« そしてフットボールは続く。城福にも、東京にも。 | トップページ | 桑田真澄・平田竹男「野球を学問する」新潮社 »

2010年秋の野球とサッカーに関する備忘録。

 多忙でろくに見ていられないうちに、野球でもサッカーでもいろんなことがあった。ありすぎて取りこぼしもありそうだが、個人的なメモとして。
 
●横浜、売却ならず
 TBSが横浜ベイスターズを売ろうとした。プロ野球球団を買おうという奇特な企業が現れたけれども、結局は成約に至らず。
 ベイスターズが弱い理由はいろいろあるだろうが、経営が苦しい理由の中では「横浜スタジアムの使用条件の厳しさ」がかなりの重みを持っているはず。
 成約しなかったこと自体は当事者間の判断だから、いいも悪いもない。だが、売買交渉の最中に横から買い手候補を批判した神奈川県知事は、自身の立場を理解していないように思える。県は、売買交渉を批判できるほど充分なバックアップを球団に対してしていたのだろうか。それは横浜市と球団の問題だ、ということなら、黙って傍観していればよい。
 本拠地の観客動員が不振で自治体の支援も乏しいのであれば、プロ野球球団を欲しがり支援したがっている自治体のもとに移るのは、プロスポーツクラブとしては合理的な判断だ。
 
 
●楽天監督に星野仙一
 年俸が高くて経営者への注文が多い野村監督を切って、12球団で最も安価なブラウン監督にかえてから1年。ふたたび値段の高い星野仙一に切り替えた。
 星野監督に払う年俸額は知らないが、総額ではおそらく野村よりも高くつく。年俸の高い選手を買い集めて巨大戦力を築くのが彼のノウハウだからだ。野村の場合、本人やスタッフはともかく、選手は安い買い物をして力を発揮させるのが上手だった。
 楽天球団にその覚悟があるのだろうか、と思っていたら、さっそく松井稼頭央と岩村を立て続けに手に入れた。野村時代にこのくらい補強していたら優勝できたんじゃないかとも思うが。
 さて、球団経営陣は、これほど短期間での路線変更について、強化方針を説明しているのだろうか。私は寡聞にして知らない。
 
 
●日本シリーズがテレビ完全中継されず
 正確にはそれぞれ地元では中継している。地上波での全国中継がない試合があった、ということ。第1,2戦はTBSが優先的に交渉したが、世界バレー中継があったので断った、と伝えられている。
 このブログを訪れるような野球好きの中には「地上波中継なんかなくてもBSやCSで見た方がいいよ」という人が多いかも知れない。始球式や中継ブースに番宣のためのタレントを送り込む民放のやり口は私も嫌いだ(このブログでも酷評したことがある)。
 だが、熱心な野球ファン以外の人々(要するに「普通の人」だ)の目に触れて、野球の面白さを知らしめる装置としては、やはり地上波テレビは大きい。それは、結果的に盛り上がった第6戦、第7戦に対する反響を見てもわかる。
 とはいうものの3,4戦の視聴率は2ケタに届かなかった。NPBの側も、テレビ局が中継しやすいように歩み寄ることを考えた方がよいのでは。日本シリーズについては、デーゲームに戻す手もあると個人的には思っている。
 レギュラーシーズンも含めて考えると、試合時間の短縮には本気で取り組んだ方がいい。延長の場合は仕方ないが、9回で終わる試合は3時間以内、理想的には2時間半程度に収まらないと、テレビだけでなくスタジアムの観客にとっての負担も大きい。
 
 
●千葉ロッテ、リーグ3位から日本一
 ポストシーズンの途中で「史上最大の下剋上」と言い出したのは里崎だったか。彼の言語感覚のおかげで救われたというか、制度的な矛盾がうやむやになった感はある。
 時にはこういう齟齬が起こるとしても、私はCS制度を支持している。理想的には2リーグ各8球団・東西2地区にして、地区優勝チームどうしがリーグ優勝を争い、その勝者が日本一を争うのが望ましいと思っているが、球団を増やすには、もっとスリム化したビジネスモデルが実現しなければまず無理。悩ましいところ。
 
