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2009年8月

続・プロ野球に二軍は必要か。

 広島カープの育成選手に、ディオーニ・ソリアーノというドミニカ人投手がいる。先月末、7月28日に育成選手契約を結んだばかりの若手だ。
 彼の出自は、カープ公式サイトの発表にはドミニカ共和国であることしか記されていない。カープでドミニカといえば当然アカデミー出身。ただし、彼はアカデミーから直接来日したわけではない。日本でプレーするのは現在3シーズン目になる。
 2007年に高知ファイティングドッグス、08年は長崎セインツ、そして今年は徳島インディゴソックス。広島カープから派遣という身分で四国・九州アイランドリーグのチームでプレーし、3年目の今年、シーズン途中で育成契約に漕ぎ着けた。
 インディゴソックス公式サイトを開くと、ソリアーノの広島入団を報じる記事があり、彼を指導した人々の談話も寄せられている。それらを読むと、この3年での成長の跡を感じさせる。

 徳島インディゴソックスは今季、ソリアーノを含む3選手の派遣を広島カープから受け入れている。
 カープはかつて、ドミニカアカデミー出身の選手を台湾プロ野球に預けて実戦経験を積ませる、という育成手法をとっていた。95年に1年だけ広島で大活躍した後、レッドソックスに移籍したロビンソン・チェコも、台湾経由で一軍に上がった選手だ。
今は台湾の代わりに、実戦経験の場を独立リーグに求めている、ということのようだ。台湾プロ野球の治安悪化や組織の弱体化、独立リーグの実力向上などの要因が背景にあるのだろう。

 私は当blogで2005年11月に<プロ野球に二軍は必要か。>というエントリを上げ、その中で次のように書いた。

<二軍を削減した分、若い選手を独立リーグに派遣したってよいではないか(かつて西武がアメリカのマイナーリーグに選手を派遣していたように)。>

 もちろん、広島カープは二軍を削減してはいない。だが、私が想定した形に近いやり方で、独立リーグとの提携を進めている。それは必然的な流れだろうと私は考えている。


 <プロ野球に二軍は必要か。>は、次のような当時の問題意識に基づいて書かれている。

a. プロ野球の選手育成力(特に高卒選手に対して)は、大学や社会人に比べて劣っているのではないか。

b. 二軍の維持運営コストが球団経営を圧迫しているのではないか。

c. 従来、高校卒業時にプロ入りできなかった選手を育成してプロ野球に送り込む機能を担ってきた社会人野球が、崩壊の危機にある。社会人が担ってきた育成機能を維持するために対策が必要ではないか。

 この3つの問題に対するひとつの解として「現在の二軍を発展的に解消し、大学や社会人野球、独立リーグといったNPB外部の育成機関と連携して、野球界全体で選手の育成をはかる」という提言をしたのが、元のエントリだった(こんなに綺麗にまとまってはいませんが)。

 古いエントリだが、今年になってコメント欄に頻繁に異論が寄せられるようになった。
議論に応じて関連事項を調べ直しているうちに、エントリを書いた後に起こった変化や、見落としていた事実に、いろいろと気がついた。当方の考えが深まった部分もある。コメント欄もずいぶんと長くなったので、このへんで一度、整理をしておきたい。


 4年間での大きな変化のひとつが独立リーグだ。

 独立リーグは、当時は四国アイランドリーグが誕生して最初のシーズンを終えたばかり。経営上の問題を抱え、翌年もリーグが存続できるのかどうかすら確証のない状況だった。
今も苦しい状況に変わりはないようだが、アイランドリーグは、ともかく5シーズン目の今年も存続している。08年からは福岡と長崎にもチームが生まれ、四国・九州アイランドリーグと名称が変更された。
 2007年には北信越ベースボール・チャレンジ・リーグが生まれ、翌年は6球団に増えて名称もベースボール・チャレンジ・リーグ(BCリーグ)に変わった。
 2009年には関西独立リーグが4球団で発足した。開幕早々にリーグから各球団への分配金未払いが表面化し、運営企業が撤退するというトラブルがあったが、今のところリーグは存続し、試合を続けている。

