サッカー界はなぜ鈴木桂治を見逃したのか。
もうかなり旧聞に属する話になってしまったが、北京五輪後の反町康治・サッカー日本代表監督の総括で気になる発言があった。
<「フィジカルの強さがあれば日本のサッカーは完成に近づくと思う」>
よい機会なので、以前から思っていたことを書いておく。
日本人はフィジカルが弱いとか体格が足りないとか、サッカーの世界では、もう昔々から聞き飽きるくらい聞かされた言説なのだが、私は疑わしく思っている。
だって、日本は柔道強いじゃないですか。
最近はいくらか弱くなってきたけれど、それでも大抵の階級でメダルをとっている。決して弱いとは言えない。
柔道は日本が発祥国だから強くて当然かも知れない。が、とりたててアドバンテージがあるとは思えないレスリングだって、伝統的に結構強い。北京でも、女子だけでなく男子もメダルをとっている。
フィジカルコンタクトそのものである格闘技で、日本代表は世界のトップクラスに居続けているのだ。
そんな国がどうして「フィジカルが弱い」と言えるのだろう。
だから、サッカー界の人が「日本はフィジカルが弱い」というのは、実は単に「日本のサッカー選手はフィジカルが弱い」ということを言ってるのだと読み替えた方がよい。
ところで、鈴木桂治という柔道家がいる。
北京五輪に選手団主将として臨んだが一回戦負け、引退も示唆しているようで、もはや選手としては過去の人かも知れない。が、4年前のアテネでは100キロ超級で金メダル。世界選手権も無差別級と100キロ級を制した。2000年代前半を代表する名選手であったことは間違いない。
足技が巧みなことが、柔道家としての特長のひとつだ。そして、その足の動きは、少年時代に熱中していたサッカーで養われたと言われている。
<柔道家・鈴木桂治。一流の選手でも容易に逃れることが出来ない彼の足技は、ミリ単位の正確さでコントロールできる足の使い方に秘密がある。イメージ通り、精密に足をさばき、相手の動きを制して一本を取るこの技術は、幼い頃に彼が熱中していたスポーツの中で育まれた。
サッカーである。
自由自在に動きながら、ボールを正確にコントロールする足の使い方を、子ども時代、鈴木桂治は徹底して身に付けたのである。>(BS-i 超・人)
その小学生の頃、鈴木は柔道をやめる、と言い出したことがあるという。
<それは、柔道の試合で負けた悔しさとサッカーへの情熱が重なったからだった。その際、道場の先生や両親は熱心に説得した。約2カ月悩んだ末に、鈴木は畳に戻ってきた。>(三省堂スポーツ・ジャスト08年7月号)
柔道界にとっては、少年期のサッカー経験が役に立って良かったね、柔道に戻ってきてくれて良かったね、ということで完結するエピソードだ。だが、サッカー界にとってはどうだろう。
現在28歳の鈴木は、身長184センチ、体重100キロ前後の威丈夫だ。
彼がもしサッカー選手となって、日本代表のゴール前に立ちふさがっていたら、少なくとも世界のどんなサッカー選手と対峙しても、フィジカルコンタクトで劣勢にたつことは、まずないのではないか。柔道では引退を考える時期かも知れないが、サッカー選手としては次の次のワールドカップくらいまでは狙える年齢だ。ひょっとするとサッカー界は、手中にあった逸材をみすみす逃してしまったのかもしれない。
引用した記事は柔道家・鈴木の伝記だから、少年時代の彼がサッカー選手としてどうだったかについては触れられていない。どんなクラブで、どんな指導者の下でプレーしていたのかもわからない。
ただし、<6年時ですでに身長1メートル65、体重60キロ。50メートル走は6秒5の快足だった。>というこの情報が正しいのなら、少年時代にすでに、フィジカルコンタクトに強い選手に育つことが期待できただろうと思われる。
では、鈴木を指導していたコーチたちは、鈴木に柔道を断念させ、サッカーの世界に引き込むことに、どれほどの熱意をもっていただろうか。
もちろん、結果論だけで当時の指導者を批判する気などない(そもそも鈴木がサッカーで大成したかどうかなど誰にも判らないのだし、鈴木だって、よく考えたらやっぱり柔道の方が好きだった、ということなのかも知れないし)。