 
●名古屋グランパス、Jリーグ初優勝
 毎年のように大型補強をしながら「中位力」を発揮しつづけていたクラブが、ようやく適切な道を見いだしたようにみえる。ストイコビッチ監督の戴冠によって、我々は将来の日本代表監督の有力候補を得た、とも言える。

 中日ドラゴンズもリーグ優勝を果たしたから、2010年は名古屋の年だったと言ってよい。ただ、これで両者が黄金時代の礎を築いたかといえば、その点は留保したい。
 グランパスの勝利はストイコビッチ監督と久米一正GMの功績だ。適切な補強が奏功しての勝利だが、結果的に主力選手の年齢構成は高い。絶えざる補強と、育成部門の強化が課題となりそうだ。両者がそろった状態での成功が長く続けば、彼らの手腕がチームの財産として引き継がれる可能性はある。
 一方、中日ドラゴンズはグランパスと異なり、もともと球団の各部門の実力の総和として「上位力」を備えている(その点で今中慎二の「中日ドラゴンズ論」(ベスト新書)は興味深かった。読み物としてすごく面白いというわけではないけれど))。そのチームを、勝ちきれる集団に仕立てたのは、落合監督個人の手腕によるものだろう。ただし、コーチ陣の出入りの激しさを見ていると(たとえば高代や川相の処遇)、その手腕がコーチの誰かに受け継がれるとは考えにくい(この球団の監督人事の歴史を見ると、落合監督が退く時には、落合色の強いと見なされた指導者も一掃される可能性がある)。影響が現れるとすればむしろ、選手として落合監督の下で戦った立浪や井端が指導者になった時かも知れない。
 
 
●FC東京、J2転落
 残念。が、これが今シーズンのパフォーマンスに対する正当な結果なのだろう。選手、指導者、経営陣のすべてにとって。1週間経ったが、今のところ聞こえてくる選手の声は残留の意思を示すものばかりであることが救い(大黒は別だが)。
 広島やセレッソのように、転落以前よりも強くなってJ1に戻る。願うのはそれだけだ。
 
 
●岩隈、ポスティング移籍ならず
 ポスティングシステムが制度化されたのは1998年だった。
95年に野茂が保有制度の空白地帯を突くようにしてドジャース移籍を果たし、翌96年には伊良部が三角トレードでロッテからパドレスを経てヤンキース入り。このへんの移籍がだいぶ揉め事になったことで、NPBとMLBの間に設けられた制度だ。急場凌ぎの暫定措置が、12年たって、そろそろ限界を呈してきた。岩隈には気の毒だが、そういうことに見える。当時とはかなり状況も異なる。現状に合わせて制度を整備すべきだろう。
 私見としては、ポスティングシステムのような特別な制度を設けなくても、両者がそれぞれ備えているドラフト制度とフリーエージェント制度のすり合わせ、および日米間トレードのルール整備をすれば、それでよいと思う。FA制度による海外移籍も制度化されたわけだし、日本の球団が選手にFAでアメリカに出て行かれるのが嫌なら、その前年に対価を得られる形でトレードすれば、それでいいんじゃないだろうか。

|

« そしてフットボールは続く。城福にも、東京にも。 | トップページ | 桑田真澄・平田竹男「野球を学問する」新潮社 »

コメント

今年も一年ありがとうございました。

個人的には、2010年は「パ・リーグがセ・リーグを凌駕したことが明確になった年」と総括しています。

・交流戦上位6球団をパが独占(おかげで総勝ち数が総負け数を22も上回り、終盤戦の星勘定するときに混乱しました(笑)。)

・史上最大の下克上。パ・リーグ「3位」が、セ・リーグ首位を撃破

・セ・リーグの人気者・星野仙一がパ・リーグ最下位球団監督へ。

・セ・リーグ最下位球団に身売り話(ちょっと前まで「身売り話」と言えばパ・リーグの専売特許だったのに…。思わず「遠い目」になっちゃいました(笑)。)