 というわけで、経営上は楽観を許されない状況ではあるものの、エントリ執筆時に1リーグ4球団だった独立リーグは、現在では3リーグ16球団に増殖している(来季から関西独立リーグへの参入を表明している球団もある)。
 
 一方、NPB球団が自チームの選手を独立リーグに派遣する、という事例は、まだ実現してはいない(広島カープが派遣しているのは、球団と選手契約に至っていないアカデミーの選手だ)。

 積極的な姿勢を見せていたのは、千葉ロッテマリーンズだ。
2007年6月に、経営難にある高知ファイティングドッグスを買収して育成選手を派遣する、という構想が報じられたことがあった。しかし、まもなく瀬戸山球団社長が「実行は困難」と発言し、具体的な動きには至らなかった。
 千葉ロッテはこの年のオフ、育成選手を徳島インディゴソックスに派遣するという構想を立て、プロ野球実行委員会に諮った。社会人野球の団体である日本野球連盟にも相談に行ったようだ。だが、社会人サイドからは反対され、実行委員会でも結論には至らなかった。Wikipediaの千葉ロッテの項によれば継続審議、という形だが、その後の実行委員会で検討されたか否かは報じられておらず、現時点でロッテがまだやる気があるのかどうかはわからない。

 当時の新聞記事を読むと、この時の球団買収や選手派遣という構想は、アイランドリーグ側からロッテに持ちかけたものらしい。同リーグの鍵山社長は四国新聞の記事の中で<「資本参加やNPB(日本プロ野球組織)選手の受け入れなど、包括的な提案をさせていただいた中で浮上してきた話。何も決まっていなかった」><「さまざまな提携案を示す中で、一つでも前向きに進めばいい」>と話している。
 そして、同時期に話をもちかけられた広島カープの鈴木球団本部長は<「球団買収の問題点は実行委員会で検討すべき。(各球団の出資は)これから可能性を探っていけばいい。育成選手の派遣は問題ないと思う」>(スポーツニッポン2007.6.20付)と、肯定的なニュアンスの談話を残している。この時点ですでに広島はドミニカアカデミーの選手の派遣を始めていた。
 
 
 ロッテの中で、独立リーグの球団に資本参加して自チームの選手を派遣する、という構想に熱心だったのはバレンタイン監督のようだ。彼がよく知っているMLBのマイナーリーグと日本の二軍を比較すると、彼がやろうとしたことは理解しやすい。


 実のところ、MLBには、日本の二軍にあたるものはない。

 というと、多くの人の目には奇異に映るだろう。当然ながら「マイナーリーグがあるじゃないか」という反論が予想される。だが、経営主体という観点から見れば、アメリカのマイナーリーグと日本の二軍は大きく異なる。
日本の二軍はNPB球団内の一部門だが、マイナー球団はそれぞれが独立した企業だ。MLB球団と契約して選手を預かるという形をとっている。
 実際にマイナー球団の経営に携わったアメリカ在住の白井孝明氏のblog<摩天楼便り>から引用する。

<マイナーリーグチームというのは、基本的には、メジャーリーグチームとは全く別の会社なり組織が所有および運営していまして、メジャーリーグチームとはPlayer Development Contracts(通称PDC)という選手育成のための契約を結んでいます。もう少し突っ込んだ話をいたしますと、メジャーリーグチームはマイナーリーグチームに選手の貸し出しを行っており、その代わりに、マイナーリーグチームは選手が試合を行うための施設等の環境を提供しています。ちなみに、選手の給料およびその他諸々の経費はメジャーリーグチームがカバーしていますが、その他の運営費等はほぼすべてマイナーリーグチームがカバーしています。>

 マイナー球団にMLB球団が資本参加するケースもあるが、いずれにしても別会社だ。

 つまり、「高知ファイティングドッグスに千葉ロッテが資本参加し、メジャー契約ではない自チームの選手を預けて、育成を任せる」というのは、MLBで確立している選手育成の仕組みに近い。
 バレンタインは2006年6月(コメント欄からの推定)に、自身の公式blog<ボビーズ ウェイ>の<マイナーリーグについて>というエントリで、入団直後の若手が、一軍での出場に備えて調整するベテランと出場機会を争わなければならないことが、彼らの成長を妨げている、と説き、次のように書いている。

