まだそんなこと言ってるんですか、中日の偉いさんたちは。
下のエントリ<またですか。>の続き。
本日発売の週刊文春、週刊新潮がそれぞれこの件を取り上げて、中日球団幹部の談話を載せている。
週刊文春2008.12.4号は白井文吾オーナーに直撃取材して、見開き2ページのインタビュー記事。一部を紹介する。
<そもそもWBC(アジア予選)は読売がやってる。五輪やサッカーのW杯とは違う。アメリカの選手会が会社を作って、メジャーの野球機構も加わって、日本の読売新聞にも話が来て、『金儲けしよう』というのがWBCの発端。だから私は以前、お宅(小誌)に監督について聞かれたときも、主催者の読売グループの巨人から選べばいいって言ったんだ。
それにみんな『出ると名誉』だと思ってる。そこが違う。名誉じゃない。よその国だって一流選手が出てくるとは限らないし、そんなのに勝ったってちっとも名誉じゃないよ。夢中なのは日本だけ。>(P.147)
これに対する論評は前のエントリに書いているので割愛。ここまで注文通りの談話がオーナーの名の下に恥ずかしげもなく出てくるとは予想外だった。「匿名の声」とか書いてた私は甘かったと反省している。
あと覚えている人も少ないと思うから念のため書いておくが(私も前のエントリ書いた時は忘れてました。すみません)、中日新聞社が主催して90年代に3回実施された日韓プロ野球スーパーゲームの日本選抜チームには、読売ジャイアンツの選手も参加していた。もし将来あれを再開するつもりがあるのなら(中日新聞の主催かどうかは知らないが2007年秋に日韓野球が行われる計画はあった)、白井オーナーは、他の11球団すべての幹部から「あれは中日さんの金儲けでしょ」と言われて選手の派遣を断られる覚悟をしておいた方がよいと思う。
一方、週刊新潮2008.12.4号は、西川順之助球団社長のこんな談話を載せている。
<これからの時期、選手は来季に向けてのリハビリをしなければいけない。万が一、WBCで何かが起きても何も保証してもらえないし、球団としても、働いてもらわないと年俸も出せない事情もあるからね>(P.57)
記事ではこの談話について<そうプレッシャーをかけられたら、選手は出場するとはいえないだろう。>と論評している。同感だ。オーナーも球団社長も監督もWBCに関してはやる気がないということはよくわかった。
西川社長の考え方に対する批判は、前のエントリにもリンクした、3年前の第1回大会前のエントリ<王監督まで見殺しにするのか。>のコメント欄でさんざん書いたが、そこでは断片的な議論が長々と続くので、読んでくださいとも言いづらい。改めて私の考えを整理しておく。
……試合中のケガやシーズンへの悪影響が怖いからWBCを辞退する(あるいは球団が選手を出さない)というのは、リスク回避を最優先とした考え方だ。
もしも日本のプロ野球が大繁栄していて、試合はいつも満員、テレビ視聴率は常に20%超え、選手にいくら年俸を払っても球団は儲かって仕方がない…という状況ならそれでいい。
しかし現実は違う。経営に苦しむ球団が多く、球団数を削減しようかという暴挙が実行寸前までいくほどの危機的状況がほんの数年前にあり、今もV字回復を遂げたとは到底言えない。何かを変えることが必要だ。
ほとんどのスポーツ競技において、日本で最も人気のある試合は国際大会である。その欠落は野球の弱みだった。とりわけサッカーが隆盛になってからは、その欠落感が観客に強く意識されるようになった)。
WBCは、その欠落を補う絶好の機会である。変えるべき「何か」に相応しい。
野球が五輪競技から失われた今、ファンの注目を集め“世界と戦う”というイメージを形成できる、ほぼ唯一の機会といえる。
<よその国だって一流選手が出てくるとは限らない>などということは、現時点ではまったく問題ではない。この大会で勝ちさえすれば、日本は公然と「世界一」を名乗れる。そして大会がアメリカ本土で開催される以上、そこで負けることはMLBにとって大きなプレッシャーになるのだから、彼らもいずれは本気にならざるを得ない。白井オーナーがさかんに引き合いに出す(週刊新潮でも言っている)サッカーのワールドカップも、第1回大会の参加国はわずか13。権威などなかった。続けているうちに権威ある大会に育ったのだ。
日本が本気で勝ちに行き、この大会を「本気で世界一を決める大会」に育てることは、日本国民の目を野球に向ける上で、大きな効果が期待できる。
だからこそ、日本野球はWBCに全力を挙げて取り組むべきである。名誉がどうとかいう次元のことではない。国内リーグを盛り上げるためにこそ、WBCで名勝負をすることが必要なのだ。
何もせず、今まで通り国内だけで勝った負けたとやっているだけでは、プロ野球そのものが衰退していくリスクを大きくしてしまう。リスク回避策のつもりでWBCに非協力的態度をとる球団は、中長期的にみれば、プロ野球全体のリスクを大きくする行動をとっているに等しい。……
これを読んだ方の多くは「当たり前じゃん」と思うことだろう。
3年前には、まだWBCという大会が行われておらず、海のものとも山のものともつかない状態だったから、このくらい言葉を尽くさなければ理解されなかった(いや、当時これが理解されたかどうかも判らないが)。
だが、第1回大会を経験した今なら、こんなことは「当たり前」でしかない…と思っていたのだが、これも甘かったようだ。
上の西川社長の談話で唯一意味を持つのは<WBCで何かが起きても何も保証してもらえない>というくだりだ。
これは重要な問題だから、当事者の間で大いに議論されるべきだと思う。
では、中日はこれまで、オーナー会議や実行委員会で、WBCで選手が故障した際の補償について問題提起し、納得がいくまで議論したのだろうか。前回大会が終わってからずいぶん時間はあったはずだが、報道からその形跡を見出すことはできない。
まあ、西川社長が最近になって急にこのことに気付いて心配になったという可能性もなくはない。そんなにケガが心配なら、来年からはオールスターゲームにも選手を出すのをやめた方がいいんじゃないだろうか。
同じことは選手会についても言える。
第1回大会への参加を決める前には、開催時期と故障時の補償について不服を申し立て、日本の出場はなかなか確定しなかった。開催時期については選手会が譲った形になったが、補償問題がどう決着したのかは明確には伝えられていない。実際に大会中に故障した岩村や川崎にどういう補償がされたのか(あるいはされなかったのか)も気になる。
だから、第2回大会についても、選手会はNPBに故障時の補償を要求すればよいと思うのだが、そういう交渉をしている形跡はない。選手会公式サイトのニュース欄を見ても、選手会が開催するイベントの告知ばかりが目立つ。ニュース欄で7/31に開催された臨時大会の様子が報告されているが、主な話題はいつもの通り、FAと保留期間の問題だったようだ。
故障時の補償は、基本的には当事者間の問題だ。各球団や選手会が要求してNPBが拒絶したのなら問題視するけれど、当事者が要求している形跡がない段階で、見物人がどうこう言っても仕方ない。個人的には心配だし、NPBが保険をかけた方がいいと思うけれど(もしかけてるのなら結構なことだ)。
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