に、深い失望を感じただろうなとは思う。

 今回の信念の揺るぎなさを支えているものは、まさにこれではないのかと思います。
 私は田沢を支持します。

投稿: Joe | 2008/09/12 17:43

ナベツネが引退(?)して後継は滝鼻卓雄という人だ、と聞いたとき、
なんとなく好ましい容貌だ、とじつは私は思ったのですが、
その後新聞で見かける滝鼻コメントってロクなのがないですね。今回のも
「田沢を持っていかれたら逆パールハーバーだ」とか、
「あっちが田沢を指名するならこっちはメジャー所属の日本人選手を総引き揚げだ」とか、
ナベツネでもそんなアホなことは言わんのじゃないでしょうか。

田沢は「なんで僕がNPBの論理に縛られなきゃならんのですか」ぐらい言えばいいと思いますが、そこまで言わない辺りがまた賢明そうに見えます。イチローでも福留でもいいから「なんで僕がNPBの指令で職場放棄するんですか(笑)」とか言ってみて欲しい。

投稿: nobio | 2008/09/12 21:56

ところで、
「日本プロ野球バッシングが始まるのか。」という
タイトルはどういう意味ですか。

投稿: nobio | 2008/09/12 22:02

>Joeさん
この件が問題なのは、あくまでNPBとMLBとの間のことです。田沢投手を縛るルールなど何もないのですから、堂々とアメリカに渡ればよいと思います。

一方、大久保監督は、ENEOSの他の選手のプロ入りに支障が出る、というような今後のことまで心配しなければならない立場ですが(実際、毎日新聞にはそのようなコメントも掲載されています)、それでも腹を括ったという覚悟がもろもろの発言からは感じられます。


>nobioさん
滝鼻オーナーは、長いインタビューやトーク番組などでの発言はしっかりしているという印象を持っていますが、この件について報じられてくる一言コメントはあまり感心しないものが多いですね。

>「日本プロ野球バッシングが始まるのか。」という
>タイトルはどういう意味ですか。

bashingではなくpassingです。
ビジネス書や経済ジャーナリズムの世界では、80年代に日米貿易摩擦が激化した頃、アメリカ人の日本叩きをJapan bashingと表現しましたが、その後、日本経済が落ち目になると、今度はアメリカ経済が日本を素通りして中国などに投資するような現象について、Japan pashingという言葉が使われるようになりました。「日本外し」「日本素通り」というような意味があります。

…というところからご推察ください。

投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/12 23:56

日本人選手のMLB入りがある度に「人材の流出だ」などと言われますね。なかには選手個人に向かって「日本球界のことを考えろ」とまで言うひともいます。

翻ってサッカーでは、一部そういう声も聞かれます(個別のチーム関係者や代表の強化を考えた場合。)が、概ね好意的に受けとられているようです。

同じようなプロスポーツなのに何が違うのか?
そこを考えると育成システムの違いに行き着くのかな、と思います。

サッカーではチーム力を強化するために、余所から集めるだけでなく、各チームがしっかり予算をかけて自前で選手を育てるシステムができています。
さらに各チームの育成システムから漏れた有望株はJFAがピックアップ。
プロが予算をかけてやるのですから育成法も日々進歩するでしょうし、スタッフ選手双方のモチベーションはかなり高いのではないでしょうか。

結果、有望な選手が抜けても次々に穴を埋める新しい有望な選手が生まれている。

野球は基本的に育成はアマチュア任せ。プロが育成年代の選手に真剣になるのは進路決定のときくらいじゃないかと想像します。いい選手が育ったら買いにいく。しかも育成の場はほとんどの場合は教育機関。一部では、本当に教育機関かと疑うような尋常じゃない力の注ぎ方をしているようですが、それでも全体からみればごく一部でしょう。
これでは育つものも育たないんじゃないでしょうか。

