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「ジャイアンツファンのみなさま、ニッポンイチになりました!」

 ホントに勝ったの? これで日本シリーズ終わったの? もう闘わなくていいの?

 試合が終わっても、そんな気分がなかなか抜けない。
 勝利監督インタビューで、原監督が「ジャイアンツファンのみなさま、日本一になりました!」と高らかに叫んだところで、ようやく実感がわいてきた。
 ジャイアンツ、日本一。7年ぶりの日本シリーズ優勝。

 シーズン中も試合を見たことがなかったわけではないが(JSPORTSでは、よく朝から前夜のパ・リーグの試合の再放送をしていたりする)、こうやって毎日戦いながら、じっくりと見ていると、日本ハムは実によいチームだと改めて痛感する。
 どの打順からも打つ、二死からも打つ。小技も利くし、ミスが少ない。反対方向に打ちながら次打者へ次打者へと繋いでいく打線からは、じわじわと追い詰められる恐怖感を覚えた。
 そして守備が素晴らしい。スタジアムで見ていても、右中間、左中間に飛んだ打球は、どれほどよい当たりでも、グラウンドかフェンスに当たるまでは、誰かに取られそうで安心できない。田中―金子の二遊間はもともと定評があるが、三塁の小谷野は体型に似合わぬ機敏で柔らかい動きだし、一塁の高橋は捕手出身だけあって、こまめに投手に声をかける。
 野手陣には、どの選手も喧嘩が強そうな風貌と雰囲気があるし(鶴岡を除く)、ブルペンは若くて勢いがある。
 
 
 振り返ってみれば、1勝目はかろうじて逃げ切ったという記憶しかないし、2勝目も結果的には3点差がついたが8回表に山口が乱れた時は相当危なかった。3勝目は試合時間の大半を劣勢のまま過ごし、最後の数分間でうっちゃる展開だったし、4勝目の今日も、9回2死でなお一打同点、本塁打で逆転サヨナラ、打席にはシリーズでもっとも怖い四番・高橋、という局面だった。
 要するに、安心して見ていられた勝利などひとつもない。なかなか優勝の実感が湧かなかったのも当然だ。
 シリーズMVPに選ばれた阿倍の第一声は、お約束の「最高です!」だったが、まるで勢いがない(第5戦のサヨナラ本塁打の後とは大違いだ)。シリーズの感想を問われて、「苦しかったです」と言ったのは、掛け値なしの実感だろう。シリーズを通じて好調だった投手など思い出せない。
 いちばん良かったのは第2戦で内海の後を継いだ東野だが、その東野が先発した今日は、初回に高橋の打球を手に受けて降板。緊急登板の内海以下の5投手は、それぞれコントロールが定まらない。捕手としては精魂尽き果てたことだろう。

 
 両エースがどちらも故障で登板不能の見込みと伝えられていたシリーズ前には、それならジャイアンツの方が有利だと思っていた。ダルビッシュは日本ハムにとって絶対的なエースだが、グライシンガーはジャイアンツにとって有力なローテーション投手の1人に過ぎない。
 それだけに、第2戦でダルビッシュが登場した時には、情勢は逆転したように感じた。しかも始球式には新庄だ。札幌ドームが異様に盛り上がったのがテレビ画面からもありありとわかった。あそこで新庄を連れてくるとは、反則としか言いようがない(笑)。

 
 上述のように投手陣は安定感を欠き、打線は3・4・5番がもうひとつ、とりわけ四番のラミレスが冴えない。コンスタントに良かったのは二番の松本くらいで、シリーズ男と呼べるような存在は現れなかった。
 調子の良い選手が多かったわけでもないし、第4戦はシーズン中でもあまり見られない、集中を欠いたひどい試合だった。チームとしての完成度はまだまだだ。
 それでも、ジャイアンツは勝った。野村克也が昔から「勝ちに不思議の勝ちあり」と言うけれど、まさにそんな感じのシリーズだった。

 
 得点した場面を思い起こすと、効果的な本塁打もあったものの、集中打で走者を還した場面が目に浮かぶ。
 第1戦の決着をつけたのは代打・李のタイムリーだったし、第3戦、空中戦での均衡から抜け出したのは、二死からの坂本が選んだ四球がきっかけとなった。
 9回裏の本塁打2本でひっくり返した第5戦も、届かなかった1点差にようやく追い付いたのは、代打・李の韓国式避けない死球と、代走・鈴木の初球から当り前のように走った盗塁、そして代打・大道がしぶとく食らいついて二塁手・田中の頭を越えたタイムリー。今日も6本しか打てなかった安打のうち4本が得点に結びついている。
 シーズン中は3割近い猛威をふるった日本ハムの代打陣は結果が出ず、シーズン中はさほどの打率ではないジャイアンツの代打陣は、しばしば試合を決める働きをした(それはクライマックス・シリーズからの流れでもある)。
 ばたばたした局面もあったけれど、チームはここぞという場面で高い集中力を発揮した。