ただし、長じて柔道選手として大成した鈴木が実はサッカー経験者だったと知った時(知らないかもしらんけど)、JFAで選手の育成に取り組む責任者たちは、逸材を逃したと悔しがり、第2、第3の鈴木桂治に柔道でなくサッカーを選んでもらうためにはどうしたらいいか、を真剣に考えただろうか。問題はそっちの方だと思っている。
要するに私は、「日本のサッカー選手がフィジカルに弱い」理由は、単にサッカー界がフィジカルに強い選手を大事にしないからではないのか、と疑っている。ドリブルやパスの巧いテクニシャンばかりに注目して、大きくてごつくてテクニックを身につけるスピードの遅い少年たちを軽んじている、ということではないのだろうか。その結果、サッカーをやめて去ってしまう少年もいるのではないか。
日本を代表するセンターバックである中澤佑二は、プロ入りするまで、あらゆる世代の代表と無縁に過ごしてきた。フロンターレの寺田や(今は札幌にいる)箕輪も、代表と名のつくものはユニバーシアードが最初だったはず。最近の代表の「屈強なディフェンダー」たちは、JFAの若年層育成担当者たちの目にとまらなかったことになる。中学・高校時代から全国的に知られていた攻撃のスターたちとは対照的だ。
だとしたら、そこが変わらない限り、百年経っても日本のサッカーはフィジカルが強くなんかならない。
JFA幹部は、嘆いている暇があったら、フィジカルが強くなりそうな若年層を集めて鍛えてみたり、柔道やレスリング、あるいはラグビー界の指導者にフィジカルコンタクトを鍛える方法を聞きに行ってみたらいいんじゃないだろうか(すでにやってたらすみません)。
※コメントその他に関する感想等を<サッカー界はなぜ鈴木桂治を見逃したのか/追記。>にまとめました。合わせてお読みいただけると幸甚。
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コメント
無差別級しかなかったら、柔道は日本がここまで優位に立てたんだろうかと。格闘技全般にいえることだけど、日本人は「体格」では負けるといえるんじゃないだろうか。
と、本筋じゃないところへ突っ込み。
まぁ、スペインやメキシコやアルゼンチンを見てわかるように、
「体格」が弱いから負けるわけではありませんけど。
「フィジカル」については、日本人選手は弱いですね。スペインやメキシコやアルゼンチンよりも。
投稿: | 2008/09/03 20:02
これは、すばらしい着眼です。
サッカー選手は、オフシーズンに柔道の練習をすればいいと思います。
柔道の鈴木選手は確か、モンゴルの選手に負けたんですよね。
足技に自身があったということは、重心も高い。タックルされると身体が浮いてしまいます。柔道は浮いた時点で本来、死に体で負けだし、一本技につながる。
国際柔道だと、この身体が浮く状態がわからないか、重心を落としてしまう。
話がそれました。
ブラジルのサッカー選手にしても、イギリスの選手にしても、喧嘩、ストリートファイトをしても、相当強そうですよね。日本の場合、学校では喧嘩は禁止が徹底されているし、そういう分、強くはなりそうもありません。だから、柔道や他の格闘技や剣道の練習をずっとしつづけるといいのだと思います。
投稿: 石川 | 2008/09/03 20:27
う~ん。どうなんでしょうか。
鈴木桂治の話は初耳でしたが、これはサッカーサイドから見てもとてもよい話だと思います。サッカーは巧緻性を高めたり、「走る」行為を比較的苦もなくせざるを得ないので、(将来どの競技に進むにせよ)小学生にはよい競技だと思っています。
結果的に、あのレベルの選手になったのですから、柔道に進んだのは大正解だと思います(もちろん、サッカーをやってくれていれば、それはそれで大選手になったかもしれませんが)。小学生の時の彼のサッカー指導者は、心底柔道家としての成功を喜んでいると思いますよ。
またJFAにせよ、各クラブにせよ、大型選手の育成、発掘も相当努力しています。むしろ、「体格だけで選手を選んでいるのではないか」との議論は結構多いです。難しいのは、小学校卒業時に165cmあった子どもが、何cmになるかですよね。今の代表クラスの選手の多くは175cmくらいある訳ですが、日本人の平均身長を考えると、「でかい子ども」を集めているのは間違いありません。ついでにどのJクラブも、応募してきた子どもの両親の身長を調べます。