<各球団において2つのマイナーリーグチームが最低限用意されているべきだと思うんです。1つのチームは一軍でプレイしたことのない若い選手で構成されていて、他の若い選手と対戦し、そしてもしシーズン中でも能力が認められれば、次のレベルのリーグでプレイすることができる。

もう1つのチームは、若い選手に比べて経験もあってベテランの選手達で構成されていて、シーズン中はメジャーリーグでプレイするために調整をするためのもの。そして彼らの試合は一軍が通常プレイするスタジアムで、一軍の試合前に行うこともできると思います。>

 現行の二軍を後者に、独立リーグを前者にする、というのがバレンタインの構想だったと思われる。

 MLBから見れば、「日本の球団は70人とメジャー契約を結び、試合に出られない選手は自前の寮に住ませ、自前の施設で練習と練習試合をさせている」ということになる。すべてを自前でやることが唯一絶対の正解なのかどうかという検討は、なされてもよさそうなものだ。
 
 
 一方、球団が自前で抱える選手を増やす、という逆方向の発想で進んでいるのが、育成選手制度だ。
 ちょうど、元のエントリを書いた頃に、育成選手制度は誕生した。2005年のオフから選手が採用され、現在4シーズン目になる。初年度に採用されたジャイアンツの山口鉄也が、昨年は新人王、今年はWBC日本代表にまで駆け上がったことで、制度そのものも注目を浴びている。ジャイアンツでは外野手の松本哲也、隠善智也も育成出身だ。
(ジャイアンツのオビスポ、中日のウェン、阪神のバルディリスらも育成出身だが、外国人選手については同列で論じにくい面もあるので、ここでは措く)

 育成選手は二軍の試合に出場することができるし、シーズン中に支配下選手登録されることもできる。年齢にも制限はない(中日は中村紀洋を育成選手として獲得した)。大学や社会人を経た選手も少なくない。支配下選手が育成選手に「格下げ」される事例もしばしば見られる。「若手」と言われているが、その球団の最も年齢の若い選手たち、というわけではない。
とすれば結局のところ、育成選手制度というのは、支配下選手70人枠の拡張、というのが本質のように思える。

 だが、上述のように、各球団にはもともと40人前後の二軍選手がいて、実戦の機会に恵まれない選手もいるのだから、育成選手たちがさらに試合に出場しづらいことは容易に想像がつく。
 近年、各球団から選手を集めた混成チーム「フューチャーズ」や、ジャイアンツとロッテの合同チーム「シリウス」が結成されているのは、二軍の中でも未熟な選手や育成枠の選手たちに試合経験をさせるためだ。
フューチャーズの対戦相手は、主にイースタン・リーグのチームだ(現在、同リーグは7球団が所属しているため、試合開催日に常に1チームが余る。その余ったチームと対戦する、というスケジュールが組まれている)。一方、シリウスはもっぱら、社会人(会社、クラブ)や独立リーグのチームと試合をしている。

 従って、シリウスに参加している選手は、シリウスの活動中は「自球団とは別のチームに派遣され、自球団とは別の指導者に指導を受け、社会人や独立リーグのチームを相手に試合をする」ことになる。身分上は「ジャイアンツの(育成)選手」であっても、この範囲での実情は、上述のバレンタイン構想での派遣選手とさほど変わらない。

 結局のところ、NPBが育成制度を拡大していけば、いずれはNPB外部の育成組織と連携していかざるを得ないのではないか。NPB内部だけで三軍、四軍と下位リーグを増やしていけるのなら別だが、不採算部門を今以上に拡大できる球団がジャイアンツの他にそういくつもあるとは思えない(現時点でも、育成制度を使っていない球団はある)。また、NPBが育成選手の数を増やしていけば、いずれは社会人野球との間に軋轢が生まれることになる。
それよりも、社会人や独立リーグと提携して選手の育成を考えていく方が生産的ではないかと思う。
 