結果として、サッカーでは余裕を持って選手を送り出せる。
選手を育てられない野球ではそれができない。

以前鉄さんは大学とプロ2軍の育成力について書かれていましたが、プロはあまり育成に関心がないように感じます。

「行きたきゃ行ってこい、お前の代わりはすぐに出てくる」
乱暴な言い方ですが、それくらい言えるような育成システムを構築する方が選手の引き止め方法を考えるより有意義だと思います。

先のエントリではサッカー選手の育成法について問題提起されていましたが、野球は育成法云々以前の段階にあるのだと思います。

投稿: タム | 2008/09/13 17:19

従来は田澤クラスなら契約金が6億7億まで届いたでしょう。
私が知っている範囲だと那須野巧は5億5千万ですし、
山田秋親と川上憲伸は6億5千万でした。
それが今般は最高1億5千万まで減らされ、
しかも球団を自分の意思で選べなくなりました。

更に「裏金」は契約金の前渡しというか唾付け的な意味がありました。
関係者にも撒いて「しがらみ」で雁字搦めにしていたわけです。

そういう条件がなくなれば選手がメジャーに流れるのは当然です。
報酬もレベルも上ですから。
もし逸材を日本に縛っておきたいなら、
逆指名復活、契約金の自由化は必須です。

投稿: 党首 | 2008/09/14 06:55

>タムさん

>同じようなプロスポーツなのに何が違うのか?

サッカーは早い段階から国際組織と国際大会が整備された国際競技でした。日本サッカー協会は、日本で全国大会が始まったことを祝って(誤解でしたが)FA(イングランドのサッカー協会)から銀杯が贈られたことがきっかけで発足しています。最初から世界を意識せざるを得ない成り立ちだったわけです。そして、日本も、選手が国境を越えて移籍するのが普通のことである世界のサッカー界の一員である、ということを誰もが認識しています。

一方、野球は、USAから伝えられたことは誰でも知っているけれど、それとは無関係に学生スポーツとして発達し、学生の大会やリーグが権威ある存在となった後で、プロ野球は(アマ球界から蔑まれながら)スタートしました。国際組織も国際大会もなく(途中から生まれたけれども国内ではさほど権威を認められず)、国内で完結するスポーツとして独自の発達を遂げてきました。

選手の海外移籍に対する態度の違いは、根本的にはそこから来ているのだろうと思います。枠組みが変わったのだということに、日本の野球界はまだ適応できていないのでしょう。


>プロはあまり育成に関心がないように感じます。

これも、上記の歴史的背景から、学生野球界が10代の選手を囲い込んでプロには触らせないようにしている、ということだと思います。関心がないというより、禁じられている。統一組織が必要とされる所以です。

あとは、国際的にみた競技水準の高さの違いでしょうね。野球では世界最高水準のリーグの強豪チームで主力になれる選手がいるから高値で引き抜かれていく。サッカーでは、欧州に行きたい選手は多くても、欧州の強豪が高年俸で欲しがるほどの選手はほとんどいません。幸か不幸か、さほど心配する必要もないわけで。


>党首さん

>もし逸材を日本に縛っておきたいなら、
>逆指名復活、契約金の自由化は必須です。

…という話が、関係者のコメントにはあまり見られませんね。学生野球界のボスたちは、「これで逆指名復活となってはいかん」みたいなことを言ってますが。
そもそも高野連や学生野球連盟の幹部たちが、選手の直接渡米にネガティブな反応を示しているのも、理由がよくわかりません。自分たちの手に負えそうにない相手だからかもしれませんが(笑)。

いずれにしても、札束の張り合いをしたところで、NPBはMLBにかないません。逸材を日本に縛っておきたいなら、別の手だてを考えた方がいい。FA権の取得年限の短縮、みたいな話になるのでしょうか(きっとこの冬あたりに選手会が言い出すと思いますが(笑))。

