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桑田真澄・平田竹男「野球を学問する」新潮社

 気がついたらもう今年最後の日。
 書きそびれたことはたくさんあって、そのかなりの部分は自分でも忘れてしまったような気がするが(ホントは、その瞬間に書き残しておくのがblogの効用なんでしょうね。来年はツイッターを活用することにするか)、とりあえず、印象に残った本のことを簡単に記しておく。

 最初は前のエントリのように、ひとつにまとめて書き始めたのだが、それぞれ独立させた方が検索でひっかかりやすそうなので、分けて連続投稿とする。読みにくいかもしれないがご容赦を。
 今さらアクセス数を稼ごうとは思わないが、それぞれの本をお勧めしたいので少しでも多くの人の目に触れたい気持ちの表れとご理解ください。

 で、表題書。

 引退後、早大の大学院スポーツ科学研究科に09年春から1年間在籍した桑田真澄と、その指導教官だった平田竹男の対談。平田は日本サッカー協会で2002年から06年までジェネラルセクレタリー(専務理事)を務めた人物でもある。
 桑田が書いた「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」は、大学院でその年度の最優秀論文に選ばれるとともに、日本スポーツ産業学会から濱野賞を贈られたという。この学会は、会長が滝鼻卓雄・読売巨人軍オーナーで、理事長が平田竹男なのだから(で、副会長は奥島孝康元早大総長)、お手盛り感を覚えないわけでもないけれど、それでも、桑田の論文が高い価値を持つことについては疑う余地がない。それは本書を読めばわかる。
 
 桑田は研究のため、プロ野球現役選手に、高校時代の練習に関する意識調査のアンケートを行っており、270人から回答を得ている。質問項目は、練習時間の長さやそれに対する感想、指導者の飲酒・煙草・体罰等の有無、ケガをおしてのプレーの強要、投球数制限の有無、指導者を志望するか否か…など多岐にわたる。
 こんなデリケートな内容のアンケートに270人ものプロ選手が回答し、さらに六大学野球部の選手たちも回答する。この回収率自体が驚異的であり、それはアマチュア(高校野球)とプロの双方で抜群の実績を残し、こと野球に対する真摯な取り組みと高い理論が知れ渡っていて、なおかつスポーツに学問として取り組もうという人物にしかなしえない。そんな人は桑田しかいない。引き合いに出して悪いけれど、小林至では無理だろう(小林氏のスポーツビジネスにおける見識や能力を批判するものではないけれど、現役時代の実績とそれが現役選手たちにもたらす威光に差がありすぎるのだ)。
 
 そして、対談で語られる彼の「野球道」に対する考えも、そのアンケートの貴重さに相応しい。桑田は、現在のアマチュア野球の思想的背景をなしている飛田穂州の野球哲学を現代に即して再構成しようとする。結論はそう非凡なものではないけれど、最高レベルの実践がそれを裏打ちしている、という点で説得力は圧倒的である。
 対談の中で平田は<ぼくは将来的には桑田さんに、プロ野球のコミッショナーになってほしい>と話している。そして、桑田もそれを否定してはいない。

 私も同感だ。だが、コミッショナーそのものになるには、さまざまな面でハードルがあるし、時間もかかる。さしあたり加藤コミッショナーは、桑田を何らかの形で遇するか、あるいは内々でもブレーンとしてアドバイスを求めるか、どうにかして彼の見識を生かしてほしい。桑田自身がコミッショナーになるには、どうしたって20年やそこらはかかる。そんな先までプロ野球が健在である保証はないのだ。今すぐ彼を生かした方がいい。

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