ただ、中澤をどうして見つけられなかったのかは問題なのですが、逆にあれだけ大柄な選手だからこそ、後天的な努力で足技や判断力がついてきて、代表クラスに入れたと言う見方もできるような気もします。逆に中澤のような選手が出てくる多様性は、今のサッカー界の強みだと思うのですが。
反町やジーコの「フィジカル云々」は、ただの言い訳ですから、無視すればいいと思います。特に今回の五輪代表は、過去になくフィジカルでナイジェリアやオランダに負けてませんでしたし。
投稿: 武藤 | 2008/09/03 22:28
柔道にしてもレスリングにしても「重心を崩す」などの行為があるので「フィジカル」だけの問題ではないとは思いますが^^;とりあえずガチンコのドツキ合いには弱いって事でしょう。
実際大相撲でも横綱に日本人いませんし。
とりあえず岡田さんはFWに「張るタイプ」をあまり使わないですよね。個人的にはそんな選手は必要とおもうのですが・・・・。マッキーや高原、久保(もう懐かしいっすねw)なんかは通用してたとおもいますし。ただそれも「フィジカル」というより「ボディバ」の問題なのかなぁ・・・、ておもいます。
少なくとも岡田流の「スピードを活かす」だけでは勝てないでしょうね。
投稿: 一介の論客・KTY | 2008/09/03 22:40
>石川さん
相手の着衣を掴み合う柔道がふさわしいかどうかはわかりませんが、サッカーにおける接触プレーに役に立つような競技がないのかな、とは思いますね。まあサッカーでも片手で相手のユニホームを掴むくらいはできるから、柔道を応用する余地もあるかも。
>武藤さん
やっぱり素人が思いつくようなことは既に実行されているわけですね。
>サッカーは巧緻性を高めたり、「走る」行為を比較的苦もなくせざるを得ないので、(将来どの競技に進むにせよ)小学生にはよい競技だと思っています。
上にも書きましたが、ではサッカーに役に立つ競技はないものだろうか、と思うわけです。
>小学校卒業時に165cmあった子どもが、何cmになるかですよね。今の代表クラスの選手の多くは175cmくらいある訳ですが、日本人の平均身長を考えると、「でかい子ども」を集めているのは間違いありません。
確かに、小学生くらいの頃は成育が早くて体格で押していけた子が、長じるにつれて通用しなくなっていく、という話は聞いたことがあります。中澤の例で考えても、むしろ10代後半くらいの、体は成長したけれど技術は不十分、という青年をどう育てるか、という方向で考えた方がよいのかも知れませんね。
ただ、サッカー選手は、私たちのような非スポーツ選手も含めた平均身長よりは大きいかも知れませんが、例えばプロ野球選手に比べると明らかに小柄で華奢です。大きくて俊敏な選手が他の競技には結構いるのに、結果としてサッカー界にあまり来ていないのはなぜだろう、そういう選手を増やすにはどうしたらよいのだろう、というのが本稿の趣旨のつもりです。
>特に今回の五輪代表は、過去になくフィジカルでナイジェリアやオランダに負けてませんでしたし。
鈴木桂治選手も含めて、私が例にひいた選手たちは30歳前後ですから、若い世代ではご指摘のような取り組みの成果が出始めている、とも考えられますね。だとすればよいのですが。
>一介の論客・KTYさん
>柔道にしてもレスリングにしても「重心を崩す」などの行為があるので「フィジカル」だけの問題ではないとは思いますが
「フィジカル」とは何か、という分析や定義については、あえて触れていません。以前は「身体能力」という言葉が同じように使われていましたが、はっきりいって曖昧ですよね(笑)。思考停止ツールとして便利に使われかねない、取り扱い注意を要する言葉だと思います。
投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/04 07:43
オリンピックの柔道、レスリングでメダルが獲れているから日本人もフィジカルで負けていない、ということですが果たしてそうでしょうか?