投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/14 09:56

こんにちは

この流れはもう止められないでしょうね
日本球界(主にNPB)は現実を受け入れ、選手の出入りをスムーズにするべく改善していく方がいいのではないかと思います

MLBとNPB間しかり、NPB内しかり・・・
今はあまりにも縛りすぎです、FAも形骸化してるように感じますし
そもそも、何の為のFA制度だったのかと

投稿: 山口 | 2008/09/15 10:49

>山口さん

>この流れはもう止められないでしょうね

MLBで有望視される大学生選手を日本に強奪してくれば、MLBと対等な相互保護協定を結ぶことができるかも知れません。そんな酔狂な選手が見つかるかどうかはわかりませんが(笑)。

>今はあまりにも縛りすぎです、FAも形骸化してるように感じますし

FAが形骸化したのは、選手会は「取得までの期間が長すぎる」「補償が重すぎる」など、制度が不備なためだと主張していますが、現に存在している制度を利用しようとしない選手の側にも原因の一端はあります。
「FA残留」などという運用がまかり通っているのは変だと思いますよ。

投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/15 23:09

きょうのトーチュウにこの話題に関連して「有望アマを海外のプロチームが獲得した例は過去にもある。例えばチェン・ウェイン、例えば姜建銘」というような記事があって、なるほどそりゃそうだ、と思いました。

有望な選手が海外に行くのは当たり前、という認識が台湾球界の現状では普通だから、反発はなかったよ、というような大豊さんのコメントも載ってました。

投稿: nobio | 2008/09/25 22:00

>nobioさん
台湾では、自前のプロ野球がない頃から、郭泰源や郭源治のように海外で活躍する選手がいたわけですから、選手の海外行きに対して日本と感覚が異なるということはあるだろうと思います。
しかし、自国がやられて嫌なことを、制限するルールがないからといって他国に対してどんどんする、というのも、大人げないというか、あまり健全な発想ではないとも思います。

投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/26 04:58

幾つか気になったことを述べさせて頂きます。

>入団時の一時金は、文字通り日本がケタ違いに多かった

当時の報道では確か上原への提示は2億9000万円だったと記憶しています。日本側の目安、出来高込みで1億5000万円のほぼ倍です。
韓国の選手に対しては3億円。おそらく当時の韓国球界での生涯年俸を超えていたでしょう。

>NPBの然るべき地位にある人々が、社会人球界や学生球界の指導的立場にある人々に頭を下げて回る、というようなことが行われていたら、アマ球界からの直接流出は、少しは可能性を抑制することができたのかも知れない。

NPBの中の人だった野茂、伊良部、前田(憶えてます?)でも為す術がなかったことを思えば極めて期待薄のように私には思えます。
本人がその気で、MLBに受け入れる気があればルールがどうであれ止められはしないでしょう。

>だが、念願のプロ入りを延期してまでアトランタ五輪に賭けた経験のある大久保監督が、この夏の北京の試合を見たとしたら、自分たちが大切にしていたもの、長年積み上げてきたものに対する敬意の欠如に、深い失望を感じただろうなとは思う。そして、それもまた今回の決断の背景にあるかも知れないな、と。

ここでの「敬意の欠如」が具体的にどういうことを指しているのか今ひとつ判らないのですが、NPBの支援態勢が万全でなかった点でいえばアマ側に批判する資格が果たしてあったのかどうか私には疑問です。

プロ解禁、バットが金属から木製に変わったシドニー五輪の前の社会人の大会をBSで見た記憶がありますが(BSとはいえテレビ中継されていたことからすれば都市対抗かそれに準ずる大会でしょう)、オリンピック直近の大会にも関わらず金属バットを使用していました。
アマだって別にオリンピックを最優先なんかしていたわけではなく、国内大会の方を優先していたわけです。
金属と木製バットの違いが、使用球やストライクゾーンどころではなく野球の質を変えてしまうことを思えば、当時の社会人のオリンピックへの取り組みは、北京に臨むNPBよりマシだったとは思えません。