 
 とはいうものの、例によって障害はある。

 従来の野球界では、学生(高校・大学)-社会人-プロ、という秩序が、それぞれの間に緊張関係をはらみつつも、一定の役割分担と育成機能を果たしてきた。
 だが、その一角である社会人野球は、現代の企業経営環境の中で存在基盤を失いつつある。
横尾弘一の近著『都市対抗野球に明日はあるか』(ダイヤモンド社)を読むと、都市対抗に出場するチームの大会運営に対する負担は、ちょっと驚くような大きさの金額だ。社会人野球に(プロや学生や独立リーグにはない)固有の存在価値があるしても、その価値と現在のコストが見合うと判断する企業は、減ることはあっても、増えるとは考えにくい。
 
 現在、高校や大学を卒業した後の選手が、プロに準ずるレベルで野球をする場(あるいは、そこでプレーしていればプロへの道が開ける可能性のある場)として、社会人、クラブチーム、独立リーグという3つが存在している。
『都市対抗野球に明日はあるか』を読むと、三者それぞれの間に緊張関係があって、なかなかややこしいのが実情らしい。どうしても選手という財産を奪い合う関係にあることは否めないし、それぞれに新しい動きがあり、役割分担などの関係性がまだ落ち着いていない。
そこにさらにNPBという巨大な影響力をもった存在が関与してきた時に、それぞれのパワーバランスがどう動くのか、予測は難しい。一部あるいはすべてのセクションがダメージを被る可能性はある。

しかし、新しい形のクラブチーム(会社の援助を失って組織替えしたクラブ、NOMOベースボールクラブのように最初からプロ入りを視野に入れて高い競技レベルを目指すクラブ、茨城ゴールデンゴールズのように独自に有料試合を行い興行を意識したクラブなど)や独立リーグの台頭は、そもそもかつての秩序が機能しなくなったところから起こっている。
本来なら、NPBと社会人球界、そして学生球界も含めた野球界の中心的な組織が、野球界全体の統一的な秩序や育成システムの整備をすべきところを、互いにいがみあい、棚上げにしてきたために招いた事態とも言える。

それぞれに参加する選手たちの多くが最終的に目指すところがNPBである以上、球界全体の育成システムの整備に貢献することは(プロを目指さない選手の居場所を含めて)、NPBの責務なのではないだろうか。
 
 
 元エントリを構成していた問題意識のうち、cに偏った話になってしまったが、他の2点についても簡単に触れておく。

a. プロ野球の選手育成力(特に高卒選手に対して)は、大学や社会人に比べて劣っているのではないか

 何人かの方から異論をいただいたように、この疑義を立証するのは容易ではない。
 NPBと大学・社会人というそれぞれの育成機関は、同じ人材を扱っているわけではない。入ってくる選手の素質が異なれば、育成結果も異なる。プロで成功した選手の出自を調べてその数を比較しても、それが単純に育成力を反映しているわけではない。

 ただし、人材の素質については、原則として次のような仮定ができるのではないかと思う。

「同学年の選手のうち、高校卒業時に、もっとも素質の優れた一群がドラフト会議で上位指名されてプロ入りし、そこから漏れた選手が大学や社会人に進む。
大学で優秀な成績を残した選手は、卒業時にプロ入りする。また、高卒で社会人に進んで優秀な成績を残した選手は、大卒相当の年齢までにプロ入りする。
 大学卒業時にもプロから声がかからずに社会人入りした選手のうち、社会人で優秀な成績を残した選手がプロ入りする」

 高校卒業時、大学卒業時という節目の時期に、世代内でもっとも優秀だとプロが判断した選手がプロ入りし、その次のグループが大学や社会人に行く。大学や社会人を経てプロ入りした選手は、同世代の中では二番手、三番手のグループだったはずだ。

 だから、高校卒業時にドラフト上位指名されてプロ入りした選手は、そうでない選手よりも高い確率で成功することが期待される。そうならないのであれば、プロ野球の育成力に問題があるという推定が成り立つ(あるいは、高校卒業時の素質を判定する能力に問題があるのかも知れない)。元のエントリに紹介した松坂世代についての論評も、そのような観点を含んでいる。