単純に身体能力で勝負する陸上短距離などは、北京で幸運な事故が重なったリレーは別として、決勝にさえ進んだことがないんじゃないでしょうか。
柔道もレスリングも相手のある競技です。ここで日本人が強いのはその競技を熟知しているからではないかと思います。
こう来たらこう返す、こういうときはこう攻める。そういう方法をしっかり体で覚えているから強いのではないかと思います。競技に適した体の使い方が分かっている、と言う方が正しいかもしれません。
話が逸れますが、それも伝統のなかに含まれるのかもしれません。柔道からJUDOへと競技が変われば、柔道の伝統は通用しなくなるのでしょうね。
戻ります。
サッカーに関しては、まだ指導者も選手もそこまでこの競技を理解していないのだと思います。
イタリアに渡った中田選手は、数年後にはセリエでもっとも身体の強い選手と評価されるようになりました。
彼は決してサッカー選手として長身ではありませんし、日本にいたときの彼は身体能力を売りにした選手ではなかったと記憶しています。
いい指導者なり環境なりが必要ですが、しっかりと体の使い方を学ぶことができればフィジカルの問題は解決できるんじゃないでしょうか。
サッカーに必要なフィジカルとは身体検査の数値ではないと考えます。記憶違いでなければ、神様ジーコは06年の大会後、敗因はサイズと筋力の問題と言い放ちましたが。
あと、日本サッカー界も選手の大型化にはわりと注意していたと思います。中村俊輔選手が中学から高校への進学時に身長の低さを理由に、マリノスユースをクビにされています。当時も技術レベルは抜きん出ていたそうです。
投稿: タム | 2008/09/04 18:35
>タムさん
>しっかりと体の使い方を学ぶことができればフィジカルの問題は解決できるんじゃないでしょうか。
そういう見地に立った時、サッカーのフィジカルコンタクトに役立つトレーニング法やノウハウが、他の競技にないものかと思います。
欧州に行かないと身に付かない、というような意見も聞きますが、それは単に「国内のサッカー界だけでは身に付かない」ということかも知れません。中田英寿は日本にいる時からめったなことでは倒れない選手でしたが。
投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/04 22:18
柔道やレスリングが強いんだから日本人のフィジカルが弱いというのは迷信(あるいは言い訳)じゃないか、というのも、イヤ、陸上短距離なんか見ればやっぱりそれは違うだろう、というのも、中村俊輔なんかチビが理由でクビになったことがあるという指摘も、いずれも勉強になりました。なにより『サッカー界はなぜ鈴木桂治を見逃したのか。』というタイトルが素晴らしい。
ちょっと関係あると思うのは「日本人離れ」という言葉ですね。年長者を敬うとか困ってる人を助けるとかの伝統的価値観が欠けてる者を指して「あんなの○○人じゃない」というような言い方は、たぶん世界中にある(例えば韓国にはあるそうです)と思うのですが、堂々とした人を指して「○○人離れしてる」という褒め言葉って、世界中探してもあまり存在しないんじゃないでしょうか。例えば韓国にはないんだそうです。鉄さんが『日本人離れとは』みたいなタイトルで中公新書とかで一冊出してくだされば、私は間違いなく買います。
投稿: nobio | 2008/09/04 22:24
フィジカルに強い選手を大事にしていないのではなく、日本人の体の成長過程に見合ったフィジカルトレーニングが確立されていないのが問題ではないかと思います。
だいたい子供の頃はガタイが良くても、成長期で身長や体つきが一気に伸びる人もいれば、止まってしまう人もいるわけで、成長期によってどうなるかわからない身長やガタイの話をするよりは、日本人の体に合う段階的なフィジカルトレーニングをいかに確立していくかが先。
日本サッカーの育成年代にフィジカルの専門家ってほとんどいないですから。
投稿: え~と | 2008/09/04 22:55
「フィジカル」=「身体能力」曖昧ですが合っていると思います。
あえて他の言葉で例えるなら「頭いい」とか。
これも漠然としてますよね?細かい内容で「国語ができる」とか「数学が得意」とかなるのであって一括りで「頭いい」っていいますよね?そんな意味でたとえば「バネが無い」とかピンポイントで言わずに「フィジカル」で誤魔化してる気はします。
ややこしい言い方ですが、「日本人はフィジカルに弱い」が各選手個々に「弱いフィジカル」が違うのではないのかな?と(分かり難いっすねwすいません)おもったりもします。
そんな中で記憶にあるのは柳沢敦ですね。
彼はそう体格に恵まれてもいないし、スピードスターでもない。抜群のテクニシャンとも言えなかったかもしれない(酷い言い様だなw)。
でもポストも上手かったですよね?張ることも、流れることもできた万能FW。体格と「フィジカル」に恵まれた久保よりも日本人の「スタンダード」としてのモデルケースどしてどうでしょう?
