次期WBC日本代表に関する雑感。
2013年に開催される第3回ワールド・ベースボール・クラシックに、ダルビッシュ有が不参加を表明した。
日本代表の有資格者の中で、彼が現在最高の投手であることは疑う余地がない。その大エースが大会の場で見られないのは残念だし、戦力としても大きな痛手だろう。
ただ、彼がそう考えるに至った理路は、これまでの言動から、ある程度の想像がつく。
彼はもともと、日本野球の価値を証明する、アメリカに認めさせる、という熱意を感じさせる発言を繰り返ししている。MLB行きを表明した記者会見においてもそうだし、11/4に放送されたNHKスペシャルの中でも、何度もそこを強調していた。
一方で、彼がテキサス・レンジャーズに加入した頃には、「アメリカでは誰もWBCに関心を持たない」という発言も伝えられていた。ちょっと検索したがソースを見つけられなかったのだが、まあこれが事実であるとすると、こういうことになろう。
自分はWBCチャンピオンの主力投手としてMLBに乗り込んだけれど、かの地の野球人たちはそのタイトルに何の価値も認めようとしない。とすれば、日本野球の価値をアメリカに認めさせるためには、自分がMLBでナンバーワンの投手になること、ワールドシリーズのチャンピオンになることしかない。従って自分はWBCよりもMLBのレギュラーシーズン、そしてポストシーズンで活躍することを優先する。
彼の立場からすれば、しごく筋の通った話である。なので、私はこの件に関しては「残念」という以上の意見を持たない。
ダルビッシュ個人はともかく、次回大会の代表と目される選手の顔触れや、過去2大会の代表リストを眺めていて思うのは、次の代表チームの戦力の強弱は別として、「経験を継承しつつ世代交代する」ことは大変難しい状況にありそうだ。特に野手陣においては。
2006年の第1回大会で「イチロー・チルドレン」と呼ばれた若手野手が何人かいた。その多くはMLBに渡った。西岡は夢破れて日本に戻り、移籍先選びの真っ最中にある。川崎はマリナーズから解約されたが、MLBで就職先を探すつもりのようだ。青木はブリュワーズ1年目で地歩を固めつつあるが、まだ来年のレギュラーが確約されたとは言えないかもしれない。日本にいる今江は年によって成績の波が激しく、過去2シーズンは代表選手というには物足りない。
2009年に活躍した中島はおそらくMLBに移籍する。過去の例からすると、国際移籍初年の選手のWBC参加は困難だ。片岡は9月に右手を手術したばかり。村田は成績の上では物足りない。今年まで大過なく好成績を残し続けているのは内川と栗原くらいか。
要するに、「過去の国際大会を経験し、その後も活躍し続けて、2013年に文句なく主力として出場する野手」が、ほとんどいない。可能性があるのは青木と内川だが、失礼ながら、彼らが代表チームでリーダーシップを発揮するタイプのキャラクターであるようには考えにくい。
もちろん、国際経験はなくても好選手は大勢いる。坂本、中村剛、糸井、長野あたりを中心に、過去2大会に、個人としてはさほど遜色ない顔触れを揃えることはできるだろう。
ただし、それがチームとして機能するかどうかはまた別の話だ。国内リーグでどれほど素晴らしい成績を残した選手でも、国際試合ではやってみないとわからない怖さもある。
大会が始まれば、予測のつかなかったようなさまざまな事態が起きる。そんな時に、適切なリーダーシップを発揮できるのが誰かといえば、現時点で参加確実な選手でいえば阿部ということになってしまうのだが、本当にそんなことが可能だろうか。
国際大会に臨む代表チームでは、ただでさえ捕手にかかる負担は異常に大きい。負けたら終わりの一発勝負が続く上、相手の情報が少なく、さらに自チームの投手ですら初めて組む相手の方が多い。リードするだけで手一杯だろう。その上、野手陣の面倒を見ている余裕があるのかどうか。
そう考えていくと、詰まるところはやはりイチローが頼り、という結論になりそうだが、過去2大会とは異なり、彼にとって目下の最優先事項は来季の契約だろう。本人の希望はヤンキースでワールドチャンピオンになることだろうが、首尾よくオファーがあったとしても、ヤンキースはもともとWBCへの選手派遣に消極的なチームだ。そして、もし他のチームに移籍するとなれば、春のキャンプでレギュラーを勝ち取らなければならない立場に陥る(ヤンキースでもそれは変わらないけれど)。
結局のところ、イチローが代表に参加できる可能性は決して高くないように思える。
とすると、実は今大会では、過去2大会にも増して、監督のリーダーシップや求心力が決定的な意味を持つように思えるのだが、はて、山本浩二監督にそれだけの力があるのだろうか。コーチ陣が重厚すぎる(監督としての実績は梨田や東尾の方が上といってよい)のも、私には安心材料というよりは心配の種である。
どうも、考えれば考えるほど見通しが悲観的になっていく。ううむ。
救いがあるとすれば投手陣だろう。ダルビッシュはいなくとも、田中将、涌井、内海、山口、あと状態が回復すれば杉内らの経験者が健在だ。初参加となる、生きのいい若手も育っている。阿部が主戦捕手になるのなら、勝手知ったる投手が何人か選ばれそうなのも好材料だ(来シーズンのジャイアンツにとっては微妙だが)。
あとは野手陣の中から新しいリーダーが頭角を現してくれるのを祈るばかり。個人的には坂本に期待している。
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