重厚なコーチ陣への若干の懸念。
第2回WBC日本代表のコーチ陣が決まったのだという。
報道されるところによれば顔触れは以下の通り。
投手:山田久志、与田剛
バッテリー:伊東勤
打撃:篠塚和典
内野守備走塁:高代延博
外野守備走塁:緒方耕一
まずは文句のつけようのない顔触れではある。
山田は95,96年にオリックスが連覇した際の投手コーチで、仰木彬監督の細切れ投手起用をよく支えた。売り出した頃のイチローと親しかったようだから、その面の保険、という意味もあるのかも知れない。
伊東は西武黄金期の名捕手であり、監督としてリーグ優勝を果たしている。
高代は中日・落合監督の下で今季まで野手総合チーフコーチを務めた作戦・走塁のエキスパート。
篠塚、緒方の2人は原の指名ということだろうが、今季のジャイアンツの打撃・走塁を見れば、一定の成果は挙がっていると考えてよいのでは(甘いか?)。
コーチ経験のない与田は、お手並み拝見というところ。MLB解説を長くやっていてアメリカ野球に詳しいという点は、チーム全体にとってのプラスになるだろう。
全体としては、それぞれの分野で実績のある指導者を配した重厚な布陣になったと思う。
(前回大会を投手コーチとして経験し、原監督の下でコーチを務めて日本一を経験し、アメリカのマイナーリーグでのコーチ経験もある鹿取義隆が起用されないのは少し意外だったが、だからといって山田・与田コンビに不満はない)
ただ、顔触れが立派すぎて、まとまるのだろうかという点は少し気になる。
山田と高代は原監督より年長。伊東は4歳下だが選手としてはほぼ同世代といってよい。山田と伊東は監督経験者だ。高代については多くを知らないが、現役時代も中日のコーチ時代も、かなり主張の強い人物だったという印象がある(中日では、ほかのコーチとの不和が伝えられたこともあった)。
主張が強いことがいけないとは言わない。チームが順調にいっている時はそれでいい。
だが、前回大会の二次予選や、北京五輪の予選リーグ終盤のように、チームが苦境に陥ることも想定しなければならない。そういう状況下で、監督とコーチの間で、あるいはコーチ陣の間で意見が割れた時に、原監督は彼らを掌握してチームをひとつにまとめることができるだろうか。そこがこの人事の最大のポイントであるように思う。
そもそも、原監督への就任要請があったのは10/27で、まだ1週間しか経っていない。
日本シリーズを戦っている原監督自身が、この短期間にコーチ陣を編成できるはずはない。NPB側で誰かが動いた結果と考えるのが自然だ(原監督の意向も容れてのことだと信じたいが)。順当に考えれば、王顧問の考えが反映されているのではないかと思われる。
ある意味ではお仕着せの人事であり、原監督とコーチ陣の間に現時点で十分な信頼関係があるかどうかはわからない(もちろん、本番までに形成されればそれでよい)。 「仲良しトリオ」と酷評された北京五輪の指導陣に対する反省に基づいた人事ならよいが、反動ということだといささか困る。
ちなみに2006年の第1回大会の顔触れはこうだった。
監督:王貞治
ヘッド:弘田澄男
打撃:大島康徳
投手:鹿取義隆、武田一浩
守備走塁:辻発彦
どう見ても王監督が突出して偉い(笑)。
年齢でも王監督が圧倒的に上だし、比較的年長の弘田、大島は穏やかな人物という印象がある。鹿取にとっては王監督は現役時代の大恩人だ。王監督の人間力も含めて、何がどう転んでも内紛など起きようのない組織だったという気はする(もちろん、結果に影響されての感想ではあるが、当時、敗色濃厚だった時点でも不協和音が報じられることはなかった)。
原監督が、年長者を含めたコーチ陣をよく掌握し、それぞれの力量を十全に発揮させることができれば、よい人事、よい組織だった、ということになる。私が懸念するような面については、もしそんな芽があった場合にも、後見人としての王前監督が抑えになってくれることを期待する。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
中日ファンである私はもちろん与田剛に大きな思い入れがあるのですがそれはそれとして、数字だけで見ると与田ってそもそも評論家として食っていけてること自体が不思議なくらいで、それがなんでいきなり日本代表のコーチなんでしょうね。よほど人望があるのでしょうか。
投稿: nobio | 2008/11/05 00:02
まさしく、その点が最大の懸念になりますね。実力面ではもちろん、情報収集や選手掌握でも心配はいらないこの面子を、果たして原監督がどうまとめるのかに注目したいですね。プラス材料を挙げるなら、原監督は巨人でも伊原、尾花体制でおおよそ上手くやってることでしょうか。
私は若輩ですから野球界の事情には詳しくありませんが、いろんな所で野球ファンの方々が話し合っているのを見ると今回の顔ぶれは、読売グループはおろか、王ルートからも出そうに無い名前ということでした。原監督が全てを決めた、というには確かに早すぎる気がしますが・・・誰がこの人事を考えたかというのも結構話題になってました(笑
投稿: | 2008/11/05 01:16
>nobioさん
>数字だけで見ると与田ってそもそも評論家として食っていけてること自体が不思議なくらいで、
年度別成績を見ると実働ほぼ3年ですが、私の記憶の中では新人の年がすべてです。ま、権藤博氏も投手としては実質2年でしたから(その2年で75勝でしたが)、短くても印象が強ければ、引退後のウリにはなるのでしょう。
解説者としては、言葉の端々に人柄の良さは感じられますね。
>なんでいきなり日本代表のコーチなんでしょうね。
前回の武田はもっと意外でした。WBCのブルペン担当コーチはNHKが枠を持ってるんでしょうか。
投稿: 念仏の鉄 | 2008/11/05 01:24
>2008/11/05 01:16の名無しさん
>誰がこの人事を考えたかというのも結構話題になってました(笑
山田、伊東、与田の共通点といえばNHK解説経験者ですね(山田は今は違いますが)。前回の大島と辻もNHKの解説経験者だし、ホントにNHKの意向が影響しているのかも、という気がしてきました。
高代は引退後ずっと、いろんな球団でコーチをしていたので、解説者経験自体がありません(そのこと自体が彼のコーチとしての評価を物語っている気もします)。
投稿: 念仏の鉄 | 2008/11/05 01:34