投稿: 一介の論客・KTY | 2008/09/04 22:57
サッカー批評35号に、『Jリーグ・アカデミー フィジカルプロジェクトの取り組み』という記事があります。そこでは、
・今までは体力に関するデータの蓄積がないこと
・そのため、実施しているトレーニングから最適な効果が得られているか判断する基礎データがほとんどないこと
・海外のリーグや日本代表として活躍している日本人選手の育成年代期のデータは皆無に等しく、次世代の選手育成をサポートしていくための客観的情報は残されていないこと
・そのため、Jリーグアカデミーでは、体力強化に向けてフィジカルプロジェクトを立ち上げ、発育発達を考慮したトレーニングを展開する環境を整備していく基礎的資料の収集を目的に、2004年度から2016年度まで、Jリーグ・アカデミーに所属する選手の体力に関する縦断的測定を開始したこと
が書かれています
国を挙げての統一されたフィジカルの育成というのにはまだ時間がかかるみたいです(引用の仕方が下手ですみません。問題があるようなら消して下さい)
投稿: ハーネス | 2008/09/04 23:33
>タムさん
書き忘れてましたが、
>単純に身体能力で勝負する陸上短距離などは、北京で幸運な事故が重なったリレーは別として、決勝にさえ進んだことがないんじゃないでしょうか。
黒人以外とは、そこそこいい勝負できてるんじゃないでしょうか。
>nobioさん
>なにより『サッカー界はなぜ鈴木桂治を見逃したのか。』というタイトルが素晴らしい。
ありがとうございます。ちょっとキャッチーなタイトルを付けてみたいという誘惑に抗し切れませんでした。おかげで大勢の人に読んでいただけて、某所では「鈴木を逸材とかいってる時点でおかしい」と阿呆扱いもされているようですが、ま、自業自得ですね。
>堂々とした人を指して「○○人離れしてる」という褒め言葉って、世界中探してもあまり存在しないんじゃないでしょうか。
なるほど。いつごろからある表現なんでしょうね。やはり明治以来の西洋コンプレックスの発露なんだろうか。本一冊分になるまで考え抜くのはなかなか大変そうですが(笑)。
>え〜とさん
お説自体はごもっともだと思いますが、扱いにくいから体格は後回し、ということでよいのでしょうか。二者択一という性質のことでもないですし、たとえばプロ入り時の中澤のように、すでに大きくなった若者をサッカー選手としてどう育てるか、ということも研究した方がいいんじゃないかと思います。
>一介の論客・KTYさん
>ややこしい言い方ですが、「日本人はフィジカルに弱い」が各選手個々に「弱いフィジカル」が違うのではないのかな?と(分かり難いっすねwすいません)おもったりもします。
そこをきちんと切り分けないと、結局は有効な対策を打つことができないだろうとは思います。
あと、柳沢はJ1の現役選手なんですから過去形で語らないでください(笑)。
>ハーネスさん
ありがとうございます。あわてて「サッカー批評」を取り出して読み返しました。毎号読んでるのに忘れていたとは。フィジカルを軽視してるのは私の方か。
JFAの取り組みは途についたばかり、ということのようですね。ただ、ここでいうフィジカルは各種の運動能力のことで、フィジカルコンタクトの技術まで射程に入っているわけではなさそうです。
投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/05 00:41
>扱いにくいから体格は後回し、ということでよいのでしょうか。
というよりは小学生くらいのときに体格がよく運動能力のある選手も成長期が過ぎればどうなるかわからない、予測がつかないってことです。