 
 原監督の胴上げは、いつまで続くんだろうと思うほど回数を重ねた(全部で10回だったらしい)。
 テレビ画面に映った胴上げの輪では、誰ひとり、外側を向いている者はいなかった。
 チームの誰もが同じ方向を見ていた。
 この苦しい競り合いの連続を抜け出す、最後のひと押しとなった何かが、胴上げの光景に現れていたような気がした。

 そして、その何かを築き上げたものは、きっと原辰徳の、どこまでも空高く抜けていくような明るい声と、あの笑顔だったに違いない。
 
 
 それにしても今週は贔屓チームが次から次へと優勝する。こんなことがあっていいんだろうか。
 
 
 あと、日本シリーズのラジオ中継で井端、テレビ中継で立浪の解説を聞いたが、2人とも実に説得力があり、他球団の選手のことをよく見ており、話も面白い。解説でもコーチでも今すぐ一流になれそうな選手が、2人も試合中のグラウンドにいたのだから、なるほど中日は強いわけだ。

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コメント

以前コメントさせていただいたyusuketsuikiと申します。

私は長年のファイターズファンなので、ファイターズ目線でシリーズを追っていたのですが、ファイターズにとっても非常に苦しいシリーズでした。ダルビッシュ、金子を怪我で欠いたこともさることながら、安打は出るのに得点に繋がらない、逆に巨人は好機を見つけるとすかさずつけこみ、得点に繋げてくる……。

世間的には「巨大戦力の巨人」vs「野球の質で戦う日本ハム」というような構図で語られていましたが、特に攻撃面の質において、ジャイアンツはファイターズを大きく凌駕していたように感じました。勝敗の差は紙一重でしたが、今年優勝するべきはジャイアンツだったということなのでしょうね。

しかし昨年、2年前と比べて、巨人は本当に素晴らしいチームになりましたね。ベテランと若手、日本人と外国人が絶妙に噛み合う選手層、原監督の強気な采配、伊原コーチの存在感に、投手陣を編成した尾花コーチの手腕。一時期の4番打者ばかり集めていたころとは違う、適材適所の野球という感じで、これだけのチームを作り上げた原監督は本当に素晴らしい名将だと思います。

ファイターズファンとして、今年の巨人と戦えたことを本当に誇りに思います。おめでとうございました。

投稿: yusuketsuiki | 2009/11/08 00:46

今年は巨人戦観戦のほとんどが京セラドームと甲子園でしたが、チケットやグッズの売れ行きといい、ファンクラブの盛況ぶりといい、声援の量といい、確実に巨人ファンは増えていると思います。マスコミは未だに"地上波の”視聴率で騒いでますが、G+の収入やBS日テレのポイント制度など、ジャイアンツは既に収支構造の改革がある程度進んでいる感があります。

鉄さんが清武氏の就任の際に「今後ジャイアンツは最も革新的な球団になる可能性がある」とおっしゃってましたが、本当にそのような雰囲気がします。その成果の一つとしての"日本一奪回”"維新"の成功は、ファンとして喜びひとしおです。

今年は本当に原さんにありがとうと御礼を言いたいです。

投稿: アルヴァロ | 2009/11/08 22:34

>yusuketsuikiさん

野村ファンの方でしたね。ありがとうございます。

ファイターズは東京にいた頃には時々試合を見ていたので、わりと愛着があります。思い入れの強い2チームがどちらもいいところを見せてくれた今回のシリーズは、思い出深いものになりました。

投稿: 念仏の鉄 | 2009/11/10 00:54

>アルヴァロさん

今回のポストシーズンはCS1試合、日本シリーズ2試合を東京ドームで見ました。
選挙で言う「浮動層」よりも、「コアな支持者」の割合が増えているような印象は確かに受けます。それはポストシーズンだからということもあるのでしょうが、シーズン中の試合でも似た印象はありました。

現経営陣の改革がこのまま何年か続いて、もし幹部が入れ替わっても改革路線は盤石、というところまで行けたら、プロ野球は面白いことになると思います。

投稿: 念仏の鉄 | 2009/11/10 01:20

YouTube から「あなたの "中里篤史2001-2005" というビデオにアクセスが増えてるので、広告を出して稼ぐ気はないか」というメールが来ました。
http://dragox.exblog.jp/12923300/
ちぇ、中日にいる間はこんなメール来なかったのに。たしかに巨人ファンは増えているのかも知れない、と、この記事のコメント欄のやりとりを思い出しました。

投稿: nobio | 2009/11/11 16:39

>nobioさん

確かナビスコカップ決勝の朝に、FC東京に詳しいトーチューを買ったら、一面が「中里戦力外」で、それほどの存在だったのかと、ちょっとびっくりしました(「ゴン中山戦力外」なら一面でもびっくりしないのですが)。
ジャイアンツファンが「どんな投手だっけ」と検索した可能性はもちろんありますが、中里の思い出に浸りたい中日ファンの人がアクセスした分も含まれてるかも知れませんね。

しかし、YouTubeはマメですね。もちろん自動的にメールが送られる仕組みになってるんでしょうけど、そういう仕組みを作ること自体がマメだ。

投稿: 念仏の鉄 | 2009/11/11 22:31

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