« 木村元彦「社長・溝畑宏の天国と地獄」集英社 | トップページ | えのきどいちろう「F党宣言! 俺たちの北海道日本ハムファイターズ」河出書房新社 »

佐藤岳「中澤佑二 不屈」文藝春秋

 ワールドカップ南アフリカ大会の後で出た書籍の中で、読む価値のあるものを1冊選べといわれたら、たぶんこれを挙げる。報知新聞記者の著者が、中澤の半生をたどりながら南アフリカ大会でのチームや戦いぶりを記している。
 
 まずは中澤のストイックな生き方に感服する。ここまで自分を追いつめた上に彼のプレーがあるのかと、改めて思い知った。
 そして、ワールドカップ。中澤が出場した2つのワールドカップが、当然ながら本書の大きな山となっている。内部崩壊したドイツ大会と、それに対する反省を抱いた経験者たちがどう南アフリカ大会に臨んだか、という部分を軸に、著者はワールドカップを書く。
 
 著者は5月以降の岡田監督には批判的なスタンスをとっている。巷間ほめたたえられた戦術の変更、キャプテンの交替。スイスでのミーティングの成果についても、そう劇的なものとしては捉えていないし、岡田がそれをネガティブに受け取ったかのような書き方でもある。
 ただし、本書の中で著者は岡田自身には取材をしていない。岡田に対するネガティブな見方の根拠は、主に「ある選手」の言葉として示される。それがすべて同一人物なのか、複数の選手なのかも定かではない。
 ワールドカップ後に多勢を占めた「岡田礼賛」の言説が間違っていて本書だけが真実だ、とは思わない。ひとつの結果の背後にはさまざまな要因があり、立場によって見方は変わる。出場した選手、それも、レギュラーと控えとの間だけでなく、試合に出ていた選手たちの見方でさえ、ひとつではないだろう。
 本書では、少なくとも中澤の言葉として語られる部分については信頼が置ける。中澤という1人の中心選手にとって2つのワールドカップがどうであったか、ということだけでも、書き残される値打ちがある。

|

« 木村元彦「社長・溝畑宏の天国と地獄」集英社 | トップページ | えのきどいちろう「F党宣言! 俺たちの北海道日本ハムファイターズ」河出書房新社 »

コメント

はじめまして。
半年以上経った記事にコメントしてすみません。
「不屈」を検索しますと上位にきていたもので来てしまいました。
出版よりかなり遅れましたが昨日独破しました。
私は正直後半部分は不快になりました。
「これってホントに中澤が言ってたの?こんな内容の本を本当に出版したかったの?」
と。
佐藤岳さんってスポーツ記者ですよね。
内部事情をペラペラ中澤がしゃべりますかね。
岡田監督が選手が記者に非公開の練習についてしゃべったんじゃないかと疑ったことがひどいとか、選手と溝が広がったと書いてましたが・・・
著者が細かに知ってるってことは誰かがしゃべったことになるし、それを岡田監督だけ批判するのは矛盾してる。
沢山戦術転換もしたし、ベテランを外したり・・選手やスタッフ全員が納得してたわけでないのは当然。
あまりに一方から岡田監督を批判しすぎではないでしょうか?
誰よりもチームの事を考えて努力してるのは佐藤岳さんではなく岡田監督。遠藤さんをはじめ監督を認めてる選手も沢山いたはず。
たとえ監督に不満があっても、皆その気持ちは押し殺し犠牲心を貫いて尽くしたわけです。
それでチームは崩壊せずベスト16に進んだ。
俊介も楢崎も内田も岡崎も玉田も今野もみんな悔しさをバネに今躍動してる。
岡崎は「ポジションを外されて正直なんでやと監督を恨む気持ちもあったけど、なぜ外されたのか、自分に何が足りなかったのか今は分かる」
と前を向いています。
なのにこの本で今更岡田監督を批判するのはどうなんでしょう。
黙ってチームのために耐えた選手のためになるとでも?
監督を責めていた気持ちを恥ずかしいとさえ思っている選手もいるってことです。ほじくりかえされても嬉しくありません。
中澤がかなりストイックに頑張ってきた人だっていうのはかなり伝わりましたけど、目線が中澤をはじめベテラン組びいきで、了見が狭く感じるし、中澤本人がしゃべっているのか佐藤岳さんが言っているのか混同するような言い回しが多く読みにくかったです。
こんな風に
不屈を読み終えて、もやもやしていたのですが、「念仏の鉄」様のブログに出会い、ふっと力を抜くことができました。
もちろんいい意味です。私の伝えたかった事が鉄様によって流麗な文章に置き換えられ、的確に伝えられていたからです。
そう!そうなんですよ!と何度も頷きました。
安心して寝れそうです。ありがとうございました。
これからも拝読させて頂きます。