一方で成長期をある程度過ぎて、最終的に身長や体格がどのくらいになるか予測がつくくらいの年代で、大型選手をいかに育てるかというところですが、この年代になると純粋に選手間の競争になるので、でかくて速くて巧い選手はいいが、大型だけどスキル不十分の選手を優先的に強化なんて出来ないと思われます。(なんであいつが特別扱いされるのかと選手間で不平が出てチームに混乱を招く)
中澤の話なんですが、中澤は高校2年くらいまでは、埼玉でもベスト16程度の高校でも控えで、スキルも不十分な選手だったようです。
しかし、彼が日本代表まで上り詰めたのは、絶対プロになることを諦めなかったメンタリティの強さが後に大きな成長を促し、スキルの差を埋めたのではないかと思います。
こういうメンタリティが果たして教えて身につくものなのかどうかというところですね。
スキル不十分の選手を育てるには、なにより本人のメンタリティの強さがないと、とてもプロまでたどり着けません。
一つ思うのは育成年代でも選手のチーム間移動の流動性があって、控えでくすぶっている大型選手が、試合に出られる環境に移籍出来るようになれば少しはいいのかなと思います。(登録制度の関係で日本の育成年代はこういう流動性がなさすぎて、試合経験を積めない控え選手を大量に抱えすぎていると思います。)
フィジカルコンタクトの技術というところですが、日本人選手は総じて重心が高く、バランスが悪いという感じがしますね。
日本の育成年代では、このへんの技術体系が十分に研究されておらず、指導も行き届いていないのではないかと思います。
投稿: え~と | 2008/09/05 02:45
>え〜とさん
ありがとうございます。実際の現場のことは知らずに書いてますので、勉強になります。
>この年代になると純粋に選手間の競争になるので、でかくて速くて巧い選手はいいが、大型だけどスキル不十分の選手を優先的に強化なんて出来ないと思われます。(なんであいつが特別扱いされるのかと選手間で不平が出てチームに混乱を招く)
このへんの事情は、強化の主体が学校に委ねられていることが根本的な原因とも言えそうですね。クラブでならできるのでは? プロ野球の二軍では、指導層がこれと見込んだ選手は、二軍での成績とは無関係に重点指導するということはあるようです。
>こういうメンタリティが果たして教えて身につくものなのかどうかというところですね。
これはどちらも仮定の話になるのであまり深入りしても仕方のないところですが、「では、中澤になれなかった選手(体格がよくて大成しなかった選手)は、全員メンタリティが弱かったのが原因なのですか」という反問が可能です。指導する側がそういう選手を育て切れなかった、という面はないのでしょうか。
>一つ思うのは育成年代でも選手のチーム間移動の流動性があって、控えでくすぶっている大型選手が、試合に出られる環境に移籍出来るようになれば少しはいいのかなと思います。(登録制度の関係で日本の育成年代はこういう流動性がなさすぎて、試合経験を積めない控え選手を大量に抱えすぎていると思います。)
この点はわりと具体的な対策に結びつきやすい話ですね。
エントリ本文中では充分に触れていませんが、さらにいえば「競技間移動の流動性」も高めるような学校体育やクラブのあり方が求められる時期かなと思います。
プロ野球千葉ロッテの唐川投手は、千葉県の成田高時代に、一時期、陸上部に預けられていたことがあるそうです(走り方のバランスを直す、というようなトレーニングをしたようです)。こういう点は、たいていの種目が揃っている学校の方が優位な条件が揃っています(実際にできるかどうかは指導者間の人間関係によるのでしょうが)。
Jリーグクラブも他競技のチームを抱えるところが出てきましたから、ユニホームをお揃いにするだけでなく、指導や練習で相乗効果が出てくるといいなと思っています。
誤解を招きやすいタイトルをつけたせいもあって、「鈴木にサッカーさせても役に立つわけないだろ」みたいな反応もネット上では見られるのですが、根本的には「体が大きく丈夫でフィジカルコンタクトに強いサッカー選手が日本には不足しているが、そこを補うにはどうしたらよいのか」というのが本エントリのテーマのつもりです。