来年もよろしくお願いいたします。

投稿: 馬場 | 2010/12/14 09:41

星野氏は、かつて阪神監督時代に「優勝は野村前監督の遺産のおかげ」と言われたのが気にいらなかったらしく、去年の段階で星野就任は既定路線になっていたが、あえて間にブラウン氏を挟んだというのが実情・・・と先週立ち読みした週刊誌に、野村氏が講演会で語っていたと載っていました。さんざん金を使って使い捨てのブラウンより成績が悪かったら・・・笑っちゃいますね。

投稿: ギガンテック | 2010/12/14 21:35

>馬場さん
半休眠ブログに気長におつきあいいただき、ありがとうございます。

>個人的には、2010年は「パ・リーグがセ・リーグを凌駕したことが明確になった年」と総括しています。

私は、もうそんなふうに対抗的に考える必要もないんじゃないかと思ってます。もう何年かすると、若い人たちには、「パ・リーグファン」を自称する先輩方が何をそんなにカリカリしているのか理解できない、という状況がやってくるんじゃないですかね。結構なことです。

>ギガンテックさん
>去年の段階で星野就任は既定路線になっていたが、あえて間にブラウン氏を挟んだというのが実情・・・と先週立ち読みした週刊誌に、野村氏が講演会で語っていたと載っていました。

ノムラさんらしい深読みですが、楽天の経営陣がそんな無駄なことをするものかどうか。ブラウンとは2年契約と伝えられていましたし、ちょっと信用しづらい説ではあります。

>さんざん金を使って使い捨てのブラウンより成績が悪かったら・・・笑っちゃいますね。

ま、順位でいえば今年より下はありませんから(笑)。

先日、元メジャーリーガーの内野手を2人獲得したので余った渡辺直人を横浜に金銭トレードしたら、その翌日に鉄兵、草野、嶋という主力3人が泣いて悔しがる、という一幕がありました。
経営陣がチーム内の生態系を把握していない(もしくは軽視している)ことを露呈したという点で、来季に不安を感じさせる出来事でした。

投稿: 念仏の鉄 | 2010/12/15 01:20

ご無沙汰しています。

日本選手権のテレビ中継問題は、私もビックリしました。プレイオフのジャイアンツータイガース戦もですが。
個人的には、これは野球のみならず、サッカーにとっても非常に示唆に富む事件?だと思っています。
とは言え、私はあの6、7戦については、たっぷりと堪能させていただきました。(私的にサッカーは別格なのですが)あれだけ、おもしろい娯楽は、そうはないと思うのですがね。

投稿: 武藤 | 2010/12/18 01:13

>武藤さん

ご無沙汰しております。
サッカーは今年前半までは代表の試合の視聴率も低迷していましたが、ワールドカップで完全に持ち直して、秋の親善試合はどれもなかなかの数字が出ていました。
しかし、それでも(長谷部の言葉にもかかわらず)Jリーグ中継の視聴率は上がらないという現実もあります。その意味では、チャンピオンシップというのは捨て難いコンテンツだったと今でも思っています(サッカーにとって1シーズン制と2シーズン制のどちらが好ましいかは別として)。


>あれだけ、おもしろい娯楽は、そうはないと思うのですがね。

面白い試合でしたね。優勝がかかった延長戦というのは、見る側にとっては、ある種の事件を同時進行で目撃しているような気分になれます。
しかし、それ以前の試合は、そこまで面白くはなかったのも事実です(特に最初の2試合は)。内容の善し悪しが事前にほとんど読めないのがスポーツ中継をする側にとっての難しさだとは思いますが。

投稿: 念仏の鉄 | 2010/12/19 00:21

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50507/50273103

この記事へのトラックバック一覧です: 2010年秋の野球とサッカーに関する備忘録。:

« そしてフットボールは続く。城福にも、東京にも。 | トップページ | 桑田真澄・平田竹男「野球を学問する」新潮社 »