投稿: さち | 2011/06/05 00:16

>さちさん

半年経ってもろくに更新してないblogで、こちらこそ恐縮です。拙稿がお役に立てたようで何よりでした。

サッカーについて書く人たちは、日本リーグ時代からの御大たちは大所高所から高踏的に書く傾向が強いのですが、Jリーグ発足後に売り出したサッカーライターには、特定の選手に食い込み、特定の立場からの言説をふりまく人が少なからずいて、私は好きにはなれませんでした。例えば南アフリカ大会に関する言説が「岡田礼賛」「反岡田」しか存在しないのでは、不毛すぎますしね。

もっとも最近は、さらに新しい世代のライターさんたちが欧州に拠点を置いて活躍してますが、特定選手の記事をたくさん手がけても、あんまりベタベタした感じがしないのは結構なことだと思っています。

投稿: 念仏の鉄 | 2011/06/06 23:42

なるほど…。またまた何度も頷いてしまいましたcatface
丁寧なお返事、誠にありがとうございます。

また拝読させて頂きますね。

投稿: さち | 2011/06/09 00:53

中澤選手は本当にすごいですね。高校時代、無名だったのに日本代表の中心選手にまで上り詰めたのだから、血のにじむような努力があったのでしょう。努力の塊のような人ですね。
若い人は見習わなくてはいけません。
今後もがんばってほしいです。

継続は力なり、これは大事なことですね。
文武両道でがんばるというのは継続して努力することを言うと思います。


文武両道といえば、慶応の理工4年福谷選手がドラフト1位で指名されましたね。文武両道ですごいですね。がんばってほしいです

サっカー界には文武両道で有名な東大卒Jリーガー久木田さんや他にも岡田武史さん、宮本恒靖さん、橋本英郎さんが文武両道で有名です。、ゴルフ界といえば、坂田信弘さんくらいしか思い浮かびません。


しかし、大学ゴルフ界に文武両道プロゴルファーになる卵がいます。
東大法学部4年の高野隆

彼は朝日杯争奪日本学生ゴルフ選手権には4回出場し、6位に入った。他にも、日本学生ゴルフ選手権3回出場、日本アマ出場、トップクラスで活躍するスーパースターです。

九州大2年の永井貴之

彼は九州ジュニアゴルフ選手権4位、国体選手にも選ばれた。日本学生ゴルフ選手権出場、文部科学大臣杯争奪全日本大学・高等学校ゴルフ対抗戦出場など、全国大会の常連です。

和歌山県立医科大学医学部医学科1年の辻田晴也

彼は関西高等学校ゴルフ選手権2位、全国高等学校ゴルフ選手権に3回出場など全国大会の常連で、関西学生秋季新人戦2位、西日本医科総合体育大会2位です。

他のスポーツ界に負けず、文武両道3羽ガラスが将来プロゴルフ界で活躍すればなぁー

ただ、プロの世界は本当に厳しい。スポーツ一本で勝負しても、それで飯を食っていけない人はたくさんいる。

彼らがプロでやっていくのはなかなか厳しいことだ。

特にゴルフの場合、野球やサッカーと違い、遠征費、宿泊費は自己負担、キャディ費も払わないといけなく、稼いだお金のうち手元にはあまり残らないのがプロゴルフの世界。

でも、努力でのし上がれ

あきらめるな

投稿: とく | 2012/12/25 13:22

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50507/50448522

この記事へのトラックバック一覧です: 佐藤岳「中澤佑二 不屈」文藝春秋:

« 木村元彦「社長・溝畑宏の天国と地獄」集英社 | トップページ | えのきどいちろう「F党宣言! 俺たちの北海道日本ハムファイターズ」河出書房新社 »