「大きい選手をサッカー界に招く」というのも、「体格を問わず身体能力およびフィジカルコンタクトを鍛える指導技術を充実させる」というのも、それぞれ正解だと思っています。
あと、ついでに書いておくと(え〜とさんのご意見ではありませんが)、「格闘技は階級制があるから日本人でもやれる」という批判が結構あるようですが、それは「体重(体格)が上の奴にはかなわないはず」という前提に立った見解です。とすれば「サッカーでもでかい奴を持ってくれば対抗できる」ということに帰結するんじゃないかと思います。
投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/05 09:48
あホントだw京都でがんばってますね、まだ。
というより「全盛期の」と書き忘れてましたw
最近彼の活躍を目にしないため、最近もそのクオリティがあるかはわからないので。
ヤナギは好きですよ^^
投稿: 一介の論客・KTY | 2008/09/06 01:36
柳沢は京都に移籍後、点も取ってるし
2000年前後と同じくらいの絶好調なのですが…
と彼の話はともかく、面白い視点でした。
他の方も仰るようにいつ体格がよくなるか、というのもあるんですよね。成長止まることも多々あるし。
その点で言えばテク重視で選ぶのもおかしくない。
かと言って身長なども基準に入れると中村のようにクビにされる事もある。
だから選手の力を見抜くコーチ、監督が必要!となる。
そうすると見抜けるコーチや監督を育てる為には…とw
結局は日本の指導者の底上げが必要なんでしょうね。
投稿: 刈り上げ坊主 | 2008/09/20 15:29
> 刈り上げ坊主さん
中村俊輔がマリノスを首になったという話が広まってますが、
実際は「レギュラーは難しい」という言い方だったようです。
「合格」と「不合格」の線引きは曖昧で、
お願いしても上がってもらう人と、
「上がりたければどうぞ」という人と、
「上げられません」という人がいるようです。
俊輔の場合は「上がりたければどうぞ」に該当するはずです。
中村俊輔の技術は誰もが認めていたし、
兄は180cmある甲子園球児ですから、
「弟も背が伸びそうだな」という見通しはあったようです。
ただし俊輔のプライドは当時も今と同じで
コーチの言葉を「不合格」と受け取り
「高校で成長してやる」と切り替えたようです。
神奈川の高校サッカーは「マリノスで上がれなかった」選手ばかりです。
でも高校に入るとそれぞれ中心選手扱いされます。
試合に出られるからマリノスに残った選手よりも伸びる場合が多いです。
プロになった選手もザラです。
残った選手も出た選手も大した差があるわけじゃないんです。
投稿: 党首 | 2008/09/22 11:26
>刈り上げ坊主さん
海外出張中でレスが遅れました。失礼しました。
このエントリを書いた後で、先週のサッカーダイジェストが国内外の育成特集を組んだのでびっくりしましたが、国内については、若年層を育てられる指導者が質量ともに不足している、という論調だったように感じました。
野球でもそうですが、長年の経験と実績があるだけに、優れた高校の指導者に一日の長があるように感じます。
>党首さん
詳しい解説をありがとうございます。
クラブと高校という複線の育成システムがあって、相互に行き来できるということ自体は、日本のサッカーのよい面のように思います。それぞれ良さがあるのだから(弱みもありますが)、相互補完的に機能していけばよいということですね。
投稿: 念仏の鉄 | 2008/09/23 14:40
桂治にこそサッカーなんて身体能力の低い競技をやらせるべきじゃないけどな
投稿: アルギニン | 2013/06/22 17:36