ついでに述べさせてもらえば、ここでの星野監督への評価は少々甘すぎるように私には思えます。
岩瀬への過度な執着が無かっただけでも、結果が全く一変していた可能性は充分にあったと思います。
準決勝でのGG佐藤のあの落球にしても、まだ諦めてないとの決意を示すために上原を投入すべき場面で、涌井を投入した監督の責任が大きいと思いますよ。
あの采配はベンチが白旗を掲げたも同然です。ベンチが諦めたのに、選手だけが戦えるはずがありません。
星野氏には、「あそこは上原で行くべきだった。ベンチの弱気が選手を動揺させた。自分のミスだ」くらい言ってあげて欲しかったと私は思っています。
それ以外にも、元エースと元四番だけで、内野守備を仕切れるコーチが一人もいないとか、監督次第でどうにかできる部分での失敗が多すぎでしょう。まあ、すべては今更ですが。

>いずれにしても、札束の張り合いをしたところで、NPBはMLBにかないません。

かつて日本が経済でアメリカを抜いたと思われた時代がありました。まあ、勘違いでしたが。
あの時、サッカーでなくプロ野球に投資していたら、日米の関係が逆転していた可能性は(少なくとも一時的には)結構あったと思います。
一球団当たりの経済規模でいえば今でも大差ないはずです。マリナーズの筆頭オーナーは日本人のはず。

10年前ではなく、20年前ならどうにかなっていたかも知れません。

投稿: 竹理 | 2008/09/28 19:45

>竹理さん

>当時の報道では確か上原への提示は2億9000万円だったと記憶しています。日本側の目安、出来高込みで1億5000万円のほぼ倍です。

当時の報道を確認してみたところ、例えば日刊スポーツ(1998年11月2日付)によれば、エンゼルスの本多達也国際部長は<「大リーグのドラフト1位かそれ以上の条件は提示しました」>と話しています。具体的な金額は公表しなかったようですが、日刊では<米国の新人トップクラスの契約金の相場は200万から250万ドル>とした上で、<250万ドル(約2億8750万円)を提示した>と書いています(ただし<メジャー契約はせず、マイナー契約を提示。来季は1Aもしくは2Aでスタートさせ、初年度の年俸は1万ドル(約115万円)>とも)。
また、同じ記事の中でMLBの契約金状況について<数年前まで新人選手との契約金が100万ドルを超えることは少なかったが、1996年にデビルレイズが自由競争となったマット・ホワイトを1020万ドル(当時のレートで約11億2200万円)で獲得したころから一気に高騰した>とあります。
ですから上位指名選手については、上原の頃、すでに日本より高い金額につり上がっていたようで、この点は私の思い違いでした。ご指摘ありがとうございます。

一方、2002年にMLBのドラフトでロッキーズに24巡目で指名されて入団した坂本充という外野手(アリゾナウエスタン短大卒)は<サイニングボーナス(契約金)が7500ドル(約93万7400円)、給料は(月)850ドル(約10万6250円)>と話しています(2002年6月27日付日刊スポーツ)。
つまり、「ドラフト1巡目相当の評価を得られればMLBの方が契約金が高いが、中位以下なら日本の方が高い」というのが正確な現状のようです。初年度年俸については、いきなりメジャー契約できれば別ですが(それはアメリカの選手でも例外的だと思いますが)、そうでなければ今も日本の方が高いと思われます。


>ここでの「敬意の欠如」が具体的にどういうことを指しているのか今ひとつ判らないのですが、

もし興味がおありでしたら、今年8月24日のエントリ「禁句。」をお読みいただけると幸いです。


>ついでに述べさせてもらえば、ここでの星野監督への評価は少々甘すぎるように私には思えます。

そうですか。
ま、星野采配への批判はネット上にもマスメディア上にも溢れ返ってますから、その上ここで何かを付け加えたいとも思いません。もともと、個別の采配の是非を云々するようなことをこのblog上でやるつもりはあまりないので。

投稿: 念仏の鉄 | 2008/10/02 08:01

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