 そういう観点で、プロ入り時の状況ごとにしかるべき係数を乗じた上で統計処理でもしてみたら面白いのではないかと思うが、私の手には余る。どこかの大学ででもやってもらえたらよいのだが。

 ただし、そもそもの前提となる仮説が常に正しいとは限らない、という弱みはある。

 近年でいえば斎藤佑樹や東浜巨のように、高校卒業時に学年を代表する力量を示し、プロからの上位指名が予想されていた選手が、高卒時のプロ入りを志望せず大学に進む、というケースがある。このような例外をどう捉えるかによって、上記の推定は揺らいでくる。大学・社会人出身者の逆指名制度が行われていた時期には、自分で球団を選びたいという理由で高卒時のドラフト指名を拒んだ選手もいたかも知れない。それぞれの例外をどう捉えるか、複雑になる。

 もっとも、斎藤や東浜が、なぜ大学を選んだかは興味深い。彼らは将来のプロ入り志望を表明しながらも、プロの二軍ではなく早大や亜大に、自らの野球人生の基盤作りを託すことを選んだ。大学卒業資格や学問、人脈といった要素が彼らの選択にどの程度の比重を占めているのかは不明だが、彼らが早大や亜大の育成力を高く評価していることには疑う余地がない。
 
 
b. 二軍の維持運営コストが球団経営を圧迫しているのではないか
 
 これも、各球団が収支を公表していない以上、結論は出ない。MLBとの比較などから一般論として述べる以上のことはできない。

 寄せられた異論の中には「二軍選手は報酬が安いから、さほど人件費の節約にはならない」という意見があった。
 私が提言しているのはMLBのやり方と同様、「NPB球団に所属する選手を独立リーグなどに派遣する」というものだから、派遣した選手への報酬はNPB球団が負担することになる。従って、選手の人件費は削減できない。
 削減できるのは、それ以外の経費だ。二軍が拠点とするスタジアムであり、選手が住む寮であり、二軍の指導スタッフであり、マネジメントスタッフや、二軍の試合を運営するための諸経費だ(ただし、指導者も選手とともに派遣するのなら、その人件費はかかる)。
 それがどの程度の金額になるのか、球団経営にとってこのコスト削減がどれだけのメリットになるのかは、各球団の事情によって異なるだろう。メリットがあると考える球団は検討・実行すればよいし、ないのなら従来どおり自前で二軍を運営すればよい。一部の球団から試験的に始めてみて、利点があると思えば他球団も追随するだろう(育成制度の現状のように)。現在の二軍にしても、最初は一部の球団から始まった試みだった。
 
 
 また、練習場は二軍だけでなく一軍も使うのだから削減できない、という意見もあった。

現状は確かにその通りだ。ただし、練習するためだけなら、電光掲示板のついたスコアボードや、有料試合に使えるようなスタンドは不要だ。
そもそも一軍の公式戦のある日にはホームでもビジターでも試合をする球場で練習ができるので、一軍の練習のために自前の施設を必要とする機会が実際にどれだけあるのか、維持管理のコストとともに検討してみることにも意義があるかもしれない(日本ハムの二軍の本拠地は千葉県鎌ヶ谷市にあり、一軍とは離れている。札幌市内には室内練習場を設けている)。

 さらに根本的な議論をするなら、チームが本拠地球場で練習したい時にできないというのは、そもそも本拠地球場が球団と別の組織によって運営されていることに問題がある。
これは、NPBの多くの球団に共通する経営上の難所であり、本拠地球場の在り方を見直す必要のありそうな球団も少なくない。自治体の施設の運営を任されることに成功した楽天や千葉ロッテが、どのような運営をしているのかは興味深い。

 
 それにしても、このようなプロ野球(だけではないが)の構造改革に関する議論は、NPBの中からも外からも、あまり聞こえてこなくなった。それが4年前との最大の変化かもしれない。球団の経営環境は、そんなことを考えなくてもよいほど好転したのだろうか。テレビ地上波での野球中継が4年前よりめっきり減った現状を見る限り、とてもそうとは思えないのだが。

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